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【詩】2011年3月11日

二〇一一年三月十一日

二〇一一年三月十一日 
それは私のなかの小さな命が
命として
この世に存在することはかなわないのだと
言われた日
言葉の断片を持ち帰って
窓の向こうに答えを探した
何の声も聞こえなかった
揺れる床のその揺れさえも私の揺れに
相殺された

命の誕生はどの瞬間にあるのだろう
そしてその命と呼ばれるものが消える瞬間
何が起こるのだろう
心臓は動いているのに
大事に思って守ろうと腕を伸ばして届かない
もどかしい
ここにいるはずなのに
たしかに存在しているはずなのに

かすかな鼓動の余韻を残して
消えていった私の小さな命には
生きるべき未来はなかった 
そう言い聞かせて飲み込んで
送ることを諦めた

この日多くの命がこぼれてしまった
そのことを知ったのはいつだろう
私の中のひとつの命を追いかけて
何も聞こえなかった日
何も見えなかった日

詩と思想2013年12月号(第22回詩と思想新人賞入選作品)

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