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書くことに慣れたいです。 詩を書きます。 ですが、圧倒的に書く量も読む量も足りていない…

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書くことに慣れたいです。 詩を書きます。 ですが、圧倒的に書く量も読む量も足りていないことを反省し、少しでも現状を改善できたらと思っています。

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    詩に関すること、詩にしたい景色

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    自己紹介の一部みたいな。。。

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    子どもに関する諸々。成長、療育、気づき、発見、喜び、苦しみ…

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アゲハチョウの話。

咀嚼音を聞いていると、生きていることが耳に届きこそばゆい。今年は、庭の金柑にアゲハチョウの卵をたくさん見つけた。 子供の頃、実家の庭には山椒の木が植わっていた。高さ1メートルに満たないこぢんまりとした木だった。その山椒に、毎年、アゲハチョウが飛んできて卵を生んでいく。いつの間にか孵化した大量の幼虫に、木は丸裸にされてしまう。どうにか山椒を守りながら、チョウになるのを見届けたい私たちは、効率よく葉を食べてもらおうと、幼虫を皆捕らえて、飼育ケースで飼うことにした。ひと枝ずつ切っ

    • 空を呼吸する

      空が私を眺めている その眼差しは大きくひとつ瞬きをして 今まさに閉じようとしていた ただそれだけのその一瞬に 言葉を超えて雪崩れてくる 冷たい空気を伝って 頬に触れて 間に合ったと白い息を吐く 五感のどれでもないものが揺すられる 私がここにいて あなたが鼓動するその震え 体のうちの水のすべてが反応する 煮え立つように揺すられて ついには昇華するだろう 大気に溶けだしてあらゆるものに混じり合う 私は空を呼吸する 瞬きひとつ待ってはくれない時間を 共有して 私はあなたに向き合

      • 【詩】雨

           雨 雨の音一粒 一粒 一粒 ひと粒 粒 粒 雫は 重なり合ってリズムを刻む 耳をくすぐりゆるりうるおす ことばを起こす うたが生まれる 白く垂れこめる空の 冷たく吹く風に ちりちりと舞う小さな雨粒 雨 雨  その音は 船出を祝福する 音楽に なる 山梨日日新聞 山日文芸 「各地の詩壇から」掲載作品(改編)

        • 母乳育児に挑戦した話2

          産後5週目、うちに戻ってきた。じゃんじゃん生産される乳をぐびぐび飲んで、赤ん坊は順調に大きくなる。母乳しか飲ませないのだから良いものを生産しなくてはならないという気負いがあり、食事にはずっと気を付けていた。塩分を取りすぎるといけないから外食はしない、市販のお惣菜やお弁当は控える、甘いものは食べない。ケーキやドーナツは名指しで要注意とされていたことを、退院後に知り、あの日の看護師さんの発言と表情を思い出した。そして、パンの種類にも気を遣うようになる。 そんなある日、何となく乳

        アゲハチョウの話。

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        記事

          母乳育児に挑戦することにした話

          第一子を妊娠中、産後のことはあまりにぼんやり霧の中に見えて何も考えていなかった。里帰り出産のため帰省した私に、生後10か月の赤ん坊を育てていた妹が、ねーちゃん母乳育児の準備しよる?と訊いてきた。何それ、である。 病院で手渡された資料をよく読んでいくと、最後のページに確かに説明されている、乳房と乳首の事前準備。しかし、生むことで頭がいっぱい、母乳云々考えたことがなかった私はへえっと一読したものの、すっかり忘れていたのだった。 母は私を人工ミルクで育てた。哺乳拒否を受け母乳は

          母乳育児に挑戦することにした話

          息子が怪我をして帰宅した日

          その日、夫と息子は一泊二日、いわゆる男同士の二人旅に出かけることになっていた。息子は三歳三か月。二人きりでのお泊り旅行は初めてのこと。念入りに準備をし、その日を迎えた。七月、晴れて気持ちのいい朝だった。 私は久しぶりにひとりで過ごす休日に内心浮かれはするものの、出かけたい場所も思いつかず、うちでのんびり過ごそうかなあ、とぼんやり考えていた。ストンと着られるコットンの黒いワンピース――何年か前に購入したもののなかなか着る機会がなかった――に着替えて、二人を見送る。 初夏の青

          息子が怪我をして帰宅した日

          補聴器と出会う

          補聴器、と聞いて思い出すのは父方の祖母である。当時私は小学生、恐らく低学年で、祖母は80歳の手前であったろうと思う。隣に住んでいた。 耳が遠い祖母に大声で話しかけるが、通じるのは半分くらい。それなら、と耳元で話すのをやめて、正面から唇をはっきり動かして話すようにした。声を出すよりも、口の動きに全力を注ぐ。その様子を見ていた母が、すごいね!と真似するようになるくらい、わかってもらえて私は嬉しかった。 その祖母が、ある日嬉々として、眼鏡に一体化した補聴器を持ってきた。話しかけ

          補聴器と出会う

          【詩】手

             手 目を閉じる 闇夜からそっと伸びてくる やわらかく温かい手のひらが まるくなった背中を撫でる やさしく やさしく そのやさしい手のひらの感触だけが わたしを鼓動させている 星が瞬くように 風が頬を吹くように とても自然でさりげない  けれども意思のあるその手にゆるり ほどかれてわたしの背中は輪郭を失い 夜にとける とかされて今日を終える また光が迎えにくるまでわたしは その手に解放されて 夜にまじる              川井麻希詩集「あらゆる日も夜も」より

          【詩】手

          それが豊かな経験をもたらすと信じて

          個別療育を通して、心理士さんから説明を受けた息子の特性のひとつに「見通しが持てないことには取り組み難い」がある。そして、そのことにより、「新しいことに挑戦しづらい」。 当時の私は、見通しが持てるということは、予定が知らされており次に取るべき行動が明確であるという意味だと思っていた。しかし、それだけを意味するものではないということを、療育を受けるなかで知ることになる。その活動とは具体的にどのような内容で自分はそれにどう参加できるのか、というようなことまで含めて、見通しなのだ。

          それが豊かな経験をもたらすと信じて

          うまく母になれなかった話

          10年近く前のことになる。第一子の妊娠がわかったとき、何の迷いもなく、里帰り出産を選択した。実母からの提案を、ごく当たり前のこととして受け入れた。 当時祖母が子宮癌を患っており、総合病院に入院していた。私は自然その病院にかかることになる。担当医に孫を診てもらいたい祖母と、同じ病院にいてくれた方がいろいろ楽と思った母、また初産でかつ体の小さい私を心配した助産師である妹の、総意の結果である。私には反対する強い理由はなかった。どちらにしろ、たいていのことは母の言う通りになるのだ。

          うまく母になれなかった話

          【詩】いのり

          いのり 空気のさわり心地はどんなかな 九月に生まれておとめ座の予定だった 七月に生まれてかに座の君は 六七六グラム三三.一センチの大きさで 完全な輪郭をもって そこに いる ひとりのひととして名前を与えられ きっかりと鼓動している 私たちのいのちはいつ始まるんだろう 成長のラストスパートを 始める前に出てきてしまった君の 燃えるいのちが ただ健やかな明るい光でありますように おとめ座生まれがあふれる季節に 君の手がもみじくらいに 大きくなって 触れる何をも熱く握りますように

          【詩】いのり

          痛みに対する恐怖とその地味な対処法

          痛みに敏感であるのは、その通りなのだが、体がいたむことへの恐怖心が大きいことも手伝って、たびたびオオゴトになる。大げさだと家族(特に母)に呆れられてきたが、どうしようもない。言葉から連想が広がり、とどまることを知らない創造力が翼を広げる。大きく羽ばたく。 例えば大学時代。簡単な手術をすることになり、血液の止まり具合を検査した。これでちょっと耳たぶを切って血が止まるまでの時間を計ります、とにっこり説明をしてくれる看護師さん。耳たぶを小さなカッターのようなもので切られただけのこ

          痛みに対する恐怖とその地味な対処法

          まなざしのその先に

          「まなざし」について、ときおり考える。きっかけは、高文祭――全国高等学校総合文化祭――写真部門の展示を鑑賞したことにある。 数年前のことだ。縁あってその会場を訪れていた。いわば、高校写真部の全国大会である。各都道府県の代表作品が、大きな体育館いっぱいに展示されていた。全紙サイズのパネル写真は迫力がある。まるで、ひとつひとつが異なる世界を見せる窓のようだった。それぞれに違った空気が閉じ込められて、そこにある。 景色の美しさをとらえた写真、生き物の生きるさまをとらえた写真、友

          まなざしのその先に

          【詩】手紙

            手紙                       月を見ながら歩いた 空気が優しく湿っていて少し重い 緑が呼吸する気配にほっとする 薄桃色のまんまるい月 血の通うほのかな温かさ 空が群青をにじませていて 私は深く息をする 声にだけ耳を澄まして目を閉じれば 言葉は消えて ただあなたのいることが振動になって寄せてくる 輪郭に触れられなくても 輪郭を思い出せなくても 溶けてちゃんとあるようなこと 闇に風の音だけが聞こえて惑いそうになる日には あなたの手に戻ろう 触れよ

          【詩】手紙

          【詩】その日まで

            その日まで うちのうちがわ どろどろしとるんじゃ 自分でもどうなっとるんかわからんで 気持ち悪うて仕方ない ほやのにどうしょうもないけん どろどろのまんまじゃ どっか開いとるアナから出せたら ちょっとは楽になるんじゃなかろか ほう思うけんの あがいてみよんやけど ぜんぜんいかん 言いたいことは形にならんで ほやけど ないんとは違うくて 言えんけんってないことにせんといてって くちびる噛んだら血い出ただけで やっぱりなんちゃ言葉は出てこん さなぎ チョウチョもカブト

          【詩】その日まで

          自分の体の声を聞く

          息子を出産したとき、陣痛をうまくつかむことができなかった。正確にいうと、陣痛が来ているのに、それを信じることができなかった。出産経験者である母と、助産師である妹、そして産婦人科の先生の言葉の方を信じてしまった。 その日、朝6時頃違和感を感じた私は病院に電話をし、7時頃受診。しかし先生に、まだまだね、初産は時間がかかるんだよ、今日中に生まれるかもわからないよ、と言われ、他県から駆け付けることになっていた夫への連絡も、まだまだと一笑に付され、帰宅した。 うちに帰ってからも、ず

          自分の体の声を聞く