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【詩】手

   手

目を閉じる
闇夜からそっと伸びてくる
やわらかく温かい手のひらが
まるくなった背中を撫でる
やさしく やさしく
そのやさしい手のひらの感触だけが
わたしを鼓動させている
星が瞬くように 風が頬を吹くように
とても自然でさりげない 
けれども意思のあるその手にゆるり
ほどかれてわたしの背中は輪郭を失い
夜にとける
とかされて今日を終える
また光が迎えにくるまでわたしは
その手に解放されて
夜にまじる
 

           川井麻希詩集「あらゆる日も夜も」より

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