心のセーブポイント
なんだろうか。
落ち込んでいる。
今、ものすごく落ち込んでいる。
疲れてるとか、眠いとかではなく、今日はひたすら落ち込んでいる。
こんなイマイチな時に、すがるように手を伸ばせるものって限られている。
ここ数年は、こういう時によく『星野源のオールナイトニッポン』の再生ボタンを押す。
今日も例にもれず源さんのラジオ過去回を聴いていた。
落ち込みながらも、呼吸がととのう感じが、ちゃんと血がめぐる感じが、酸素がいきわたる感じが、視界が少しひらける感じがした。
この不思議な、落ちつく感覚。
源さんの曲やラジオやことば・映像は、
「心のセーブポイント」みたいなものかもしれない。
迷ったり、悩んだり、今日みたいに落ち込んだり、逆にはちゃめちゃに興奮したり、わけが分からなくなったりした時に、いったん戻れる場所、というか。
フラットに戻れる場所、自分の輪郭を思い出せる場所、体温がもどる場所、というか。
心の帰る場所、というか。
そいえば、先日、国立西洋美術館に行った時にもそんなことを考えた。
というのも、西洋美術館の常設展には、わたしの大好きな絵画がある。
ポール・シニャックの
『サン・トロペの港』という絵画だ。
この絵が大好きなんである。
出会ってからまもなく10年になろうとしているが、何度見ても、どんな時に見ても、目も心も釘づけになる。
その静かな高揚と同時に、いつの間にか自分の心に凪が訪れるような、身体の隅々まで神経が戻ってくるような、そんな感覚がある。
自分の存在を忘れるほど夢中になれるのに、
あらゆる感覚から自分の存在を思い出せる。
この絵の前に立つたびにその感覚をもう何度も味わっているのだが、先日、数年ぶりに訪れてみても、それは初見とたがわぬほど鮮やかに体感できた。
わたしにとってシニャックの『サン・トロペの港』も、「心のセーブポイント」なのだと思う。
考えてみると「心のセーブポイント」って、「"好き" の殿堂入り」なのかもしれない。
わたしにとっては「書くこと」もそこに入れられそうだ。
ここまで書いてきて、沈んでいた心が少し浮上してきた感じがある。
ふう。
1日よく生き抜いた。
こんな風にうまくいかない日は、一度「心のセーブポイント」に戻って、ゆっくりゆっくりまた歩みを進めるための準備をしてみよう。
そしてそのセーブポイントをなるべく多く持っておこうとも思うのだった。
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