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10秒で読める小説

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100作書けたので、次の目標は150作!ってことでボチボチ書いていきます。
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#軽めなBL

【10秒で読める小説】懐かしい味

【10秒で読める小説】懐かしい味

僕は日本で人気カレー店を営む、インド人だ。

「ここのカレーは本場の味なのに、なぜか懐かしいんだよな」
客はみな、不思議そうに言う。

「アリガトウ、ゴユックリ」
と笑顔で言い、僕は厨房に戻った。

日本人である僕の妻が、仕込み用の鍋をかき混ぜながら呟く。
「肉じゃがをリメイクしたカレーが、こんなに流行るとはね」

【10秒で読める小説】ラブストーリーは突然に?

「妻子が出て行っちゃいましてね」
たまたま乗ったタクシーで運転手が身の上話を始めた。

「また出会いがありますよ、恋は突然始まるから」俺は適当に答える。
ふとミラー越しに運転手の哀しい瞳とぶつかった。ドキッ。
運転手は俺を見詰めたまま呟く。
「トゥクトゥーン♪」

「いや強引に恋を始めようとしないで?」

【10秒で読める小説】君の瞳の十七条憲

【10秒で読める小説】君の瞳の十七条憲

店長が紙を広げた。
「妹子、十七条の憲法ができた」
「憲法、ですか?」
「嘘だよ、店の指針だ。見て」

近寄った僕の顔を、店長が覗き込む。とっさに僕は俯く。
「顔を上げて。君の瞳に映った文字を読みたいんだ」
「文字なんて映ってないでしょ」

「いや。はっきり書いてあるよ。──俺が好きだって」

【10秒で読める小説】君にあげるよ、冠位十二階

【10秒で読める小説】君にあげるよ、冠位十二階

「妹子」
呼び掛けられて振り向くと、十人の注文も一度に聞き取れる鬼才の聖徳店長だった。
バイトみんなに慕われているし、僕も憧れている。

「店長、どうかしまし…」

店長は言葉を待たず、おもむろに僕の頭にキャップを被せた。
「何ですか、もう」
キャップを取ってその深い紫色を見た僕は、息を飲んだ。
「まさか、僕が大徳? 店長…」
「太子でいい」

店長の頬に赤みが差す。

「俺の一番になってくれ」