#猫
【10秒で読める小説】懐かしい味
僕は日本で人気カレー店を営む、インド人だ。
「ここのカレーは本場の味なのに、なぜか懐かしいんだよな」
客はみな、不思議そうに言う。
「アリガトウ、ゴユックリ」
と笑顔で言い、僕は厨房に戻った。
日本人である僕の妻が、仕込み用の鍋をかき混ぜながら呟く。
「肉じゃがをリメイクしたカレーが、こんなに流行るとはね」
【10秒で読める小説】齟齬があった
うちの美しい猫は、僕のことが大好きだ。膝で丸まる姿はさながら独占欲の強い恋人だ。
でも今日用意した餌には、どういうわけか口をつけない。僕を見上げて鳴くばかり。
そうだ、猫語翻訳アプリを入れたんだった。
スマホをかざすと、
「下僕よ。いつもよくやってる褒美だ。コレ食っていいぞ」
【10秒で読める小説】味にうるさい
猫は一生に一度、人語を話すという。
タマが喋ったのは、唐突だった。
「このメーカーのカリカリ、好きじゃニャいよ。訴えてるのに気付いてくれニャいからさぁ!」
驚きつつも「じゃあ何が好きなの?」と尋ねる。
「ニャーニャー!」
貴重な一回を、好きなものを伝える方で使ってくれたら良かったのに。