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10秒で読める小説

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100作書けたので、次の目標は150作!ってことでボチボチ書いていきます。
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#SF小説

【10秒で読める小説】懐かしい味

【10秒で読める小説】懐かしい味

僕は日本で人気カレー店を営む、インド人だ。

「ここのカレーは本場の味なのに、なぜか懐かしいんだよな」
客はみな、不思議そうに言う。

「アリガトウ、ゴユックリ」
と笑顔で言い、僕は厨房に戻った。

日本人である僕の妻が、仕込み用の鍋をかき混ぜながら呟く。
「肉じゃがをリメイクしたカレーが、こんなに流行るとはね」

【10秒で読める小説】卒業タイムリープ

6度目の2022年3月19日を迎えた。
卒業したくない、と流した涙はとうに枯れた。

考え抜いた末、私には高校生活でやり残したイベントがあるのだろう、という結論に達した。だから次のステージに行けないのだ。

思い切って告白した。彼に会えなくなるから、卒業が嫌だったのだから。
結果、見事玉砕。でも彼の肩越しに虹が見えた。
これで明日が迎えられる。

【10秒で読める小説】あの、バレバレです…

【10秒で読める小説】あの、バレバレです…

金星人を名乗る女の声が響く。

「お前は我々の観察対象に選ばれた。
他言すれば命はないぞ。
私はお前の周囲の誰かに、そっと成り済ましている。お前には誰が私だか、見抜けまいがな」

「──朝ご飯やでー!」
階下からのオカンのダミ声に起こされた。
変な夢やったなぁと台所のドアを開けると、

「早うせんと遅刻すんで」

割烹着姿の金髪美女が言った。

【10秒で読める小説】コインロッカーの中には

【10秒で読める小説】コインロッカーの中には

コインロッカーを開けたら、中に銀色の顔が浮かんでいた。

「待ってたよ」

顔が言った。
急いで扉を閉めようとしたが、体に電気が走った。

気がつくと真っ暗な場所にいた。
手足の感覚はない。
そのまま長い間そこにいた。

ある時、眩い光とともに巨大な顔がのぞきこんだ。僕は言った。

「待ってたよ」