「特許」と「SDGs」3 ~出願動向~
「特許」と「SDGs」についての3回目です。
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前回は「SDGs」を技術的な側面から全体像を捉える場合に、
①食料・食品
②医療
③教育
④環境・エネルギー
の4つの大きなカテゴリーに分けました。
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今回は、この4つのカテゴリーを日本企業の「特許」出願の視点から見ていきます。
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まず、4つのカテゴリーの出願動向を把握するために関連するIPC(国際特許分類)を抽出しました。
(※可能な限り分かり易くなるように、関係が深い分類をピックアップしているので、関連する全ての分類が網羅されている訳ではありません。)
※「G16* //特定の用途分野に特に適合した情報通信技術」について…
「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」のターゲットなどに、
能力強化促進のためにICT(情報通信技術)の活用を強化することが盛り込まれているため、教育カテゴリーに含めました。
「環境・エネルギー」カテゴリーでは、
自然環境への視点のみでなく、
都市計画や人間の生活に関わるサービスなども「環境」と捉えてIPCを抽出しています。
※IPCの後ろの「*」は、DBで検索する際の前方一致を表しています。
IPCでは、A01B1/02やA01C1/08というような表記を行います。
「A01*」であれば上記のA01B1/02やA01C1/08も含み、A01から始まる分類が付与されている公報全てが検索されます。
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それでは、カテゴリー別に抽出したIPCの特許出願動向を見ていきます。
検索方法は、
「食料・食品」であれば、
A01* + A23* + C12* + C13B* + C13K*
というようにカテゴリー別に抽出したIPCが付与されている特許出願を足し合わせた件数です。
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まずは、日本特許庁へ直接出願された2010年~2020年の出願件数の推移です。
図1
※JP-NETで検索
※2018年以降の出願は公開前の公報があることに気を付けてください。
縦軸は出願件数、横軸は出願された年です。
SDGsは2015年9月に採択されました。
2016年や2017年に出願が増えていてもいいのに…
と思わないでしょうか?
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それでは、次のグラフを見てみてください。
こちらも、縦軸は出願件数、横軸は出願された年です。
図2
※orbitで検索
※2018年以降の出願は公開前の公報があることに気を付けてください。
縦軸の件数単位は違うので、出願件数のボリュームは上下のグラフで異なりますが、
2016年以降の出願傾向が少し異なるように感じられるのではないでしょうか?
実は、図1のグラフでは「日本の特許庁へ直接出願された」特許であり、
WO経由の出願は含まれていません。
図2のグラフは、日本企業のWOへの出願件数の推移です。
さて、WOとは、特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願のことで、ひとつの出願願書を条約に従って提出することによって、PCT加盟国であるすべての国に同時に出願したことと同じ効果を与える出願制度です。(※経産省HPより)
ざっくりと言うと、
日本特許庁へ特許出願を行うと、「日本国内のみへ出願した」ことになりますが、
WOへの出願は、1件の出願で「様々な国への出願を兼ねることも可能になる」制度と言えます。
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図1と図2のグラフを比較すると、図1のグラフでは日本企業だけの出願件数の推移ではなく、海外企業の出願件数も含まれていますが、減少傾向が見て取れます。
一方、図2のグラフでは、2018年の出願件数でもすでに増加傾向が見られます。(※2019年以降についてはまだ不確定ですが)
このことから、2015年のSDGsの採択以降の日本企業の出願傾向として、
SDGsに関連する分野の特許出願は、国内向けよりも「世界に向けての出願」を重視する傾向にあるのではないか?と考えることが出来ます。
この理由は、SDGsを理解すれば簡単なことなのですが、
ざっとデータで表してみました。
今回はここまでにします。
次回は、今回の考えについてもう少し掘り下げていきたいと思います。
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こんなに天気がいいのに外出自粛なGW…
皆さん体調管理にはくれぐれもお気をつけてお過ごしください!
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