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「タコパしようぜ!」

タコパをしようと買い出しに出かけた聡(さとし)は、

忘れ物に気付いた。

具材を書いたメモ書きを、家に忘れてきてしまった。

たことチーズとコロッケと牛スジまでは覚えているが、

そこから先が思い出せない。

みんなで意見を出し合って具材を決めたから、一つでも揃わなかったら

みんなに文句を言われることになる。

仕方なしに、引き返すことにした。


引き返す道すがら、聡の頭の中は食材がぐるぐると駆け回っていた。

みんな小躍りをしているように、聡の頭の中をスキップしながら楽しそうに

風を切りながら、駆け回っている。

そろそろ家に着く頃、ふと思い出した。

ポテチとキムチとこんにゃくとコーンとかっぱえびせんと小エビと沢庵。

これで具材は全て。

家の玄関の前まで戻ってきて思い出したものだから、入らないでもう一度

買い物へと行こうとした。


その時、玄関のドアがガチャっと開き、誰かが出てきた。

裕英(ひろひで)だった。

普段は陰キャな性格で、家に引きこもる方だけど、

タコパだけは一つ返事で参加表明をしてきた。

よく見ると、何故かエプロンをして泡立て器を持っている。

えっ!

何を作っているのだろうか、気になりながらも聡はそのまま買い物へ

出掛けることにした。


一つ一つビニール袋に詰めて、「ふー何とか、終わった」

全部揃えて、家で待っている仲間に電話を入れた。 

「今から帰るよ」

千夏(ちなつ)が電話口に出た。

「うん、待っている、気をつけて」って

半ば、焦ったような口調で返事があった。


聡は帰り掛けに、あれやこれやと考えていた。先に何を焼こうかとか、

唐辛子やマスタードやワサビ入りのたこ焼きを作って、

ゲームをすることも、考えていた。

にたにたと笑いながら、一人歩いていた。


あと、5分ほどで家に着くという時に、

家の方から大音量の音楽が流れ聞こえてきた。

どこかで聞いたことのあるフレーズ、

結婚式で聞いたような曲が流れ聞こえてきた。

何を騒いでいるのだろうと思いながらも、玄関の前まで帰ってきた。


「ガチャ、ただいま」と勢いよくドアを開ける聡。


そこには、白いドレスを着て、

ニコリと微笑んだ柚子(ゆずこ)が立っていた。


裕英の頬には、生クリームがべっとり付いていた。


みんな笑顔で、聡を出迎えてくれている。

「おかえり」みんなで声合わせて、一斉に言われた。

タコパをする仲間が集まって、お祝いをしてくれている。

聡の頭の中から、唐辛子やわさび入りのたこ焼きがすっと消えていった。

柚子との2ショットを撮って、タコパはいつも通り行われた。

そんな仲間とタコパへの愛情を胸に抱き、

聡の笑顔は絶えることがなかった。

まだ具材が余っている。

明日の夜も、タコパは続く予感がした。




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