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内面を身体化するマイム芸術 “アートマイム” って何だろう?

んー、JIDAIさんのパフォーマンスは、何度体験してもやっぱり言葉ではまとめきれないと、ぐるぐるすること数日。途切れ途切れに浮いては消えていた言葉が出てきたいよというのでここに置いてみる。

今回の『MIMICROSCOPE マイミクロスコープ』は、JIDAIさんのアートマイムだけでなく、福田美樹子さんのソプラノのセッションも。

JIDAIさんの舞台の後は、余韻が長く続く。ぱくぱくと食べさせてもらったあの空間と時間が美味しくて、何か忘れたくないものがある気がして、あれはなんだったんだろう?美味しかったなぁ、としばらく彷徨っていられる感じ。しかも今回は、フランス語の詩の世界が美樹子さんのソプラノで加わっていたから、さぁ大変。

お二人がセッションで創り出していた、月明かりと煙でふんわり包み込まれた詩の世界に引き込まれて、未だにうっすらと記憶の中に残るあの世界をいつものアートマイムにはない音の余韻と共にふわふわと行ったり来たりして反芻してしまう。だって美味しいのだもの。今までの余韻をリコリス色とするならば、今回の余韻はエスプレッソ色。少し苦くて薬のようで、でもしゃっきとするようなリラックスできるような香りがして、また味わいたくなった。

お2人のセッションから、なぜかとても"Je te veux"な感じを受け取った私が書いた言葉。時間がたって読んでみて、やっぱりあのパフォーマンスを言葉にしきれないよねと思う。言葉にすればするほど、そこに含めないものに出会わせてくれるのが面白い。

後日調べたら、美樹子さんが歌ってらしたHôtel / Guillaume Apollinaireの詩の中には"Je te veux."というフレーズはなかったのだけど、舞台上のJIDAIさんのアートマイムと美樹子さんの歌声は、それ自体が何かやりとりをしているようで、お互いを求めているのにすり抜けていくようで、"Je te voux."な色っぽさがあった。 

それでいて詩の世界も主人公の心や思考の動きも空間に広がっていて、セピア色の小さな空間で主人公の呟きにそうだよねえと答えてる気分になり、フランス語のJeくらいしか聞き取れてないくせにと、自分につっこみつつ、夢と現を行ったり来たり。

"手を伸ばした先のものを抱き寄せていたのにいつのまにか抱きしめられていて、そこにあるものを実感して、その力強さの中に安心したはずなのに、それなのにまるでそれは幻だったかのように静かに羽ばたいて、煙のように自分と一緒に消えていく"

by えりか

そんなストーリーがJIDAIさんの動きからは聞こえてきて、美樹子さんの歌とピアノか何かの柔らかな音にそれが包まれていたように感じていた。そして、終わってからアカペラだったと知らされて、驚いたのだけど自分だけが聴くことができていた音楽があったのだなぁと思うと、嬉しくなった。

JIDAIさんの舞台中に感じる夢と現を行ったり来たりする感じは、私が好きな体験の一つ。JIDAIさんの舞台ではいつもよくわからないざわざわとする怖さを感じるのだけれど、それは人の中にある何かそういった類のものをアートマイムが表現してくれているからなのかもしれない。何かを生み出したいというエネルギーは、そんな怖さと共にあるのかも。

怖いんだけど、進んでいくと出会える世界、出会ってしまう世界、喜び、苦しみ、いろんな言葉に収めきれない感情とか身体の中に現れる感覚とかをアートマイムは手渡してくれている気がする。

感想文の類が嫌いだった私が、感想を書きたくなってしまう。言葉を出したくなる。そんな魔法をかけてくれるのが、私にとってのJIDAIさんのアートマイム。

(トップの写真は、後日見かけたもの。今回のパフォーマンスのワンシーンのような写真。)

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