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「インプロ」から「台本のない演劇」へ

インプロシアター(Impro Theatre)というカンパニーがロサンゼルスにあります。

彼らはフルレングスインプロ(1時間にも及ぶ即興演劇)というスタイルを探求、上演しているカンパニーで、シェイクスピア、チェーホフ、テネシー・ウィリアムズなど、様々な劇作家を題材にした即興演劇を作り、ロサンゼルス・タイム紙、バック・ステージ・ウェスト紙、ロサンゼルス・ウィークリー紙からの推薦を受けたり、世界中でツアー公演をしたりしています。

僕が初めて彼らのパフォーマンスを見たのは、2017年にドバイで行われたiTi(国際シアタースポーツ協会)主催の国際インプロフェスティバルでした。
彼らのパフォーマンスは圧巻で、とても即興で演じたようには思えないクオリティの高さでした。

↓その時の「テネシー・ウィリアムス風インプロ」

そのパフォーマンスに惚れ込んだ僕は、帰国後にフルレングスインプロを上演するための団体(セカンドサークル)を作ったり、翌年2018年には彼らが主催する集中ワークショップに参加したり、今ではオンラインを通して、彼らが行なっている年間の指導カリキュラムのクラスに参加しています。

彼らのチームは、プロの俳優、脚本家、演出家で構成されています。
そのため、彼らが運営するスクールのトレーニングはかなり演劇的です。
今日はそのカリキュラムの一部として、最初の1年間に受ける「CORE PROGRAM」を紹介します。

「CORE PROGRAM」はインプロシアターのパフォーマンスを目指す上で基礎となる部分で、大きく分けたら4つのセクションがあります。

1. Physical(身体)
2. Character & Relationship(キャラクターと関係性)
3. Story(物語)
4. Genre(ジャンル)

※この前に「Intro to Narrative」という導入クラスがあるのですが、今回そこの紹介は省略します。

各セクションには、毎週1回×12週(3ヶ月)を費やされます。
どのセクションにも「インプロ」という言葉が一つも入っていないのが興味深いですね。
彼らは自分達のパフォーマンスを「Unscripted Play(台本のない演劇)」と表しており、インプロというよりは「演劇である」ということにこだわりを持っているようです(とはいえメンバーは全員インプロに関してもプロフェッショナルですが)
ゆえに、彼らの作るカリキュラムは、演劇を総合的に学ぶようなラインナップになっています。

では、ホームページを引用して、各セクションの詳細を紹介していきます。

1. Physical(身体)
Physical COREは、4つのCOREカリキュラムワークショップシリーズの第1弾であり、我々のインプロのスタイルであるナラティブインプロ(物語を生きるインプロ)の基礎となるものです。インプロでは、芯の通ったキャラクター、具体的な環境、リラックスした状態でのパフォーマンスが大切です。Physical COREでは、リラックスした状態になること、落ち着くこと、舞台技術(照明、音響、衣装など)や環境と繋がった演技を探求します。このクラスでは、パッツィー・ローデンバーグの「Second Circle」、アン・ボガートとティナ・ランドーの舞台用の「Viewpoints」、ルドルフ・ラバンの動きの分析などからインスピレーションを得ています。

2. Character & Relationship(キャラクターと関係性)
Character COREは、ナラティブインプロのための4つのCOREカリキュラムワークショップシリーズの第2弾です。インプロでは、物語がキャラクターと他のキャラクターとの関係性から生まれることを教えています。このワークショップでは、インプロの基礎とPhysical COREからのワークを深めることに加え、弱さを晒せる、強い欲求を持ち、具体的な観点を持った、芯の通ったキャラクターの創造を探求します。また、ステータスや感情に影響され合う関係性も探求します。ナラティブインプロでは、プロット(後述)に従うという罠に陥りがちですが、インプロでは、キャラクターや関係性を深く掘り下げれば、プロットは勝手に起こるということを教えています。

3. Story(物語)
Story COREは、4つのCOREカリキュラムワークショップのシリーズ第3弾です。Story COREは、Physical COREとCharacter & Relationship COREのワークをベースにして、キャラクターの目的とスルーラインを使って即興的な物語を深めていきます。生徒たちは、トーン、ビート、テーマ、アーク、始めに戻ることを意識しながら物語に飛び込んでいきます。我々のインプロのスタイルでは、プロットとストーリーを明確に区別しています。インプロでは、プロットとは物語の中で起こる出来事の流れであり、ストーリーとは登場人物の感情的な旅であると定義しています。インプロでは、最高の物語は、有機的にストーリーを発見し、それを深く掘り下げていくことから生まれると考えています。インプロでは、プロットを重視せず、良いストーリーテリングの副産物としてプロットが起こるようになっています。

4. Genre(ジャンル)
Genre COREは、4つのCOREカリキュラムワークショップシリーズの第4弾です。Genre COREでは、CORE 1、2、3のスキルをジャンルの研究に応用します。このクラスは、メインカンパニーのレパートリーの中から、一部のジャンルを学ぶことから始まります。レパートリーに含まれる偉大な作家たちが持つメタファーやモチーフから、どのようなスタイルでも説得力のある物語を創る方法を学びます。Genre COREの第4週目までに、クラスはあらかじめ決められた1つのジャンルに落ち着き、綿密な研究が始まり、最終的にパフォーマンスすることを目指します。

これだけ見ても、彼らがどれほど質の高いパフォーマンスを目指しているかが伺えます。

ちなみに今僕は、日本で4ヶ月集中ワークショップを行い、このようなスタイルを目指せる仲間を作ってる最中です。
最終的には、彼らのようなパフォーマンスが出来るカンパニーを立ち上げ、日本のインプロのクオリティを劇的に向上させることを目指しています。

※そのワークショップや、そこにかける想いは以下の記事を参照

これを機に少しでもナラティブインプロに興味を持たれた方がいたら幸いです。では。

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