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物語を止める17のテクニック

インプロをやると、普段の癖がそのまま物語に反映されます。
例えば、普段からネガティブなことを言いがちな人は、物語でもネガティブになるし、普段から話の主導権を握りがちな人は、物語でも主導権を握るようになります。
そしてそれらは、時に物語が前に進むのを止める要因にもなります。

インプロの父であるキース・ジョンストンは、自身の著書である「Impro for Storytellers」で「物語を止めるテクニック」として17個のテクニックを紹介しています。
それらをざっとまとめてみました。

01. Blocking=相手のアイデアを否定し、受け入れない
02. Being negative=ネガティブになる
03. Wimping=物事を具体的に決めない
04. Cancelling=それまでに作ったことを無かったことにする
05. Joining=相手と同じ状態になる
06. Gossiping=今ここにないことを話す
07. Agreed activities=相手と一緒になんでもない行動をする
08. Bridging=既に見えている結末に向かう
09. Hedging=今やるべきことを先延ばしにする
10. Sidetracking(confusing)=ストーリーの本筋ではないことをする
11. Being original=独創的で奇抜なアイデアを出す
12. Looping=同じことを繰り返す
13. Gagging=くだらないギャグを言ったりやったりする
14. Comic exaggeration=漫画のような誇張表現をする
15. Conflict=相手と対立する
16. Instant trouble=冒頭でいきなり問題を起こす
17. Lowering the stakes=リスクを下げる

どうでしょう?日常生活の中で思い当たる節もあるのではないでしょうか?
ちなみに、最初の3つは初心者が特にやりがちなことで、特に3のWimpingは日本人に多いと言われています。
これらは全て、物語を前に進めること、つまり変化や未知への恐怖や不安から起こるものです。
どういった恐怖や不安か、これも本に書いてあることや自分の考えを基に、自分なりにまとめてみました。

01. Blocking→「相手のアイデアを受け入れると、未知に進んでしまう…」
02. Being negative→「ポジティブでいると、どんどん前に進んでしまう…」
03. Wimping→「自分が持ってるアイデアに自信がない…」
04. Cancelling→「これまで積み上げてきたものに自信がない…」
05. Joining→「1人で違うことをするのが怖い…」
06. Gossiping→「なんでもない話をして、何も起こさず、安全でいたい…」
07. Agreed activities→「相手と同じことをやっていれば安心…」
08. Bridging→「わかりきったところに向かうのは安心…」
09. Hedging→「今ここで決断、変化したくない…」
10. Sidetracking(confusing)→「大事なことは後回しにしたい…」
11. Being original→「独創的な人に思われたい…」
12. Looping→「変化したくない」
13. Gagging→「面白い人に思われたい…」
14. Comic exaggeration→「本当に影響されるのが怖い…」
15. Conflict→「相手と対立すれば、先に進まなくて済む…」
16. Instant trouble→「最初からトラブルの中にいれば、その先に行かなくて済む…」
17. Lowering the stakes→「大きな問題に巻き込まれたくない…大丈夫でありたい…」

今書いた例は、あくまでも一例なので、人によって様々な感覚があると思います。

ちなみにキース・ジョンストンは、人間の恐れを3つに分類しています。
それは、変化、未知、評価です。
これらの恐れを少しずつ取り除いていくことが、インプロをしていくことでもあります。

では、どうやって取り除いていくのか?
キース・ジョンストンは、Paradoxical Teaching(逆説的指導)という手法をよく使います。
「やってはいけない」「望ましくない」と言われていることを、あえてやってみるということです。
これにより、やった本人は無意識でやっていたものを意識することが出来るようになり、それをやることで何が起こるかの結果を知ることが出来ます。そうすると、これらのテクニックを使って、好きに遊べるようになるのです。

この「遊べるようになる」というのがポイントです。
それらのことを「しなくなる」のではないのです。

キースは、これらのテクニックに対して、あくまでも「物語を止める」とだけ言っており、それを「やってはいけない」と表現してはいないのです(これがキースの面白いことでもあり、わかりづらいところでもあります)

インプロには、やってはいけないことはありません。
でも、やることで失笑を買ったり、お客さんを退屈させたり、パートナーを嫌な気分にさせることはあります。
それらは知識として、マニュアルとして学ぶのではなく、経験として自分で発見していくものなのです。

まずはやってみて、その後に発見する。
これがインプロの学び方です。


※ちなみに先述した「物語を止める17のテクニック」には、Constructive Use(建設的な活用法)というものが捕捉されているものがあります。最後にそれらもざっくり紹介していきます。(内容により順不同)

01. Blocking→なし
02. Being negative→なし
03. Wimping→なし
最初の3つは、インプロでも初心者がやりがちなものなので、基本的に解消させるように書いてあります。
09. Hedging→なし
ちなみにこれについても同様に記載が無かったのですが、僕が思うに、これもある種のWimpingなので、解消した方が良いことなんだと思います。

05. Joining→プラットフォーム
06. Gossiping→プラットフォーム
07. Agreed activities→プラットフォーム
プラットフォームとは、シーン冒頭の状況設定の部分で、そこを作るのに使えます。特に6のGossipingは、やりようによってはかなり良いプラットフォームが作れます。

12. Looping→パターンが出来るので、これが崩れれば、シーンが進む

10. Sidetracking(confusing)→出てきたものを後で本筋に登場させる

08. Bridging→クライマックスを盛り上げる(例:「赤の線、青の線…どちらを切れば良いんだ…!」)
15. Conflict→抵抗や葛藤を作り、クライマックスを盛り上げる

04. Cancelling→シーンを終わらせる時(例:「色々あったけど、やっぱり家が一番ね」)

11. Being original→笑いが欲しい時
13. Gagging→笑いが欲しい時
アメリカで主流のコメディインプロでは、これらはむしろ推奨されています。

14. Comic exaggeration→子供向けのショー
記載はないのですが、子供向けのショーではむしろこれくらいの方が良いのかもしれません。ちなみにこれは僕の考えです。

16. Instant trouble→路上パフォーマンスで聴衆の注目を惹きつける
これはキースの考えです。

17. Lowering the stakes→なし
これはそもそも「つまらないものを作る」くらいのことなので、どんなジャンルのパフォーマンスでも使えないと思います。トレーニングでこうならないように訓練しましょう。

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