見出し画像

どのようにして海外旅豆本を作っているのか(5)豆本の製本について

ハンドメイド作家のPlava Stabloこと、青木弘之です。

2/1に行われた、海外旅豆本に関するトークイベントでお話しした内容を振り返る第五回は最終回として、豆本作成の材料が一通り揃ったところで、どのように豆本に仕立てていくか、製本方法についてお話ししたいと思います。
※第四回の「豆本原稿の作成と印刷」については、以下のリンクをご参照ください。

本の作り方の流れについて

まず、一般的な本(上製本)の作りかたの流れは、以下の図のようになっています。※https://www.wave-inc.co.jp/data/pdct-book/ より引用

図1

私の作る海外旅豆本も、基本的には同じ方法で作っています。ただ、「製本加工」のところで、図では背の部分を糊で固めて綴じているのですが(糸で綴じないので、「無線綴じ」と言います)、私は「一折中綴じ」という手法で、糸綴じをしています。無線綴じだと、本を開閉しているうちに背の部分がこわれてきて、ページの部分がバラバラになってくることがあるのですが、糸で綴じていることで、バラバラになることを防ぐことができ、いつまでも開閉できる、丈夫な本になります。

本を作るための道具について

図2

紙を裁断するカッターと、下に敷くカッターマット、寸法を測る物差し、糸で綴じるために紙に穴をあける目打ち、本を綴じるための(製本用に、先が少し丸まっています)、表紙や本文を貼り付ける(接着力を高めるため、フエキ糊と木工用ボンドを混ぜて、塗りやすいように水で緩めた「糊ボンド」を使います)、糊を塗る刷毛、写真には載せていませんが、折すじや溝をつけるためのヘラを使用します。

本格的な製本をしようとすると、かがり台やプレス機などの道具も必要になるのですが、私の作る豆本については、手製本工房や、文房具店で容易に入手できるものばかりです。

表紙用の布の裁断について

私の作る海外旅豆本では、旅先の生地屋さんで購入した布を使用していますが、大抵は普通に現地で工業生産された布なので、日本の生地屋さんで売られている布と、扱い方は全く変わりません。

布の上下方向については、基本は織りの向きと平行に上下をとりますが、布の模様によっては、平行方向ではなく垂直方向に上下を決めることもあります。これは、豆本の見栄えの問題なので、悩ましい時もあったりします。

布の裁断については、あらかじめ用意した型紙に合わせ、1回の作成分(8冊分)の大きさで、布用の裁ちばさみで裁断します。

裏打ち用紙の裁断については、布地の大きさに合わせて、普通のはさみで裁断します。裏打ちについては次の項目でご説明します。

表紙に使う布の裏打ちについて

一般的に、布地をそのままの状態で表紙の芯材に接着することは困難です。なぜなら、布自体が柔らかく、伸びたりして変形することや、接着する糊自体も布に染みてしまい、布が汚れてしまうこともあり、作業には適しません。

そこで、芯材に接着できるようにするため、布地に薄い紙を接着する加工が必要になります。その作業を「裏打ち」といいます。

本来は、布地に糊を塗った後、裏打ち用の紙(主に薄い和紙)を圧着し、乾燥させて布に紙を定着させるのですが、この作業がとても煩雑なため、私のつくる海外旅豆本では、アイロンの熱で圧着する、表装用の熱圧着裏打紙(メルシーホット)を使用しています。

実際に布に裏打ちすると、こんな感じになります。

図3

図4

使用する紙の種類について

・表紙芯材
 ボール紙1mm厚(四六判四切342mm×545mm)
・本文原稿
 厚口洋白紙90kg 100枚入り(A4・T目)
・見返し
 新星物語100kg(A4・T目)
※全て新宿世界堂で購入可能です。

紙の裁断と折丁作りについて

表紙の芯材(ボール紙)の裁断については、ボール紙四切から、表・裏表紙用に最大56枚(28冊分)切り取ります。これとは別途、背表紙用にもボール紙を裁断します。

印刷した原稿と、見返しの紙の裁断については、あらかじめ用意した型紙に合わせ、1回の作成分(8冊分)をまとめて目打ちで印をつけて、普通のカッターで裁断します。海外旅豆本を作り始めたころは、一枚づつシャープペンシルで印をつけて裁断していたのですが、あまりに手間がかかるので、目打ちで穴をあけて印をつけるようになりました。

本文と見返しを裁断した後、一冊ずつ折丁作りを行います。本文にはページを振っていないので、ページの順番を間違えないように、都度チェックしています。以前、たまたまサンプル用で販売していなかった豆本に乱丁が見つかって冷や汗をかいた経験があるので、この点は十分注意しています。

図5

表紙作りについて

まずは、裏打ちした表紙用布の裁断をします。これも、あらかじめ用意した型紙に合わせ、普通のカッターで裁断していきます、芯材にくるむための糊しろを上下に1cmほど取っているのですが、表紙の模様の出方などを見て、多少の糊しろの幅は調整しています。

次に、布に芯材(ボール紙)を接着します。型紙に合わせて印をつけて、それに合わせて、裁断しておいたボール紙を「糊ボンド」で接着します。 

図6

最後にボール紙を布でくるみます。布の四隅をカットした後、天地→左右の順に、ボール紙を布でくるんで「糊ボンド」で接着していきます。

図7

本文の綴じについて

私の作る海外旅豆本は、一折り中綴じという手法で、一冊ずつ本文を糸かがりしています。綴じ糸には、丈夫な麻100%の糸を使用しています。この糸は、新宿オカダヤで購入可能です。

図8

次に、背の補強のために寒冷紗を貼り付けます。自分で製本をするクセのためか、いろんな方の作られている本の構造をついつい見てしまうのですが、上製本形式でも、意外と寒冷紗をつけていない本があったりします。寒冷紗を貼るだけで、耐久性も良くなりますので、ここは省略せずに寒冷紗を貼りましょう。製本に使う寒冷紗は、手製本工房で購入可能です。

図9

仕上げに小口の裁断をするのですが、この作業が、本の見栄えにとっても、大変大事です。小口の裁断のイメージについては、以下の図を参照してください。※https://www.wave-inc.co.jp/data/pdct-book/ より引用

図10

図11

合本(本の組み立て)について

完成までもう一息、表紙と本文の接着をします。まずは、背の接着をするのですが、ここは「糊ボンド」ではなく木工用ボンドを使用します。「糊ボンド」は柔軟性があって、紙同士を広い面で接着するのにはいいのですが、多少乾きが遅いのと、接着力が弱いところがあります。背はしっかり接着したいので、木工用ボンドを使用します。

ここで気をつけなくてはいけないのが、天地を間違えて接着しないようにすることです。私の作る大抵の海外旅豆本では、天地を逆さまにしても、大きく模様が異なるものはないのですが、「ウクライナ」編のように、天地を逆にすると見栄えが変わってしまうものもあるので、注意しています。

背を接着したら、へらでしっかり溝をつけて、麻ひもを巻いて乾燥させます。木工用ボンドで接着しているので、比較的早くくっつくのですが、逆に貼り直しができないので、要注意なのです。

次に見返しと表紙を接着します。これには「糊ボンド」を使用して、重しを乗せて、しっかりと接着させます。

いよいよ最後の仕上げが、タイトル貼りです。あらかじめ切り出しておいたタイトルの紙(本文の一番最初のページと同じレイアウトです)を「糊ボンド」で接着しますが、表紙に糊がつくので、ここで失敗したら商品にはなりません。天地はもちろん、曲がらないように、貼る位置も一定になるように、気を抜かずに作業します。

完全に糊が乾いたら、やっと海外旅豆本の完成です!!

「旅から生まれた豆本」シリーズ販売中です。現状が落ち着いたら、今後イベント等の出店も考えておりますが、現在はハンドメイド通販サイトのみにて取り扱っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

五回にわたって、私の海外旅豆本の作り方について、ざっとお話しいたしました。もし、手製本に興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、私の通っている「まるみず組」という手製本工房が東京・中板橋にございます。ホームページのリンクを貼っておきますので、ご覧いただけると幸いです。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?