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愛するという気持ち(秘密のキス 2016年フランス)

秘密のキス(2016年フランス)

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ある高校のパーティで2人の男子高校生がキスをしていた。その写真がネットに流されたことで彼らの人生が大きく狂い出す。

普段、フランス映画があまり好きじゃなかった。
ちなみにこれを観る少し前にも、同じくフランス語飛び交う『マティアス&マキシム(2019年 カナダ・フランス)』を観ていたのだけど、言葉に出来ない心情を描く巧みさに感動してしまった。
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私は多分ミーハーで、終わり方もはっきりとしたハッピーエンドが好きなのだろう。例えばアメリカ映画とか。
だからフランス映画を敬遠していたのかも知れない。
が、こういうふうに、考えに考え悩み続けた上で、登場人物の一人一人が自分なりに結論を出し、さあ、これからどうするの?という未来を想像&創造させるような終わり方も良いなと思えて来た。
でも、この映画は、その人のことで頭がいっぱいになるほどの恋をした者でなければ全く分からない類の素晴らしい映画。
あいかわらずフランス映画はじれったい。(私にとって)
でも、ある瞬間、相手の気持ちが分かった瞬間の喜びと衝撃。それを知る者には最高に良い映画。

話は逸れてしまったけれど、本題の『秘密のキス』には、リアルに起こり得る問題が描かれている。
集団の残酷さや、教育という名の押し付けや、親の権威。そういった者たちからとことんボコボコにされるシーンもあるが、そう長くは続かない。

何故ならば、この映画には、様々なヒーローやヒロインが登場するからだ。

理不尽ないじめを止めるべく立ち上がった女教師。
息子に”男らしさ”の概念を押し付けるためにボクシングでボコボコにする父親。
その妻が、高圧的な夫に戦いを挑んで、ドアをぶち壊して息子を逃がし、挙句の果て離婚を突き付ける。

悪気のない社会の残酷な集団暴力を前にしてブルブル震えながらも自分を生きようとする主人公たちを前にして、誰もが自立&自律する方向へ向けて変化していく映画でもある。

もう片方の父親は、完全に孤立した失意の息子にキャンドルを沢山灯した、世界にたった一つのケーキをは運んで来る。この辺りから咽び泣いてしまった。

誰もが異質なものを前にして自分自身に問いかける。これで良いのか?と。
誰もが誰かを好きになり、駅のホームを全力疾走し駆け寄る気持ちを知っていたからこそ開けた世界。

但し、人や世間に良く思われるために我慢のみをして来た人物には癪に触って仕方がないのだ。
ただ自分らしく生きようとする人を見るだけで、勝手に自分を否定された気持ちになってしまうのかも知れない。

少年は庇護を失うことを恐れ、ボクシングの試合に出場することを拒んだ。『お父さんが観ていてくれないからやる気が出ない。』と。

しかし、結果的に出場した。これからは、親(もしくは親代わり)に認められるために闘う人生を卒業していくのかも知れない。

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