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プロはそんなふうに甘えない

以前勤めていたところ同様、今の施設にも喫煙所がある。

そこで看護師以外の職種の人の話を聴いたりして勉強になったり親しくなったり。あるいは先方が「へー、そういう人だったんだね。イメージと違う。」と良い意味で言って下さったり。

が、ひとつだけ嫌なことがあった。

外部の業者である厨房の方々には大柄な男性が多く、その方々が休憩しに来る時にたまたま一人で居ると、真正面のベンチに座って、じー--っとりと見られることが多い。
「お疲れさまです」と挨拶はするのだが、下手するとそれに対してもきちんと返って来ないどころか、ニヤニヤしてこちらを見つめて来る人がいる。

スマホに目を落として知らんぷりをしていたのだが、そんな状況で休憩しても一息つけないので早々に場を離れていた。

そのうち「ねえ、何歳なの?」等、何とも場違いな気色悪い雰囲気で訊いて来る人もいた。
他にも何かとんでもないことを言われたがショック過ぎて書けない。

この施設に来た時は、ここの昼食は豪華で皆さん幸せだなと思っていた。実際に利用者さんたちはパクパク食べる。
ただし、一部の認知症がないお婆ちゃんたちは、あえて施設の食事を食べず家族の差し入れなどを食べている。

どうしてなのか訊いてみると「口に合わない。」とのこと。

同じく職員たちも3回に2回は「まずかった。」と言っている。盛りつけはあんなに豪華だし、間違いなく前の施設より予算がかかっているように見えるのだけど。
まあ、私は毎日お弁当持参なのでその味を知る由もない。

でも、喫煙所でのあの空気を思い出すと、ますます食べたくないなと思うのだ。食べ物にはエネルギーが宿る。

嫌でも聞かされる会話によると、皆さんそこそこの修行を積んできたシェフだったり、前職は某一流ホテルの厨房にいたりと輝かしい。だから盛りつけが綺麗なのか。

と、心の中でそんなことを思っても誰にも言ったことがなかった。下卑た笑いを向けられても、セクハラ的な発言を受けても気にしないことにしていた。ただ、厨房の人々が喫煙所に来る時間帯は避けていた。

そんな折、つい二日前のことだった。

施設長が朝から「今日、皆さんに他の業者の食事を試食して貰おうと思うの。」と言う。「以前に改善して欲しいと言うことを示してから半年が経ったんだけど、全く改善されてないから、今の業者は切ろうと思っている。」と。

何について改善されなかったのだろう?多分、味についてなのだろうけど、その「改善されない」という点においては、何だか分かるような気がした。

あのだらしない態度と昭和のおっさんたちが女性と見なす相手に対して見下げたような物言いをするところや、それでも、いつまでもいつまでも、そのままでいられると思い込んでいるその態度に全てが表れているような。

一流の職場をリストラされたんだ、でも、本当は、自分の腕はあそこ(過去の場所)で通用するほどのものなんだ、本当の自分はこんなところにいるような人間じゃないんだ・・・etcと言うような話をしていたが。

職場や評価が変わってもいつまでもそのまんまで、人が座っている方向へ向けて足を組み、それがいつまでも通用すると思っていたのだろうなと。
時代が変わり始めてからも一部の人々によく見る光景だった。

しかし、相手がクレームを出してからの期限は、昔と違って永遠ではなかった。
それでも半年待って貰えたのだから、ずいぶん優しく譲歩して貰えたと思うべきだろう。

それでも多分、環境や待遇が良くない、自分の良さが分かっていないなどと、どこかで言い続けて行くのかも知れないし、施設長が女性であることを利用して「あのあま」などと悪態をつくことで、その言い訳をおさめるのかも知れない。

誰も本気で背負ったこともなく、企業の一員であるということの意味を考えたこともない彼らは、「切ります」と言う側の苦労を知らない。

コスト云々の問題ではなく、利用者様や職員が良いものを食べれるようになると良いな。

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