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レクと介護と坂本九さん

とある高齢者施設で、毎日毎日必ず2種のレクレーションを開催している。この事は、ここに2~3回は書いたと思うけど、誠に驚くべきことだと思う。

この2つの会場に分かれての開催というのもポイントで、片方がダンスで、もう片方の会場では俳句や短歌とか、片方がダーツゲームでもう片方は塗り絵だとか。好きな方へ行けるというのが良い。
身体を動かす方と創作活動との2種に分けているのかな?

息が苦しい人も腰や膝が痛い人も、鬱っぽくて臥せっている人も、声をかけに行くと「どれどれ・・・」とほとんどの人が参加する。お看取り間際の人や胃婁が入って経管栄養をやっている人も来る。

ゲームや創作自体も楽しいのだろうけど、そこに集って、お仲間や職員と触れ合うのが何より楽しみなのだろう。

自分が休日だった翌日も「昨日のレクは何だったのかな?」と記録を見るのだが、そこには「さりげなく後ろへポイっ!ゲーム」とか「ドキドキじゃんけん島」とか書いてあるので、どんなのだったんだろう?と凄く気になる。

それらのゲームを観ていて気が付いたのは、心理学の生徒だった頃にやっていたグループワーク、エンカウンターなどとよく似たものも多いということだった。それが実に面白い。介護業界の方々もよく考えるなあーと感心してしまう。それらは、楽しくありながらも絶大な脳や心への刺激となっているだろう。

そしてもちろん中には「そういうのは嫌いだから行かない。」と言う人もいる。(多分私も集団行動が嫌いだからそう言う婆ちゃんになると思う。)

すると、介護職員さんは「はーい、分かりました。では、ごゆっくりお過ごしくださいー。」とドアを閉めている。
しかし、翌日もその翌日も午後になるとドアを開けて「レクの時間ですが、どうなさいますかー?」と必ず声をかけている。

そのうち「なー--んかい言えば分かるの?行かないって言ってるでしょ?(怒)」と切れられるわけだが「はーい、わかりました~!」とドアを閉めて、その翌日も「こんにちわー!レクの時間ですが・・・」と続くわけである。必ず毎日声をかけている。

無理じいはしていない。

が、「今日は魚釣りで、もう池が作ってあるんですが、降りて行ってみますか?」と、また訪室なさるわけである。

池と聞けば、「ど、どんなんだろう?じゃあ、行ってみるか?」となり、会場へ行くと、それは大きな模造紙を床に広げた池の絵なので「なんだよ、ふざけんなよ。」と怒られるわけだが、苦笑いしながらも参加して、気が付けば必死になっていらっしゃる。

連日、色々と工夫をこらした催しの中、塗り絵だけだったりすると「なんだ、今日は塗り絵か。」と私なんぞは思うわけだが、さり気なく流されているBGMが素敵だった。
90代の人々が、そのBGMを聴きながら、皆さんノリノリで色を塗っているではないか。
そして、ある曲の時には「ティカ♪ティカ♪ティカ♪ティカ♪ティカ♪」とか、また別の曲の時には「それがどした♪それがどした♪それがどーしたー♪」などと合いの手を入れながら塗り絵をしていらっしゃるのだ。

その姿が滅茶苦茶可愛かったのと、もう一つは、「何だろう?この曲。子供の頃に聴いたことがあるけど。。。。」と気になって気になって・・・、調べてみたら坂本九さんの曲だった。

ティカティカ♪と、それでどした♪それでどした♪と歌っていた婆ちゃんたちの声が耳に残っている。

特に一曲目の歌詞で「この世で一番肝心なのは素敵なタイミング♪」という部分があるのだが、私の場合はノリノリになるのではなくて「ほほう~、そのとー-りだなあー--。」と腕組みして感心してしまう。良い歌詞だなと検索してまで読みふけってしまった。

確かにこの世で最も大事なのはタイミングかも知れない。でも、その素敵なタイミングというのは、他人の心だと分からないものだから、たゆみなく声をかけるのだな~と。
ちょっとうるさいと思られるかも知れない。
でも、何もしないよりは遥かにまし。

回をこなせば、いつかはその素敵な心のタイミングにかち合って、その人がドアの外に出るかも知れないのだから。

レクに関しては介護さんに任せるとして、私も怒られつつも色々なタイミングで声をかけて行こうと思ったのだ。

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