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Withコロナ時代の展覧会はどう変わる? ユニークな試み 6展示。

緊急事態宣言下でのほとんどの美術館が閉館した時期を経て、6, 7月ごろから多くの美術館が再開しました。

三密回避策として多くの美術館では「webでの事前予約制」「整理券制」などを導入していますが、こういった「対策」に加え、ユニークな方法で展覧会の「鑑賞体験」をアップデートするような展示にも出会うことができました。

展覧会を「オンラインで見る体験」は「生で見る体験」に劣るのでは?なんていう先入観を壊してくれるようなユニークな試みを、アートファンの視点から6つご紹介します。

(※ top画像はエキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク @東京都写真美術館の《UN-DEAD-LINK 2020》オンライン会場風景です。)

■ リアル会場に負けない 豪華なオンライン会場

緊急事態宣言下の間、「オンライン会場」としてVRや映像で展示を行う展示も増え、オンラインだけで展示を行うような試みも増えてきました。その中でも特に面白いと思ったのが、こちら2つです。

 (1) webとリアルで異なる「2つの鑑賞体験」/ エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク @東京都写真美術館

(2020年8月18日(火)~10月11日(日))

日本でのインターネット普及の起爆剤となったWindows95の発売翌年・1996年からインターネットアート活動を行ってきた日本のアートユニット・エキソニモの個展ですが、実会場と連動したオンライン展示の充実度がとにかくすごい!

もともとは NY在住のアーティスト本人が来日できないかも、また美術館が閉館せざるを得なくなるかもといったリスクを勘案し、全てをオンラインで展示する対策も並行して準備されていたそうなのですが、実会場に展示しきれない過去の作品や、インタビュー、エッセイなど、図録1冊にもおさまりきらないほどの膨大な情報量!

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(オンライン会場の様子)

さらに、オンライン会場からアクションを起こすことで、実会場に介入ができるような仕組みも。オンラインとオフラインそれぞれで優劣つけがたい異なった鑑賞体験ができるユニークな展示です。

 (2) 大充実の解説付きVRビューイング / 「未来と芸術展」 @森美術館

 (実会場での展示は終了しています)

緊急事態宣言の間、VRや映像など、オンラインで楽しめる展覧会をこちらのnoteにまとめていました。

その中で特に充実していたと思ったのが、こちらの展示。再開できないまま閉幕してしまいましたが、現在でもオンライン上で展示を楽しむことができます!

3Dウォークスルーをつかった展示ですが、特にすごいのが「解説」の充実!会場にあるすべての解説文を読めるだけでなく、森美術館の前館長でありこちらの展覧会が携わる最後の展示となった南條史生さんがひとつひとつの作品を動画で解説してくださり、見応えがあるだけでなく、ちょっとVIP感も味わえちゃいますね。

■ 会場に大人数は集めない でもオンラインで「過程」も楽しむプロジェクト

展覧会そのものをオンラインで行うのではなく、実会場とSNSや動画サイトを連動させ、普段は見られないような、作品や場がつくられていく「過程」をたのしむことができるプロジェクトも。

 (3) 展覧会でも公開制作でもないアートプログラム / SP. by yuko mohri @Ginza Sony Park

 (2020年7月20日(月) 〜 8月26日(水))

「展覧会でも公開制作でもないアートプログラム」とは、いったいなんぞや?と、思わず確かめに行ってしまったプロジェクトです。

(▲「ナンスカ」に寄稿した記事です)

美術館ではない、Ginza Sony Parkを現代アーティスト・毛利悠子さんのスタジオとし、「場」を活用した作品をつくりあげていくというプログラムです。

ユニークなのは、ひとりで「場」をつくるのではなく、山本精一さん・鈴木昭男さん・大友良英さんらミュージシャンとコラボレーションしながら「場」をつくっていくこと、また、その様子を毎日webサイトやInstagramで発信し、その場に行かなくても毎日毎日変わりゆく作品を見ていくことができること。

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(▲SP. by yuko mohri 特設サイトより)

作品とミュージシャンがコラボしたライヴの様子は、「SP. by yuko mohri Session with Seiichi Yamamoto」(出演者 毛利悠子(作品)/ 山本精一(演奏))はライブ配信され、会期中Youtubeで見ることもできます。

 (4) 展覧会が中止になった美術館を使ったパフォーマンス / 「作品のない展示室」展 〜パフォーマンス「明日の美術館をひらくために」 @世田谷美術館  

(展覧会:2020年7月4日(土)~2020年8月27日(木)
パフォーマンス:記録映像等の公開(YouTube)2020年10月17日(土)予定)

世田谷美術館で開催されている「作品のない展示室」展は、新型コロナの影響で企画展が開催できなくなったことを受けて、むしろ作品も可動壁も取り払って、なにもない展示室そのものを展示してしまおうという展示で、普段は「作品」ばかりに目がいってしまうところ、「建物」をじっくり見る面白い取り組みでした。

(▲「ナンスカ」に寄稿した記事です)

そしてその最終日、その”作品のない展示室”をつかい、ダンサー・鈴木ユキオさんや過去のパフォーマンス・プログラムに関わったアーティストたち、それに館内スタッフも加わってパフォーマンスを行うという取り組みがなされるそうです。

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(展覧会も普段はみられない光景が新鮮でした)

このパフォーマンス自体は展覧会最終日の閉館後、非公開で行うそうですが、Instagramでその練習の様子や、それを映像作品にしていく様子の配信が続けられるそうです。最終的には、2020年10月17日(土)にYoutubeで公開されるようですが、この「過程」を一緒に楽しめるというのは嬉しい試みです。

■ ロボットを使って自宅からリモート鑑賞

webや映像で見られるのも良いけれど、実会場の臨場感を、自分の見たい視点で自由に移動できるというのはやっぱり魅力。そんななか、ロボットを使ったリモート鑑賞の取り組みもなされています。

 (5) テレプレゼンスロボット「Double 3」で展覧会をリモート鑑賞 / 「あるがままのアート -人知れず表現し続ける者たち-」 @東京藝術大学大学美術館

 (2020年7月23日(木・祝)~9月6日(日))

既存の美術や流行、教育、障害の有無などに左右されず、ただひたすら自由に独自の世界を創造し続けるアーティストたちの展覧会ですが、こちらでは距離や時間、障害や持病、感染症予防対策などあらゆる理由により会場に直接訪れることが難しい人達を中心にテレプレゼンスロボット「Double 3」をつかった鑑賞の取り組みがなされました。

わたし自身はこちらは体験していないのですが、いつもnoteを拝読させていただいている松下祐介さん実会場とリモート鑑賞、両方を体験された様子をnoteで詳しくレポートしてださっています。

「音も静かで会場の雰囲気を壊す感じはありませんでした。」とのことで、今後の展開が楽しみな取り組みです。

 (6) 分身ロボット「OriHime」でコミュニケーションをとりながらのリモート鑑賞 / ヨコハマトリエンナーレ2020「AFTERGLOW―光の破片をつかまえる」 @横浜美術館、プロット48

(会期 2020年7月17日(金)-10月11日(日))

最後は、このコロナ禍で多くの国際芸術祭の中止が発表される中、世界各地から約70組のアーティストの作品をあつめ、ほぼリモートによる指示でつくりあげられたという「ヨコハマトリエンナーレ2020」

こちらでは、身体的制約があるなど、さまざまな理由により外出することが難しい方を対象に、分身ロボット「OriHime」による鑑賞を行う取り組みをこれから開始するそうです。

こちらは自立して動くロボットではなく、外出が難しい方の家族や友人が遠隔から鑑賞する方の分身となる「OriHime」を持って展覧会を鑑賞するというもの。「OriHime」にはカメラ、マイク、スピーカーが搭載されているので、映像作品の音を聞いたり、会場にいる方との会話を楽しみながら、手元にあるダブレットなどを操作して喜怒哀楽を「OriHime」を通して表現し、コミュニケーションをはかることができるのだそうです。

一方的に鑑賞するだけではなく、コミュニケーションも楽しめる取り組みですね。

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コロナ禍のリスクを低減しながら、「会場で作品を見る」だけではない鑑賞方法をアップデートしてくれる取り組み、今後も注目していきたいと思います。

あとは、今は無料のこういった取り組みにもちゃんとお金が支払える良い仕組みができると良いのですが…(エキソニモ展のオンライン会場は、本当に課金したいです…)

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(東京都写真美術館ニュース別冊「ニァイズ」より)

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