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再活用された「歴史ある建築」が美しい美術館 4つ。

”日常の「何それ?」を楽しむメディア”「ナンスカ」に、東京都庭園美術館で開催中の「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」展についての記事を寄稿しました。

■ アール・デコ建築の空間と共鳴する”現代アート”の展覧会 「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」展(東京都庭園美術館)

東京都庭園美術館の特徴といえば、展示にも匹敵するような見応えのある歴史的建築と調度品。そこで今回は、過去に別の用途で使用され、現在は美術館として再活用されている「歴史ある建築」が美しい美術館 を4つ+αご紹介いたします。

東京都庭園美術館(東京都・目黒)

目黒駅から歩いて10分ほど、自然教育園に隣接する緑に囲まれた美術館です。

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東京都庭園美術館 外観

1933年に旧朝香宮邸として建設され、1947年までは来賓をもてなす場と邸宅として使用されていたものの、その後、外務大臣公邸、迎賓館などとして利用された後、1983年より美術館となりました。

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1920年〜1930年代に流行した「アール・デコ」の様式が建築から照明などの調度品にも取り入れたその建物は、建物自体が”アール・デコの美術品”とも称され、国の重要文化財にも指定されています。

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「生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙」展での展示風景
( ≪無題≫ / 加藤泉 )

原美術館(東京都・品川)

品川駅から歩いて20分ほど。静かな住宅街のなかにある一軒家の美術館です。

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原美術館 外観

こちらは1938年に実業家・原邦造の邸宅として建てられたもので、設計は東京国立博物館・本館(上野)や和光ビル(銀座)を手がけた建築家・渡辺仁さんによるもの。庭の緑に際立つ真っ白い外観や、緩やかなカーブを描いた展示室が印象的な建物です。

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※ 2019年の加藤泉展にて撮影。通常は展示室は撮影できません。

また、建物のなかには、宮島達男さんや森村泰昌さん、奈良美智さんといった現代アーティストによる、この場所のために制作された作品も常設されています。

この原美術館は、老朽化を理由に2021年1月で群馬にある現・ハラ ミュージアム アーク」へ拠点をうつすことが決まっており、現在開催中の「光―呼吸 時をすくう5人」展がこの建物での最後の展覧会になります。

この美しい建築での最後の展覧会、ぜひご覧になってください。

■ 記録ではなく“記憶”に残す。原美術館、最後の展覧会 / 「光―呼吸 時をすくう5人」展 (現在開催中)

はじまりの美術館(福島県耶麻郡猪苗代町)

「はじまりの美術館」は、福島県にある「アール・ブリュット」(伝統や流行、教育などに左右されず、自身の内側から湧きあがる衝動のままに表現した芸術)の美術館です。

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はじまりの美術館 外観

築約140年の酒蔵「十八間蔵」を改修して誕生した小さな美術館。この「十八間蔵」は、酒蔵・ダンスホール・縫製工場と用途を変えて利用されてきた後、2014年6月に美術館となりました

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「十八間蔵」の名前は、約33m(18間)1本の木でできた梁に由来するそう。この立派な梁だけでなく、国産の松の古材を再利用したという床や、木繊セメント板、コンクリートブロックなど、建築のなかのいろんな素材の個性が楽しい美術館です。靴を脱いで上がるので、足元の感触も楽しい建物です。

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「十八間蔵」の名前の由来となった約33m(18間)1本の木でできた梁

■「記憶」をたどって、つなぐ。 ーあした と きのう の まんなかで @はじまりの美術館 (※ 過去の展覧会のnoteです)

弘前れんが倉庫美術館(青森県弘前市)

明治・大正期に建設された元シードル工場「吉野町煉瓦倉庫」を改修し、今年オープンしたばかりの美術館です。

リノベーションの設計デザインは建築家・田根剛さん。もともとあったコールタールの質感を活かした壁など、過去の雰囲気も残しつつ設計されているようです。

シードル工場として建てられた当時、工場をつくった実業家・福島藤助は、木造ではなくレンガ造りにした理由を「仮に事業が失敗しても、これらの建物が市の将来のために遺産として役立てばよい」と、語っていたのだとか。後々まで、公共の資産として使われることが考えられ、それが現在にも引き継がれているんですね。

…と、書いたものの、実は私も(遠征は自粛しているため…)まだ行けていません(泣)(もともとは開館したらすぐに行く気満々だったんですが…) 早く生まれ変わった新しい建物を見に行きたいです…

(このnoteを書いた今年の1月から、状況は大きく変わりましたね…)

美術館としてオープンする前は、奈良美智さんの《A to Z Memorial Dog》が設置されていました。(2017年に撮影。)

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⑤ まだまだある、歴史ある建築を活用した美術館。

そのほかにも、東京近郊だけでも、様々なかたちで歴史的建築を活用した美術館がありますね。

例えば、エントランスは「日本橋三井タワー」の新しい建物にありながら、展示室は昭和初期の日本を代表する重厚な洋風建築として、国の重要文化財に指定された「三井本館」に置かれた「三井記念美術館」

1894(明治27)年、開国間もない日本政府が招聘した英国人建築家ジョサイア・コンドルによって設計された、三菱が東京・丸の内に建設した「三菱一号館」を解体した後、40年ほどたってからコンドルの原設計に則って同じ地に再建、2010年4月6日に美術館として正式開館した「三菱一号館美術館」

昭和2年にネオ・ルネッサンス様式でつくられた旧川崎銀行千葉支店を鞘堂方式(古い建物をそのまま抱き込むように新しい建物を建てる)で保存、再生した“さや堂ホール”を有し、そのなかで展示も行う「千葉市美術館」
(千葉市美術館自体も、今年7月にリニューアルオープンしました。)

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現在、千葉市美術館で開催中の「宮島達男 クロニクル 1995-2020」展でも、この「さや堂ホール」が活用されています。


今回は「美術館」に絞ってご紹介しましたが、ギャラリーやオルタナティブスペースなどは、さらに自由度高く、古い建築を再活用しているところも多数あるので、近いうちにこちらもまとめてみたいなと思っています。

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