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個人コレクターによる 魅惑の「コレクターミュージアム」 3つ。

自分がコレクターだったり、知り合いにでもいない限りなかなか覗けない「コレクター」さんの世界。今回はそんな「個人コレクター」の世界を覗くことができる、現代アートのミュージアムを3つご紹介します。

1) WHAT (東京都・天王洲)

2020年12月に天王洲に誕生したばかり。美術品などを扱う倉庫ビジネスを手がける寺田倉庫による新しいかたちのミュージアムです。

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「倉庫を開放し、普段見られないアートを覗き見する」 というユニークなコンセプトのもと、寺田倉庫が”保管する”コレクターさんたちの貴重なアート作品を”公開”。逆転の発想ですね。

2021年5月30日(日)までは「-Inside the Collector’s Vault, vol.1-解き放たれたコレクション」展を開催し、日本屈指の現代美術コレクターとして知られる精神科医・高橋龍太郎氏の若手から大御所まで約30点の現代アートコレクションと、匿名のA氏による約40点の奈良美智氏作品が並びます。

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高橋龍太郎氏コレクション

解説も通常の美術館での解説とはひと味異なり、「なぜその作品に惹かれたのか?」「日常の中で、どんな風にこの作品と向き合っているのか?」といったコレクター目線で語られているのがユニークです。

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A氏コレクション

▼ webメディア「ナンスカ」に寄稿した紹介記事もご覧いただけると嬉しいです。

2) S-House Museum (岡山県・岡山市)

”前方視的ミュージアム(Prospective Museum)”と名づけた、新たな美術館のあり方を提案する実験的な私設美術館。オーナーの花房香氏が7人と2組のアーティストと10年単位で契約し、1アーティストが1部屋ずつ展示を担当しています。

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S-House Museum外観

ユニークなのは、各アーティストの作品は毎年1作品ずつアップデートされ続けていると言うこと。瀧口修造氏の”同時代の芸術こそ人々の心を豊かにする”という理念に則り、”同時代を生き生きと体感できる美術館”を目指しているそうです。(記事のtopの写真も、このミュージアム内の「目」の部屋です。)

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Chim↑Pomの展示室

また、こちらの建物は1996年、現SANAA(妹島和世氏+西沢立衛氏)が初の木造個人住宅として設計したものを、SANAAから独立した建築家、周防貴之氏が芸術家と建物をつなぐ美術館コーディネイトと改修を行なったというもの。たくさんの現代アートに囲まれつつも「美術館ではなく、人のおうちの中でゆったりと作品を見る」ような、素敵な体験です。

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※ 感染拡大防止のため、当分の間休館されているようです。

▼過去に訪問した記録をnoteに書いています。

3) KAMU kanazawa (石川県・金沢市)

こちらは私も未訪問です。金沢21 世紀美術館から徒歩3分の場所に2020 年6月21 日にオープンした私設の現代アート美術館。こちらをつくったのは、1987年生まれのアートコレクター・林田堅太郎氏。

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レアンドロ・エルリッヒ氏の大型作品《階段》を展示する「KAMU Center」をはじめ、その徒歩圏内に「KAMU Sky」,「 KAMU Black Black」,「KAMU L」を次々とオープン。

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コレクターとして作品を収集する中、もともとは美術館をやろうと思っていたわけではなかったものの、「『日本はプライベート美術館がないからマーケットが育たない』といっている大人たちに対して、じゃあやればいいんじゃないかと思って始めた」という林田氏。

その展示の特徴は、若手と巨匠のバランスをとって展示をしていること。巨匠を見に来た鑑賞者が、若手を”知る”ことを重要視して展示構成しているのだそうです。「同じ時代を生きている作家さんたちと新しい価値をつくっていきたい」といいます。

その若い感覚に今後も期待。そして、出かけられるようになったら早く行ってみたい期待の私設美術館です。

※ 林田氏のコメントなどは、こちらのYoutubeから参照しました。

番外編) かぼちゃ美術館(神奈川県・湯河原)【閉館】

草間彌生さんの個人コレクターさんによる「美術館」です。住宅街の中にある普通のお宅で、恐る恐るチャイムを鳴らすと、館長さん(コレクターさん)が出迎えてくださり解説などしてくださいました。

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コレクションは版画作品を中心にオブジェなども。草間彌生さんだけでなく、横尾忠則さん作品なども。(写真はほぼNGだったのでありませんが…)キャプションなどもお手製で、館長さんの熱意の伝わってくる美術館

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撮影OKだった、ポスター&書籍中心の部屋。カーテンも水玉ですね。

最後に伺ったのは3年ほど前でしたが、webを見る限りHPもなくなってしまい、閉館してしまったようですね… ご年配の館長さんがお一人でやっている様子だったので、(そして、10年前に伺ったときと3年前に伺ったときではずいぶん雰囲気も変わられていたので…) 「自分のコレクションで美術館」というのは、憧れるけれども難しいものだなぁ… と実感します。

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まとめ

根津美術館やアーティゾン美術館、さらには国立西洋美術館や大原美術館も、もとはコレクターさんによる美術館ともいえるのかもしれませんけれど。

ただ、今同じ時代に生きているコレクターさんたちによる、同時代の作家さんたちのコレクションを観ていくと、「こんな想いや共感があってコレクションした」というコレクターさんの想いが伝わってくるようで、観ていて本当に幸せな気分になります。

以前「アーティスト本人の手がける、個人ミュージアムの深い世界。」という記事も書きましたが、「コレクター」さんの手がけるミュージアムも奥深く、アーティストの方とはまた違った視点でセレクトされた作品たちが魅力的な場所です。

きっと、そこに行ったら「自分も好きなアーティストの作品をひとつでも買って、おうちで一緒に過ごしてみたいなぁ」という気分になってしまう幸せな空間です。コレクターさんの世界に、まずはミュージアムを通じて足を踏み入れてみませんか?


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