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ディストピアの名作・傑作SF映画① [16選]

こんばんは ぷらねったです
『こんな社会はいやだ!』と叫びたくなるような 映画で描かれる 未来の世界
今回は第一弾として「ディストピアの名作・傑作SF映画」をテーマに さまざまなSF映画を紹介していきます


ディストピア特集の第二弾はこちら↓

1.2300年未来への旅 (1976年)

監督は マイケル・アンダーソン
30歳を超えた人間が生きることを許されない 23世紀の世界を描いたSF映画です

舞台は西暦2274年
増えすぎた人口を抑制するため 30歳になると抹殺されるルールのある社会
脱走者の取り締まりを遂行する役目をもつ"サンドマン"であるローガンは とある理由でコンピュータによる管理に疑問をもつ...というストーリーです


「2300年未来への旅 ローガンの逃亡」という原作小説を基に製作された映画です
30歳になると抹殺され 生まれ変われるという前提で生きる 管理されたドーム内で暮らす人々
ミニチュア撮影されたSF的建築物の外観や 室内のデザインから服装まで 美術面のクオリティがとにかく秀逸です
ドーム内のさまざまな施設の描写も素晴らしいです
また ジェリー・ゴールドスミスによる前衛的な音楽が 狂ったディストピア感を増幅させています


終盤の脚本に賛否両論がありますが 個人的にはそこまで気にせず楽しめました
本作品を基にしたテレビドラマは 「未知への逃亡者 ローガンズ・ラン」というタイトルで 日本でも放送されました
娯楽的でありながら 芸術的な側面が光る ディストピアの名作SF映画です


2.1984 (1984年)

監督は マイケル・ラドフォード
"これぞディストピア"というテーマで描かれた ダークなSF映画です

舞台は1984年 世界はオセアニア, ユーラシア, イースタシアという3つの国家に分かれていました
オセアニアで生きるウィンストン・スミスは 新聞記事の修正・削除・過去の記録や歴史の改ざんをおこなう 真理省記録局に勤務していました
"ビッグブラザー"に対して絶対的服従を誓わされ 思想警察によって生活も監視される国民達
そんな体制に疑問を持ちはじめたウィンストンは 禁止されている"日記"をつけはじめる...というストーリーです


現在の"ディストピア"という言葉がもつイメージを決定づけたと言っても過言ではない ジョージ・オーウェルによる1949年の原作小説「1984年」を基に製作された映画です


圧倒的独裁者"ビッグブラザー"による管理下に敷かれた 全体主義の社会
そこから徐々にはぐれていく公務員の姿を描く 緊張感のある物語です
映画の内容は原作小説に忠実で そのまま映像化したような出来栄えです
SF的要素が 特撮ではなく 設定に集約されているタイプの作品ですが "ディストピアとはなにか"を理解するための第一歩目として とてもおすすめのSF映画となっています


3.アルファヴィル (1965年)

監督は ジャン=リュック・ゴダール
潜入捜査官が主人公のSF映画です

コード003のシークレット・エージェントであるレミー・コーションは 自らを新聞社のジャーナリストと偽って 思想の自由が排除された都市"アルファヴィル"へと潜入します
彼の目的は 「失踪したエージェントを探すこと」, 「アルファヴィルを建設したフォン・ブラウン教授を逮捕 または抹殺すること」,「アルファヴィルを管理する人工知能を破壊すること」であった...というストーリーです


かっこいいオープニングと 不気味なナレーションではじまる物語
愛も涙も禁じられ 会話も成り立たないような まさにディストピアな都市が モノクロで描かれています
人工知能のアルファ60は この管理社会の象徴的存在であり "1984"のビッグブラザー的存在です


本作品は ジャン=リュック・ゴダール監督作品の中で唯一のSF映画であり 未来都市を表現するにあたって ミニチュアやセットではなく 実際のパリ市街を使って撮影されたことでも知られています
しかし モノクロ映像やナレーションが効いているのか SF的に見えてしまうのが不思議なところです
それだけでなく 長回しの映像や美しいカットなど 巧みな映像演出がおもしろさを際立たせています


作中で登場する"誰ひとり過去を生きた者はいないし 未来に生きる者もいないであろう"という言葉が印象に残ります
後に製作された映画たちに大きな影響を与えたであろう 映画史に残るSF映画のひとつです


4.ソイレント・グリーン (1973年)

監督は リチャード・フライシャー
実現してほしくないような むごい世界が描かれたSF映画です

舞台は2022年
止まらない人口増加や環境汚染によって 世界は食住を失った人間があふれ 特権階級と多くの貧民の格差が激しい社会になっていました
本物の肉や野菜は宝石以上に高価になり ほとんどの人間は ソイレント社が海のプランクトンを原料に作っているという 合成食品の配給によって生き延びていた...というストーリーです


ハリイ・ハリスンの小説「人間がいっぱい」を原作として製作された映画です
"偽物の食べ物"である合成食品や 安楽死をするための施設 そして貧富の差が激しい格差社会など 多くのディストピア的要素で描かれるのは 狂った社会の様子です


個人的には「ゼノギアス」というゲームがきっかけで この映画を知りました
作中では2022年の設定なので 実際の社会はここまで酷くなっていないことに 少しだけ安心します
果たして ソイレント社の新商品"ソイレント・グリーン"の正体とは?
衝撃の原材料に閉口してしまうであろう 70年代の名作SF映画です


5.ニューヨーク1997 (1981年)

監督は ジョン・カーペンター
低予算の制限を工夫と努力で乗り越えた 80年代の名作SF映画です

舞台は近未来のアメリカ
巨大な刑務所と化したマンハッタン島に 大統領専用機が墜落します
元特殊部隊出身で終身刑を宣告されているスネークは 恩赦と引き替えに大統領救出に向かいますが 制限時間はたった24時間だけであった...というストーリーです


本作品の主人公は 人気ゲーム「メタルギアソリッド」シリーズの主役であるスネークの元ネタです
また 特撮スタッフには 当時駆け出しの時期であった ジェームズ・キャメロンが参加していたことでも知られています
マンハッタン島全体が巨大な刑務所という 大胆なディストピアの設定
わざとらしい派手な演出は抑えつつ 最低限の視覚効果で観る人を楽しませる演出は ジョン・カーペンターらしい魅力に溢れています
そしてやはり印象的なのは スネーク役の カート・ラッセルのキャラクターです


気に入った方は 続編の「エスケープ・フロム・L.A.」もぜひ観てほしいです
脂の乗りきった 80年代のジョン・カーペンターによる 素晴らしいSF映画となっています


6.未来世紀ブラジル (1985年)

監督は テリー・ギリアム
ダクトが張り巡らされた 奇妙な世界を描いたSF映画です

舞台は20世紀の どこかの国
国を統括する巨大組織である情報省により 国民は厳しく統制され 町では爆弾テロが頻発していました
ある日 テロの容疑者である"タトル"を打ち間違えた紙が 情報省によって発行され 無関係の"バトル"という男が連行されていきます
一部始終を見ていたトラック運転手の女性である ジルが 役所に抗議をしても 相手にされませんでした
いっぽう 情報省につとめる主人公のサムは 上司の依頼で 誤認逮捕の責任回避のために試行錯誤する...というストーリーです


監督のテリー・ギリアムは 本作品を「バンデットQ」からはじまり 「バロン」で終わる3部作の 第2作目と称しており
これら3作では"統制された人間社会の狂気と そこから逃避したい願望"が共通テーマとして描かれています
また ディストピアの定番作品「1984」をテリー・ギリアム流に解釈したような内容が描かれますが
同監督は 「1984」よりも 実際の1984年の社会状況を より反映させた映画だと語っています
映画内では 管理された階級社会を象徴するように 各所に張り巡らされたダクトのデザインが印象的です


本作品には 監督自身の意向を反映したオリジナル版に加えて
ユニバーサルピクチャーズが要望した 大衆ウケを狙った ハッピーエンド版が存在しています
もちろんオリジナル版こそがこの映画のテーマに合っていますが それぞれ見比べてみるのも ある意味おもしろいかもしれません
妄想と現実が混同していく おかしな世界観が描かれる 名作SF映画です


7.THX-1138 (1971年)

監督は ジョージ・ルーカス
徹底的に管理された社会が描かれるSF映画です

舞台は25世紀の 人名が番号で管理されるようになった社会
人々は広大な地下都市において 支給される精神安定剤を服用し 感情や娯楽の規制された単調な生活を強制されていました
ある日 主人公のTHX-1138は ルームメイトと共に精神安定剤の服用を止めたことにより タブーとされている肉体関係を結ぶことになります
そして2人は 地上への逃避行を夢見ますが ある人物の密告により連行されてしまう...というストーリーです


名前は記号と数字の組み合わせであらわされ 脳は薬によって抑制され 服は白に統一され 全員スキンヘッドという まさにほとんどすべてを管理された 地獄のような社会が描かれています
人間達を管理するのはロボット警官達であり ロボットに掛かる経費まで常にカウントされる有様です


本作品はジョージ・ルーカスのデビュー作であり 大学時代につくった短編映画を基に製作された映画で 興行的には大失敗に終わったことでも知られています
現在出回っているディレクターズ・カット版では CGによって 背景などの大幅な差し替えがおこなわれており
この辺りは「スター・ウォーズ」でも同様の修正が繰り返されているので ジョージ・ルーカスらしいとも言える部分です
「スター・ウォーズ」とはまったく異なるジョージ・ルーカスの魅力を ぜひ体感してみてください


8.トゥルーマン・ショー (1998年)

監督は ピーター・ウィアー
とてもSF的な内容だということもあり ディストピアSF映画として紹介させていただきます

離島のシーヘブンで保険会社につとめる青年 トゥルーマン・バーバンクは 生まれてから一度も島から出たことがありません
それは 幼い頃にヨットに乗って海で遊んでいた際 自分のせいで父を亡くしたことにより 水恐怖症を患ったことが原因でした
しかし ある日彼は 雑踏の中でひとりの老人を見かけますが それは死んだはずの父親だった...というストーリーです


フィリップ・K・ディックが1959年に発表した「時は乱れて」からアイデアを拝借したとされる映画です
脚本のアンドリュー・ニコルは 同じくディストピア的に描かれた「ガタカ」の監督や「TIME/タイム」の脚本も担当しており 管理社会を描いた ダークな内容が好きなことがうかがえます
当初は脚本だけでなく 監督も担当予定でしたが 「ガタカ」でしか監督経験がなかったことや ジム・キャリーの高額なギャラが原因で ピーター・ウィアーが監督を担当することになりました


映画の中の リアリティテレビ番組という特殊な設定が 秀逸な脚本で描かれる ひとりの男の悲しい物語
まさに この映画を観る自分たちも 残酷な「トゥルーマン・ショー」の視聴者であり メタ構造の一部に組み込まれているのです
ジム・キャリーの演技が心に刺さる 90年代の名作映画です


9.トゥモローワールド (2006年)

監督は アルフォンソ・キュアロン
シリアスなテーマを 圧巻の映像表現で描くSF映画です

舞台は 人類が繁殖機能を失った 2027年のイギリス
18年もの間 子どもが誕生していないという 原因不明の状況
世界各地が内戦やテロによって壊滅する中 イギリスは軍事的抑圧で国内の秩序を維持していました
エネルギー省に勤めるセオは かつての妻であるジュリアンが首謀者である反政府グループ"FISH"によって 通行証目当てで拉致される...というストーリーです


P・D・ジェイムズの原作小説「人類の子供たち」を基に制作された映画です
繫殖能力を失った人類という リアルさを感じられるテーマが 秀逸な脚本で描かれています
そして なんといっても「ゼロ・グラビティ」などでもタッグを組む エマニュエル・ルベツキの撮影による 驚くべきノーカットでの長回し映像などが とても印象的な映画です
「バードマン」などでも使用された この長回し映像の手法は 本作品が まるでドキュメンタリーかのような臨場感を生みだしており 他の映画ではできない映像体験を生みだしています


これらは非常に特殊な方法で撮影されており 例えば車のシーンでは 車自体を改造することで 素晴らしい映像表現が実現されています
まず 車の屋根を取り払い その上部に撮影スタッフが乗り込める場所をセッティングし ジョイスティックによる操作で回転可能な 特殊カメラを用意
そして 車両の前方と後方に とても低い姿勢で運転できるような スタントマン専用の運転席を配置することで 俳優による運転が必要ないようにして 撮影されたそうです
秀逸な映像センスは「バードマン」や「ゼロ・グラビティ」でも 特に発揮されていますので エマニュエル・ルベツキには 今後も要注目です


10.華氏451 (1966年)

監督は フランソワ・トリュフォー
本がテーマの 珍しいSF映画です

書物を捜索し 焼却する"ファイアマン"として働く ガイ・モンターグは 偶然出会った女性クラリスの影響で本の存在を意識し始めます
そして 妻のリンダとは違い 本を愛するクラリスの影響で 本の虜になっていく...というストーリーです


レイ・ブラッドベリの原作小説「華氏451度」を基に制作された映画です
華氏451度というのは 本の素材である 紙が燃えはじめる温度を意味しています
ジョージ・オーウェルの「1984年」では主に思想が統制されますが この映画では 読書が禁じられた社会が描かれます
本作品は 宇宙, 機械, ロボットなどのSF嫌いを公言する フランソワ・トリュフォーが監督しています
そのため SF要素は脚本に集約されており SF的な特撮演出は ほぼありません
それでもSFに属するテーマであるため SF嫌いがつくったSF映画として 独特の魅力を放っています


現代社会において 書物は禁止されていませんが 教科書や小説など 書籍は電子化されてきています
そういった書籍はプラットフォームがなければ読めませんし これは音楽や映画でも同様のことが言えるでしょう
愛すべき作品が観れなくならないように できるだけ 作品は物として所有しておきたいと 個人的には思っています
話がそれましたが 60年代ながらも斬新なテーマで描かれた 傑作SF映画となっています


11.ファンタスティック・プラネット (1973年)

監督は ルネ・ラルー
アニメーションで描かれる 不気味な世界観のSF映画です

舞台は宇宙のどこかにある 惑星イガム
巨大なドラーグ族が文明を支配し 小さなオム族は原始的な生活を強いられ 虫けらや ペットのように扱われる者もいました
しかし ドラーグ族の中には オム族との共存を目指す穏健派もいます
そんな中 あるオム族の赤ん坊が 穏健派であるドラーグ族の家庭に拾われ 育てられ 知識を得ていく...というストーリーです


ステファン・ウルによる小説「オム族がいっぱい」を原作として製作された映画です
シュールな世界観の中で まるで虫のように扱われる小さな人類オム族と それを支配する巨大な人類ドラーグ族が描かれます
「時の支配者」をはじめとした ルネ・ラルーによる 異彩を放つアニメ作品の中でも 本作品は 特に輝きを放っています


"もし地球に 人間の上に立つような種族がいたら どうなってしまうのか"
この映画を観ると おそろしい絵柄と共に そんなことを想像させられてしまいます
おぞましいと感じる巨人の姿や行動も 置き換えてみれば 人間が普段おこなっている行動と 大きな違いはありません
人類を皮肉った内容と 皮肉なタイトル
奇妙でユニークなディストピアが描かれる 名作SFアニメ映画となっています


12.ダークシティ (1998年)

監督は アレックス・プロヤス
夜しかない街を描いた 90年代のSF映画です

ホテルの一室で目覚めたジョン・マードックは 自分が誰なのか思い出せませんでした
クローゼットの中にあるトランクには "シェルビーチ"と書かれた謎の絵葉書
脳裏に青い海の風景がフラッシュバックした後で 突然シュレーバーという博士から電話があり 追手から逃げるように指示される...というストーリーです


「アイ,ロボット」で知られる アレックス・プロヤス監督の映画です
しっかり構成されたストーリーと "夜しかない街"を描いた特殊な設定には 同年に公開された「トゥルーマン・ショー」との共通項を感じます
謎だらけの序盤から だんだんと秘密が明かされていく展開が魅力的です


そしてなんといっても "夜しかない街"の秘密が この映画における最大のポイントでしょう
果たして 冒頭で語られる "ストレンジャー"の正体とは?
90年代らしさ漂う 傑作SF映画のひとつとなっています


13.Vフォー・ヴェンデッタ (2005年)

監督は ジェームズ・マクティーグ
仮面の男が活躍する DCコミックスの漫画を原作としたSF映画です

舞台は 第三次世界大戦後の世界における 全体主義国家と化したイングランド
国営放送BTNに勤務するイヴィーは 夜間外出禁止令を破って外に出た際 秘密警察の構成員であるフィンガーマンに乱暴されそうになります
そこに仮面をかぶった謎の男"V"があらわれ イヴィーを助け出すところから始まるストーリーです


ディストピアの定番作品「1984」を明らかに意識したような 殺伐とした管理社会と ヒトラーのような強権的指導者が存在する設定のSF映画です
ナタリー・ポートマンが 続編制作を希望している映画としても知られています
実は 仮面の男は「マトリックス」のエージェントスミス役で知られる ヒューゴ・ウィーヴィングが演じており 脚本も「マトリックス」のウォシャウスキー姉妹が担当しています


序盤は"V"の独特過ぎるノリについていけない部分もありますが 中盤からグッとおもしろくなっていきます
なぜ"V"は国家に反抗するのか?
そして"V"とはいったい何者なのか?
想像のつかない展開に 驚かされるSF映画となっています


14.ロスト・エモーション (2015年)

監督は ドレイク・ドレマス
リドリー・スコット製作総指揮で描かれる 感情がテーマのSF映画です

舞台は 世界戦争によって 地上の99.6%が破壊された近未来
滅亡の危機に瀕した人類は 感情を悪と結論付け 遺伝子操作で感情を排除した人間の共同体"イコールズ"をつくりました
ここで暮らす人間は監視下に置かれ 愛情のような感情が芽生えた場合 "発症"したとして 隔離施設に強制収容されてしまう...というストーリーです


ディストピアの名作「1984」, 「THX-1138」, 「2300年未来への旅」, 「ガタカ」などの要素をうまく混ぜ合わせながら 現代的な空気感で描かれる映画です
白を基調とした建物が印象的ですが 撮影は日本でもおこなわれ 建築家である安藤忠雄の建築物も使用されています


この映画を観ていると "なにかを見て なにかを感じていられること"が どれだけ素晴らしいことなのかを実感します
すべて規制された社会で生きる人々を描いた この映画
社会や人間の あるべき姿や 本能について考えさせられる 傑作SF映画となっています


15.アンチヴァイラル (2012年)

監督は ブランドン・クローネンバーグ
鬼才の遺伝子を継ぐ監督の 長編デビュー作となるSF映画です

近未来の世界では セレブリティが感染したウイルスを 熱狂的なファンへ注入するという マニア向け医療サービスがおこなわれていました
注射技師のシドは 希少価値の高いウイルスを自らに注射して外部へ持ち出し ブローカーを通して闇市場へ横流しすることで利益を上げていた...というストーリーです


父であるデヴィッド・クローネンバーグの特徴が"人体"だとしたら 息子ブランドン・クローネンバーグの特徴は"血液"でしょうか
長編デビュー作とは思えないほどの脚本と演出で 他には無いような作風が仕上がっており ブランドン・クローネンバーグ監督は今後 ディストピアSFしか作らないのではないかと思わされます


"セレブの感染したウイルス"が高価値で取引されるという なんとも言えない設定を軸に展開していく物語
白を基調にして 極度の潔癖症をイメージさせるような 現代的で病んだ世界観に絶妙にフィットする ケイレブ・ランドリー・ジョーンズの演技にも注目です
血や グロ描写が問題ない方だけに観てほしい 鋭くとがったSF映画です


16.ポゼッサー (2020年)

こちらも監督は ブランドン・クローネンバーグ
おぞましいほどにグロテスクな 血の描写が特徴のSF映画です

他人の脳と身体に入りこみ その身体を使って暗殺をおこなう殺し屋のターシャ
罪悪感が伴う任務に加え 疎遠な夫や息子との関係もうまくいっていませんでした
そんなある日 IT企業の社員に乗り移って任務を遂行する途中で 同期に異常がうまれる...というストーリーです


作中に漂う 張り詰めたような緊張感が魅力的な映画です
"他人に成り代わって 標的の暗殺を遂行する"という 特殊な設定が生み出す雰囲気に 序盤から引き込まれます
白を基調にした無機質な世界観で描かれるのは 細かいディストピア的要素の演出です


ゴーグルを着用し 同じ服装で 横並びの状態で勤務する会社員たち
彼らは 人々の生活を監視する業務をおこないながら 自らの勤務状況も監視されているのです
転移の瞬間の映像や 音楽も素晴らしく 未来的な空気感を醸しだしています
秀逸な心理描写によって 胸が苦しくなるような展開の物語は どこへ着地するのか
グロ描写や鬱な内容が問題ない方にしか絶対におすすめできない 現代を代表する胸糞SF映画となっています


あとがき

今回は「ディストピアの名作・傑作SF映画」についてのお話でした
ディストピアがテーマのSF映画の候補があまりに多く さすがに紹介しきれなかったため 第二弾以降の動画も作るので ご期待いただければ幸いです
紹介した映画のような未来が訪れないよう 切に願います
最後までご覧いただき ありがとうございました

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