都会と地方の両方に住んで分かった。 地方の変化が遅い理由とその背景

私は以前は東京、現在は長野県のとある市に住んでいる者です。

東京では、IT関連のプロジェクトマネージャーとして30人程度のマネジメントをはじめ、顧客折衝、課題解決など変化をもたらす事を行ってきました。

そんな中、とある市から「観光面で地域の変化をもたらしたい」という言葉を聞いて、その一端を担いたいと思い、地方に住んでいます。

ただ、びっくりするほど都会と比べて変化がおきない。変化したとしてもそのスピードが著しく遅い

東京と同じことをしても、どうにも地方で失敗する。環境の違いにフォーカスして、この理由を自分なりに纏めてみようと思います。

地方創生がうまくいっていない方、これから地方へ移住を考えている方など、もしよろしければご覧ください。

Step1 稼がない事が『美徳』

仮にイベントを企画したとき、地域には(少なくとも私が住んでいる場所では)稼ぐことに快く思わない風潮があります。

その理由はある程度想定が出来ます。それは…

「既にあるイベントの多くが稼ぐことを目的としていないイベントだから」

そして、稼がないイベントや事業を行っている人の中には、

「私は手取りもないイベントを通して地域に貢献しているんだ!」

と、胸を張っている人も多いように見受けられます。

自分たちが稼がないイベントを運営しているため、新しく稼げるイベントを作られるのは快く思わない。

さらに、その状況が続き「稼がない事が美徳」という風習が生まれたように推察できます。

しかしながら、稼がない事業が何年も続くと、周りの声が変わってきます。

「開催してくれてありがとう!」から「やって当たり前」に。

手取りもなく、感謝される機会も減り、感謝のされ方も定例的になった事業。そして、その事業に関わる人達。

次に向かう先は…

Step2 変化を嫌う大多数による多数決

「稼がないイベント」から「稼ぐイベント」への変化など、事業に変化を行っても感謝されることはない。それどころか、

「なんで昨年から変えたの?」

揶揄する声が聞こえてくる。

すると、事業に対する姿勢が「Want」→「Must」に変化してきます。

つまり

「毎年恒例だから今年もやらなきゃいけないけど、去年と一緒でいいよね」

この変わらない姿勢を持つ人が増えます。

そして年齢を重ね、ジャッジする側に回り、事業に関わる多くが「変化しなくていい」という、同じ志向の多数決が始まります。

言うまでもなく、日本に目を向ければ、ニーズは多様化しています。PR手法も増え、興味共感を持つジャンルも変わってきています。

しかしながら、口ではある程度の変化を求めますが、結論は「昨年と一緒で」。

変化を求める声が生まれても、大多数の民主主義に勝てず、結果、変化に対応できずにいます。

Step3 「責任を問われない事」=「何もしない事」がはびこる行政体制

さらに、行政と関わることで地方は更に悪循環をもたらす可能性も。

イベントや事業は地方行政が事務局を担い、運営するケースが多くあります。

公務員は、学歴や実績に応じてある程度左右されますが、基本的には年功序列。年を重ねるごとに出世し、給与も上がるシステム。

このシステム自体を悪く言うつもりはありませんが、公務員のモチベーションに関して、言い方を変えれば

「頑張ろうがしなかろうが、役職も給料も変わらない」
「だったら、頑張って揶揄されるのではなく、人から怒られないように、責任を負わないように、できるだけ何もしないほうがいい」

この公務員と、変化を嫌う大多数。悪い意味でお互いの利害が一致し、さらなる悪循環が生まれます。


さて、そんな中でも、少数派の中で努力し、変化を求める人、変革を考える公務員が存在します。

しかし、当人物を諦めさせる環境が地方にはあります。

Step4 偉い人の後出しじゃんけん ミイラ取りがミイラに

議会や記者会見など公に広く発表するケースを除き、地方では打合せで議事録を書く、エビデンスを残すという文化が少ないです。

理由は「去年と変わらないのでメモを取る必要がない」からです。


では仮に変化を求める人(Hさん)が提案をし、承認されたとしましょう。

Hさんは一緒に活動するメンバーと実現に向け動き出します。

そんなある日、次の打合せでこんな発言が飛び交います。

「あの時、承認したけどやっぱやめよう」
「前回の打合せでそんな事いったけかなぁ」

Hさんが行ってきたことが実現できなかった。

だけではありません。

Hさんは一緒に活動してきたメンバーに謝りに行かなくてはいけません。

「せっかく協力したのに、なんで辞めるの?」
「こんなことなら、協力しなければよかった」

上司のせいだとも恥ずかしくて言えません。せっかくの協力者との信頼を失う結果だけとなりました。

こんな事象が度重なると、どんなにモチベーションが高くても、更にもう一度頑張りたいという姿勢は薄れていきます。

闘犬は戦えなくなり、木乃伊取りが木乃伊に
若しくは、自分が活躍できる新しい場所を目指して旅立っていきます

Step5 時代のニーズに合わせたスキル向上に鈍感

ここで、少し話の内容を変えて、スキル面のお話をしたいと思います。

地方創生の1つとして、移住や企業誘致が良く聞かれます。特に、IT関連はパソコンがあれば場所を問わない仕事が多く、ターゲットとされやすい傾向です。

ですが、実際はIT関連の移住や企業誘致に成功している自治体はごくわずか

その理由、実際に住んでいる私はこう思います。

「困ったときに相談する相手が身近にいない」
「IT関連の提案をする以前に、ITを理解させることができない」

地方では、USBを外したらマウスが動かない事、パソコンの電源を長押ししたらパソコンが壊れやすい事すら知らない事が当たり前。
中には、FAXの使い方を知らない、キーボードで文字を打てない人もいます。

例えば、システムの少し細かい事で少し困ったとき、聞く相手は都会のメンバーだったり、知り合いだったりで、地元の誰かと相談する事はレアケース。

また、例えばホームページの改修を提案する際にも、ホームページとは何かから説明する必要があります。

都会に比べて地元は自然にあふれるいい環境がかもしれません。
子育てに向いている環境かもしれません。

しかしながら、自分自身を成長し続ける環境とは言い難いのが実情です。

では何故、地方は新しい技術など、時代のニーズに合わせたスキル向上に鈍感なのか。

ここまで読んだ人はお分かりですかね。

「変化を嫌うから」です。

口ではある程度の変化を求めますが、実際に変化するケースはまれなのです。

ちなみに地方にいると、言っている事とやっている事が乖離するケースが多かったりします。

【IT関連で乖離するよくあるケース】
◆首都圏から若者を呼び込むことを目標にしているにも関わらず、地方紙に数十万もかけて広告を載せる。
◆Webでの集客が一番多いのに、毎回何十万枚もチラシを印刷する。
◆食べログがあるから自分の店のホームページは要らないと言うので、調べてみたら、そのお店の電話番号すら掲載されていない。

まとめ

ようやく、都会と地方の両方に住んでうまくいかない理由が分かった気がします。

矛盾している気もしますが、まず地方で変化をもたらすには、変化を嫌っている人が大多数であることを認識しなければならなかったという事です。

この環境で、同士を探し邁進する。私にはこの気概が足りなかった…が。(私個人、気概を高めてもう一度頑張るか、旅立つかは検討中…)

それでも地方で頑張るためには

これから地方で頑張りたいと思う方へ。
なおかつ、上記した環境はできるだけ避けたい人へ。

私がおススメする地方の選び方と付き合い方を以下に記載します。

①今までの職務と同じことを行っている企業がある地方を探す
→自分と同じ知識を持ち、共感する仲間が見つかりやすいです。

②関わりたい人は自分で探す
→誰かに紹介してくれた人は既に変化を嫌う人かもしれません。紹介された人と一緒になって、ミイラにされてしまうかもしれません。自分で人を探し、自分の目線で関わりたい人を見つけるべきです。

③「同じで」「そうは言っても」「忘れてた」を多用する人とは関わらない
→逃げ道を探して、変化を嫌い、何もしない人の可能性が高いです。

④「無償で行っている事業を自慢げに話す人」「無償を強要する人」とは関わらない。

以上です。もしよろしければ参考にしてみてください。

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