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イリヤの空、UFOの夏

"めちゃくちゃ気持ちいいぞ、と誰かが言っていた。だから、自分もやろうと決めた。山ごもりからの帰り道、学校のプールに忍び込んで泳いでやろうと浅羽直之は思った。"2001年-2003年と全4巻で発刊された本書は2000年代セカイ系の代表作の1つにして、ひと夏の出来事を描いた少年小説傑作。

個人的には『君と僕』を中心とした小さな関係性が世界の危機などの大問題に直結する作品群『セカイ系』の代表作として新海誠『ほしのこえ』、高橋しん『最終兵器彼女』は既読だったのですが、本シリーズだけは未読だったので手にとってみました。

さて、そんな物語は夏休み最後の夜に主人公の男の子、浅羽が学校のプールへと忍び込むと、伊里野加奈と名乗る、まさかの先客として見慣れぬ少女と出会うところから始まり、非公式のゲリラ新聞部『園原電波新聞』の仲間たちとの活動や学祭といった学生生活の裏側で、人類の未来をかけた【謎の組織とUFOとの戦い】が同時進行していくわけですが。

インターネットも普及しておらず、もちろんスマホも登場していない時代とあって、当然に登場する『テレホンカードに公衆電話』といったアイテムには時代的な懐かしさを感じつつも、シリーズ序盤は(1、2巻)いかにも『漫画的なスーパー設定部長』こと水前寺にふりまわされ続ける受け身な主人公、浅羽にあまり感情移入出来なかったのですが。シリーズ中盤(3、4巻)の伊里野と二人での【逃避行からのラスト】は胸熱だな。と引き込まれました。

また、2000年代セカイ系に共通している話かもしれませんが、2021年現在において新劇場版公開が待ち遠しい大ヒットアニメ、エヴァンゲリオンの影響は【作中の随所に感じるな】とも読みながら感じましたが、それでもアニメ化やゲーム化も含め、根強い支持を受け続ける理由がわかったような気もしました。(私的には、登場人物のうち"大人側代表"の榎本が割と好き)

3大セカイ系作品の一つとして、また爽やかで甘酸っぱい。普遍的なボーイ・ミーツ・ガールストーリーが好きな人にオススメ。

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