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蒼い時

"聴覚から視覚へ意識を戻した時、窓全体があおかった。その『あお』は、私にとっては『青』ではない『蒼』という字のそれだった。"1980年発刊され、当時はセンセーショナルな受け取り方もされた本書は、約40年過ぎた今。スターとして20代で区切りをつけた当時の著者の軸ある生き方が印象に残ります。


個人的には同時代的スターでも、熱心ファンでもないのですが【今度はキルト作家として】著者が出版する本が40年ぶりと注目を浴びる今【あまりの筆達者ぶり】にゴーストライター他の疑惑が起きた本書にあらためて関心をもった事、また連日の芸人達の闇営業関連の記事を読みながら、たまには芸能界本でも読んでみようかと本書を手にとりました。

さて本書は"一体、大人たちは何を基準にして私をらしくないと言うのか(中略)仕方がないじゃないか、私は無理をしているわけでも背伸びをしているわけでもない。誰も私を知らないくせに。"と憤りと孤独を抱えた著者が、出生と父への葛藤、マスコミに傷つけられながらの性についてやゴシップ記事裁判、そして結婚の必然として引退を決めた事が同性から非難も浴びた事などが、一方で【割と淡々と抑えた文章で】書かれているのですが。どこか不安定さを感じさせるからこそ、時折挟まれる、夫となる三浦友和や母親とのエピソードがあたたかさをもって安心させてくれる印象でした。

また、現在では多少は改善されたのだろうか?平気で戸籍謄本を入手して著者の家族関係を雑誌がスクープにした話や、まだ10代だった著者に対してセクハラまがいの質問を繰り返す記者のエピソードを読みながら不快に思いつつ。何とも真相は私にはわかりませんが【光あれば闇あり】芸能界の華やかに創られた印象の裏では今もこうしたドロドロとした何かが蠢き、被害者を生み出し続けているのだろうか。と考えたりしもました。(しかし、でもやっぱり。21才でこの文章力はすごいですね。。)

単なる暴露本としてでなく、昭和においてスターだった著者の文才を実感したい誰かにオススメ。

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