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TOKYOのホテルに『暮らす』という生活で、本当の「シンプルライフ」を探る

『365日のシンプルライフ』(英:My Stuff 2013年公開)というドキュメンタリー映画があった。フィンランドの首都ヘルシンキに住む26歳独身の男性ペトリ。彼は、ひとつの恋の終わりを機に、365日間、以下の4つのルールを課した。

1.モノを全て倉庫に預ける
2.1日に1個だけ持って来る
3.1年間続ける
4.1年間何も買わない毎日

彼はこの生活を通して「人生で大切なものは何か?」を探っていく。

人生で大切なものは何か?

私自身は、日本に生まれながらも、発展途上国といわれる国々を含めて45か国程、旅(プライベート、留学、仕事を含めて)をしてきた。「お金持ちだね」とか「行動力あるね」って言われるけれど、結局私にとっては、自分が感じた生活や社会への違和感、理不尽さ、資本主義への嫌悪感、を無視できなかったんだと思う。モノはいらないから、経験にお金と時間を使いたかった。

そして、モノがない発展途上国の国々の生活で、モノが制限されたら、頭を働かせることや、自分にとっての幸せとは、を考えさせられ続けてきた。

この『365日のシンプルライフ』を見て、この生活やルールを真似た人々は多かったらしい。1年間、本当にペトリ氏の4つのルールを自分自身にも課して、自分にとっての大事なものを探す人々。よりミニマルで、エコロジカルな生き方とは?好奇心を刺激し、楽しませ、ときに殺伐とさせ、多くの示唆を与えてくれる。最終的に、大事なのはルールというよりも、「自分はどうありたいのか?」を感じる根拠が増えたと語っていた。

この、所持物全て倉庫に預けるとか、1年間何も買わない、は実現しそうにないけれど、結局は「自分はどういう環境下でどうありたいのか?」「人生で大切なものは何か?」を考え続ける日々だったし、今もきっと継続中。

自分自身について

私自身、東京には合計3年住んだことがあって、都会の一人暮らしは本当にコスパが悪いことを痛感していた。まず、不動産会社への問い合わせや見積もりから始まり、保証人や契約書関係の準備、契約期間。どこも似たような部屋の間取りと、寝る、風呂、洗濯に帰る場所のための見合わない家賃。そして、引っ越しの度に、洗濯機や電子レンジを持っていこうか、友人に渡そうか、売ろうか迷う。シェアハウスも検討したけれど、なんだか東京では、昔ながらのシェアハウス(全体的に古く、駅から遠く、セキュリティに難あり)か、コンセプト型シェアハウス(家賃が10万以上、キッチンシェア、場合によってはシャワーシェア)の2極のような気がしていた。他の地域で、女性専用のシェアハウスに住んでいたことがあったし、人間関係に関しては特に問題無かったけれど、東京のシェアハウスには、なぜか惹かれるものが無かった。なんせ、毎月、10万円(そして光熱費と管理費)。Airbnbはずっと使っていて、部屋を決めるときですら、Airbnbのホストに連絡して、短泊しながら、街についてもいろいろ聞いていた。(Airbnbで出会ったホストの人々とは、今でも友人)

大好きな仕事だったから、仕方なく住んでいた場所。あの頃、全てがオンラインで、ってなっていたら、私はきっと、奄美大島に住んでいたはず。(でも、その頃は奄美大島の良さを知らなかった)

洗濯機を使わない。
TVは見ない。
炊飯器は使わずお米を炊く。
化粧品や洋服にこだわりが無い。
ペトリ氏のような、車、レコードプレーヤー、ミキサー、テレビ、ヒーター等は一切無かった。

そんな私は、院生時代に国際交流館に住み、アイロンや洗濯機は共有、部屋にミニキッチンがついていながらも、各階にラウンジやキッチンがあって、食材やキッチン用品を友人たちと共有しながら暮らす生活と、「浮いた」お金で平日の晴れた日のホテル暮らしを細々と続けていた(チェックイン時間丁度にチェックインし、ひたすら静かな環境と高速WiFiを満喫し、チェックアウトギリギリまで「籠る」暮らし)。

インドの留学生の友人に、「ここのホテルのデザインが良くて、宿泊者はジムやプールが使えて、今セールやっているよ!例えば、テレワークのスペースとかで1000円とか、カフェで800円とか支払うよりも、泊まったほうがよくない?東京のホテル、以前と比べて全体的に3割~5割程安くなってるし」と少し興奮気味に伝えると、「ホテルって、滞在時間のほとんど寝てるじゃん、なんで東京に住んでるのに、わざわざ追加でお金を払うのかがわからない。デートのときとか、誰かが招待してくれるとか、特別な理由があるんだったらわかるけれど、なんで?」といわれる。

私は、宿泊施設を検索したり、実際に滞在する中で、素敵なデザインや家具、部屋の間取り、建築様式、人々の導線、自分に合った環境、空調、ホテル設計の移り変わりなどを観察するのも好きだったんだと思うし、もともとの全体的なホテルの価格帯を肌感でも知っている身からして「コロナ禍」で通常期と比較して30%~50%ほど安くなったホテルに泊まらない手はなかった(ちなみに2022年5月現在、例えばMUJI HOTEL GINZAは、閑散期の9000円/1泊から、14000円/1泊まで戻っているので、また高くなるのは時間の問題だと思う)。

色が気に入っているスーツケースとホテルのデザインが合った

そんな、過去数年の記録と、ホテル暮らしのメリット、デメリット、そして自分自身の心の変化について。

ホテル暮らしのメリット

1.設備とセキュリティーが良い
何よりも、ホテルは設備が整っている。高速WiFi、アメニティーグッズ、トイレットペーパー、光熱費はもちろん込みで、万が一、隣がうるさくても、部屋を変えられる。掃除もしなくてよい。そして、最近のホテルはエレベーターの停まる階も全てカードが無いと使えないので、セキュリティーがしっかりしている。まぁ「ホテルだから当然」と言えるかもしれないけれど、「日本のホテルだから」、とも言えるのかもしれない。海外で、これがどこのホテルでもそうかと言われると、違うことも多々ある・・・。(ドライヤー、トイレットペーパー、歯ブラシなど、言わないとくれないところや、無いところ多々あり。そして、セキュリティーの面でも、自由すぎる)

2.街探検ができる
隈研吾氏が、「自分が働いたり、住むところを考えた際に、自分が好きなものを食べられるお店がたくさんあるところが良くて、建築をやりながら、そういったところを無くさないようにしたい」と言っていたけれど、本当に、宿泊先のあらゆる街の朝から晩の移り変わりゆく景色と人々を眺めながら、カフェやスーパーを巡りながら、食の探検ができるのが魅力的。もちろん、時間が無いときもあるので、結局、近所のスーパーで買って、ホテルの部屋で食べることも多々あるけれど。今では、東京のあらゆる区の近所を把握している(はず)。

3.いろいろ試せる

ホテルのデザインや建築、設計、サービスはもちろん、ケトル、シャンプー、バスソルト、カールアイロン、Bluethoothスピーカーなど、貸出しているものや設備をたくさん試せるのが魅力的。MUJI HOTEL が、無印良品の商品をたくさん試せるのであれば、ホテル暮らしは、もっとそれぞれのホテルの特徴を体験できるものだと思う。WBFホテルグループのホテルは、シャンプーやリンスが数種類あって、フロントで選べた。

ホテル暮らしのデメリット

1.自分の空間が作れない
友人の多くは、自分が好きな空間をつくる過程の楽しさ、植物を集める楽しさがある。居心地が良い空間、自分が好きなものに囲まれたいと言っている。コレクターの人とか、物に囲まれて生きている人々にとっては、「遊牧民」の生活は考えられないと思う。

2.コンビニ食や外食が多くなる
大抵、ホテルの部屋には湯沸かしポットや冷蔵庫くらいしかついておらず、電子レンジは共有スペースにあるものの、どうしても「料理をする」ことが難しくなる。そのため、コンビニとか外食中心。

3.洗濯物が乾かない
(通常の)ホテルの部屋には、バルコニーが無い。窓も(防犯・安全上)開かない。天気の良い日に、洗濯物を外に干すという素敵な時間(私にとっては)が持てない。ホテルの洗濯機では、洗剤が別売りも多い。ただ、最近、洗剤を入れずに、自動的に洗浄できる洗濯機を設置しているホテルや、靴専用の洗濯機もあるおしゃれなコインランドリーも増えてきた。

4.移動+宿泊先選びに時間がかかる
同じホテルに2週間ほど、を2か月程試したり、平日の1泊異なるホテルを転々としたり、3泊くらいしたり・・・と、様々な期間の滞在を経験しているけれど、やっぱり移動する度にスーツケースとかカバンに荷物をまとめて、持ち運びして、時に混みあった階段を上ったり、雨の日に移動したり、は大変。(まぁ、それで体力つくけれど)そして、宿泊先を選ぶにしても、どの路線がその日の予定に合うとか、連泊にしたらどれくらい安いかとか、どのサイトで予約したらよいかとか、デザインやコスパ、部屋の間取り(机回り)、椅子、共有スペースの設備、いろいろ見て、考えて決めるのには時間がかかる。

自分の『シンプルライフ』について、わかったこと

もともと、仕事でもプライベートでも、移動が多い生活をしていた為、とりわけ心身共に「身軽でいたい」と思っていたし、飽き性だから、いろんな部屋の間取りとかデザインを見るのが好きだったけれど、身に染みてわかったことが3つあった。

1.持ち物は人生を複雑にする
ペトリ氏も言っていたような気がするけれど、モノはメンテナンスが必要で、結局はエネルギーを使わなければならない。掃除が大変になったり、探す時間や選ぶ時間が増えたり、常に最新のものを求めだしたらキリがない泥沼にハマる。持ち物よりも、健康な身体をつくることが大事。

2.自分自身がシンプルになる
移動が多いと、とにかく物を減らしたくなるのだけれど、物を減らす過程で、例えば化粧品やアクセサリー、洋服などが、ほとんど無くなった。それよりも、2リットルの水(笑)を手に抱えて歩いていることもある。あと、速乾タオルとか、薄型ノートパソコンとか、軽くてコンパクトなものを求めるようになった。

3.何も考えず、とにかくやってみる
「誰もこんなことやってないのかもしれない」「他人からどう思われるのだろうか」とか、常に頭を過るのは、他の人から見た自分。最近ようやく、宿のサブスクとか出てきて、テレワークも至る場所でできるようになったけれど、結局、誰に何と思われようが、自分の「居心地の良さ」を求めて「何かをする」ということが一番のキーポイントなのかもしれない。

そして、自分は熱帯気候が好きなのだ。1年中、半そで、短パン、サンダル。なんと身軽なのだろうか。そして、キッチン用品が少ないと、食生活が疎かになるけれど、ベトナムでは屋台が多いのでそれを回避できる。結局、自分で自分を不自由にしていたのかな、とも思える。

以下、『365日のシンプルライフ』で主人公ペトリのおばあちゃんの心に響いた言葉たち。

「戦後、とにかく物が無かったの」
「たくさんモノがあっても、人間、結局モノは全て残していくことになる」

「本当に必要かは自分で身につけないとね」
節度を身に着ける方法」

「今一番恋しいものは?」
所有とは責任で、荷物は重荷となる」

ペトリ「生活に必要なものは100個程度だということがわかった」

以下は、実際に宿泊したホテルについて、写真や料金と共にご紹介。

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