「多様性と語学の価値とは」インバウンド観光対策の観光経営セッションで考えたこと

うまく文章でまとめられるかわからないけれど、毎週、非常に有意義な時間を提供していただいているインバウンド観光対策グループのセッションにて、2021年2月3日「日本のインバウンド観光人材育成への提言」という内容は自分にとっても非常に身近で、興味がある分野だったので、ここに記録することにした。

まず、このグループで初めて「お会い」したフロリダ州オーランドで教鞭を取る原忠之先生の視点が、とても物事の本質をついていて面白い。「本質」というのは、すぐに見出せるものではない。世界の全ての分野を関連付けて、時代や世代、言語を超えて、俯瞰しながら、探索するものであり、今回の先生のプレゼンでも、「なぜインバウンド観光なのか」を言語、経済、教育、国の成長率など多様な視点から議題を呼び起こしてくれた。(欲を言えば、これが英語でできるとより面白い)

その為には、

1. 現状把握
2. 理想像設定
3. 現状から理想像到達

が必要だということ。

現状把握をするとき、世界観の広さ、深さも大事だと思った。物事を見る視点。そこを見誤ると、小手先の対応手段だけで、根本的な解決にはつながらない。

原先生は、世界で話されている言語の話をされた。

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これは、おそらくほとんどの方々がご存知の事実だろう。人口が多い中国語の母語話者が一番多い。そして、日本も現在の人口が1憶2千万人程。それは母語話者も多い状況となる。

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ただ、習得言語者数、という数でみると圧倒的に英語。当然、英語を理解できると、物事を多角的な視点で見られるだけではなく、情報伝達スピードも、有益な情報量も、圧倒的に増える。ビジネスで役に立つのは当然ながら、私が個人的に思うのは「得するし、人生楽になるし、世界をもっと楽しめる」。それが語学の価値。世界がどこへ向かっているのかを知る必要性。

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如何に地方出身者を地元で雇用するか?
如何に子育て世代全体の年収を上げるか?
如何に地方在住就労者の知識・スキル向上をあげるか?

といった問題提起も。

非正規労働者の年収の低さ(特に女性)がひとつ議題にあげられていたとき、これは、個人と社会の課題をどう切り分けるか、と思ったことがある。「非正規」という言葉も、なんだか「正」と「非」を分ける言葉だよなーと。多様性と言いながら、非とは一体何なんだろう。そして、とても悲観的な考えかもしれないけれど、システムが発達し、核家族化が進む社会では、同時に世代や性別などの分断が顕著になるな、とも感じる。世界でも稀に見る、平和で秩序が整った社会の苦悩。

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グループディスカッションの中で、コトバスツアーの山本さんが仰っていた英語に関する話も興味深かった。

「英語の重要性、必要性は理解している。ただ、地方の企業だと、たとえ英語ができたとしても、経営者やマネジメント層の理解が得られにくい。給料にも反映されず、そもそもいくら支払うか制度ができていない」

語学力に対する価値を理解する管理職、経営者を増やす必要性。

本当に。で、たとえ特別手当支給の対象になっても、せいぜい月1万とか。で、この「英語人材の使い方」にしても、そういった方々が、直接翻訳や対応に関わるのも一つの手段である一方、同時に、そういった方々が、英語で得た知識や情報を、できる限り、社内の活動に反映させていく努力も必要なのかな、と。「英語ができるから、翻訳」という単純作業ではなく、英語で仕事をする頭脳に、社内が慣れていくこと。それには、双方の努力が必要。

難しいよ。私は、それで結局、私の「観光業の知識」「語学力の価値」「日本の仕事の作法や文化特性の理解」を評価してくれたグローバル企業に転職したし、その後は、自ら「波に乗れる」と思ったベトナムの観光局に移ったし。(当然、異国、異文化、異言語の世界の仕事は、簡単ではない。日々柔軟性が問われ、葛藤の連続。交渉力も必要だし、取捨選択しながら、時に自分の意志を貫く必要もある)

2030年には世界の労働人口の75%はミレニアル世代と言われる時代。

自分がいる環境が変わるのを待つのか?
自ら環境を変えるのか?

一番凄いのは、自分がいる環境を周りを巻き込んで変えることだけれど、もしそれに、数年、10年かかるのであれば、見切る覚悟も必要だと思う。でも、同時に、自ら選んだ環境を、自分の手で良くしていくのも、自分の仕事。

あと、原先生の話でのキーワードは以下。

・Management/ professionalism が弱い日本のホスピタリティマネジメント
・Master of Science in Travel Technology and Analytics 
・日本人高給出稼ぎ労働者が増えるのでは?
→自身の提供価値や能力を、正しく評価される場所またはより活かせる場所へ移動する行動心理は強くなると思う。日本にはベトナム人の技能実習生が多いが、ベトナムには、欧米出身のハイスペックで環境を重視する「高給出稼ぎ労働者」が多い。
自分が環境を変えるか?環境が変わるのを待つか? 
・数を理解する、感覚を大事にする
・日本の教育は、IRとは、ウェディングプランとは、など、専門性のものをちょこちょこ撮っていくから、基礎知識を積み上げずに問題解決の応用性が育たない

そして、原先生のもとで学び日米のホテルで勤務経験を持つ常井大輝氏の話も面白かった。

・多様性に対応できる経営人材の必要性
・インターナルマーケティング(社員に対するマーケティング)ひとりひとりの多様性、自己実現などの理解→まずは身近な地域や組織の人々への興味関心
・サービスを決定する権限を与える
・エンパワーメント
・なかなか、一歩踏み出せないカスタマー対応環境
・他の人の立場になって考える力は日本人にはあるけれど、ただその力をうまく活かせる環境が無く、スタンダードやマニュアル重視が強い
・スタンダードに拘り続けると、マッチしないお客さんが増えてくる

・日本のホテル「できません」多い→ベトナムのホテル「できます」多いが、理解していないが理解しているふり、知らないが知っていると言うケース多々

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スイスとアメリカの、Hospitality、Professionalization、Managementの分布。日本は、圧倒的にHospitality趣向が強い。

また、先日のタイJNTO事務局の方々のプレゼン内容でも触れられていて、ベトナムも似ているなと思ったのは、とにかく現地の観光業人材は、職を失ったとき、直近でお金を得られる手段として、果物を販売したり、他の仕事へ移ったり、とにかく行動が早かった。総じてあるのは「生きていくための金」の緊急性と必要性。政府の支援もほとんど無い。ベトナムの政府観光局のメンバーは、「解雇」の心配は無いものの、治安の悪化を心配していた。

日本の国内観光市場はとてもデカい。インバウンド観光の「対策」も大事だけれど、まず自ら旅行する、金を落とす。現状でも、稼いでいるホテル、ツアー、事業者のサービスの本質や価値を理解し、それらに対するフェアなお金を払って体験する。それが日本全体の競争力を高めるのだと、思う。

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最後に、Deep Japn 萩本さんが共有されていたGDP成長率の推移。私自身、なぜ、ベトナムを選んだのか、なぜベトナム語を学ぶのか、その理由は、約10年前に遡り、当時から東南アジアの成長率、現地の躍動感には圧倒されていたし、「波に乗れる世界」があると信じているから。あとは、その「語学習得」というモチベーションをどう、自分が続けられるか。誰に何を言われても、ある意味、鈍感力というか、乗り切る覚悟が自分にあるかどうかが問われる。

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さて、どこから始めるのか?
英語でホスピタリティ経営を勉強している経営人材が少ない、教育、と言いつつも、それだけのレベルの教鞭をとる教授が、日本ではなかなかいない。やはり海外となる。海外で活躍されている人々を日本に「呼び戻せる」魅力ある企業や教育機関も必要となる。

海外から日本を見ながらも、この点は、問い続けたい。

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