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「あなたの部下として、働くにはどうしたらいいですか?」と、インド人の学生に言われて答えたこと

仕事柄、南インドの学校(日本語学校、高校、大学、その他教育機関)に訪れることが多い。そのほとんどは、地方政府や教育機関の会長や学長など、どこかのお偉いさんたちが集まっての会合や、「日本語学校の開校」「日本の大学とのMoU締結」「キャリアフェア実施」等、学校の全体的な行事に関わる為だけれど、私が一番好きなのは、学生との質疑応答やディスカッションだ。

非常に優秀な学生が集まる大学の図書館

なぜかというと、私自身が、まず大学院を卒業したばかりだということ、そしてグローバル企業や日系企業、フリーランスでコミュニティマネジメントに関わり、50か国程への旅と出張を経験し、ベトナムにも滞在していたりと「海外旅行をするために働く」というスタンスである為に、ここインドの学生たちが目指したいところが何となく肌で実感できる気がするのだ。

学生数が数万のマンモス大学では、さすがにキャンパスが大きすぎたり、学部によってはキャンパスが数か所に分かれていることも多い。コーディネーターさんが、日本語を学んでいる学生を中心に質疑応答やディスカッションに集めている場合もあれば、キャリアフェアの一環で、将来やキャリアについて問われる場合もある。

そういったとき、私はまず自己紹介もかねて、学生時代の勉学の苦難や、お金が無かったので、中学生の家庭教師をしながらも、とにかく英語や国際関係学を勉強して留学費用を免除してもらって英国留学をした経験、上記の「紆余曲折」のキャリア、今どういう想いで、仕事に関わっているのか、を述べる。

大体の質問は「日本に留学するには?」「日本の企業で働くために、心得ておくものは?」「インドと日本の働く環境の違い」といった、留学やキャリアに関する、当たり障りのない、ウェブサイトやグーグルやChatGPTで答えがすぐに出るものだけれど、面白いのは、

「あなたは失敗したとき、どう対処しますか」
「インド人が、日本人から学べる人生において大事なことは?」

など、哲学的なもの。答えがないものを、対話で考えられる瞬間が、好き。

そして、みんなの前での質疑応答やディスカッションのときには出ない話題だけれど、終わったあと学生からよく「あなたと一緒に仕事がしたい」「あなたの部下として、働くにはどうしたらいいですか?」と言われることがある。

「あなたの仕事、楽しそうだから!」

と、目を輝かせて話す学生たち。

「楽しそう!」という好奇心から始まる。最初のきっかけは、それでいいと思うし、私もそうだった。でも、傍から見て「楽しそう!」な仕事って、実は忍耐力や継続力がいって、その「楽しそう!」エネルギーは長くは続かないのだと、だいぶ後で知る。すぐに得られる情報は、すぐに忘れ去られていくもの、その感覚と似ているような気がする。

「Thank you! 興味を持ってもらって嬉しいです」と答えながら、私は決まって逆質問をする、めんどくさい人間だ笑

「あなたが思う、社会の課題は何ですか?」
「あなたにとっての人生の挑戦は?」
「どうやって、自分がその社会解決に向けて貢献できると思いますか?」

何人かの学生は、「そうではなくて」と、どうやってあなたの仕事のポジションの情報が手に入るのか、とか、インド人でも働けるのか、とか、「正解」を求めて聞いてくるけれど、

私にも、わからないのだ。私は、一緒に働く人を選ぶ立場でもない。

ただ、自分の人生を通して実感しているのは、

「自分が目指したい社会や環境があって、それが企業や組織の目指すところと一致して、うまく企業や組織の立場を利用できることほど、幸せなことは無い」ということ。そういったチームと一緒なら、「速く、遠くへ行ける」気がする。

「幸せ」の定義って、人によっていろいろあって、一人の人の中にも数多くの「幸せ」の種類があると思うけれど、私にとって「幸せ」のひとつに、この程よい挑戦と意義がある。まさに、「自分が好きな自分を生きる」という実感。

「楽しそう!」よりも、「共通の課題」は、非常に大きなエネルギーを持つ。

多くの学生は、インド特融の首を横に振りながら、ただ”Thank you. You gave us food of thoughts”と言った。受け止め方もそれぞれだけれど、何かしらは感じてくれていた、はず。

学校を後にして、車の中で、「でも、よく考えてみたら、自分が学生のとき、どっかの誰かお偉いさんが来るからって、講堂とかに呼ばれて、とりあえず参加して、講演とか聞かされるわけですけど、ほとんど話の内容って記憶に残らないですよねー笑」と、一緒にいた方に話した。

すると、その方は、「そうだね。ほとんど忘れるよね。」と言いながら、少し間を置いて「でも、誰が来たかっていうのは結構覚えているもんで、あと、その人が言った一言、二言、鮮明に覚えているものも意外とあるものかもしれない。」と。

社会の移り変わり、発展のスピード、学校教育の在り方、働き方、全てが目まぐるしく変わるこの世の中だけれど、誰かの何かのきっかけになっていたら、それほど嬉しいことは無い。

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