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「自分とは違う」が教えてくれること」 【よそ見津々(柴崎友香 著)】

私が勝手に思っていることなのですが、
何か行き詰まったり悩んだりした時、答えは自分の中にあるけれど、ヒントは自分の中に求めないようにしたい、と思っています。
答えを「他」に求めてしまうと、「他」に主導権を握られてしまう。
(例えば他人にアドバイスを求めて、こうした方がいい、と言われたままにするとか)
ヒントを自分に求めてしまうと、自分の成功体験を通して物事を見る癖がついてしまい、成長出来ない、と思うからです。
(自分のことは一番自分が分かってる、と思いすぎてしまうと、上記とは逆に他人の言葉に耳を傾けられなかったりするのかなあと思います。)

柴崎友香さんの「よそ見津々」を読みました。

タイトルから分かるように、柴崎さんは「他」に目を向けるのが上手い方だなあと思いました、よそ見の達人!
(著者の方をよく分からない手法で持ち上げる)
自分とは違う「他」に心を向けるって、時々難しい、って思います。
特に自分よりも下の世代に。
「ああ、それ私も経験したけど、いずれこう思うようになるよ」とか
「そんなこと言ってられるの今のうちだよ」とか
言ったり言われたりしたことありませんか?
あの…
私はめっちゃあります!!そして私は言われてめっちゃ違和感でした!!!
(ストレスの吐口)
でも、そう言ってしまいたくなる気持ちは分からなくもない、というのが本音です。
だって、自分が成し遂げられなかったことにまだまだ自分より若い方が挑戦しようとしていたら、
自分を否定されたような、負けた気持ちになりますもん。
でもそんなん自分で勝手に陥ってるだけで、他人が何をしてようが
そこに負けも否定も存在してないし、自分自身で勝手に自分を否定してるだけなんですよね。多分。
…すみません、話が少しずれましたが、上記みたいなことになりかねないので、私は自分以外の他人は全ておもろいヒントのびっくり箱だと思っておもしろがりたいなって思います、よりおもろいマイライフのために。
そう、柴崎さんはそれをナチュラルに楽しめる方なんです、それが人間以外のものであっても。

自分のよく知っている山とはまた違う、壮大で人を拒むほどの厳しさを持つ山の情景を見ていると、
こういうのを知っていれば助けられることはいっぱいあるのにな、と思った。
人間以外の世界を知っていれば、きっと、思い詰めないで済むことああるんじゃないのかなと。
(中略)
木も山も天気も、人間とは違うしくみで成り立って動いている。
それを、毎日感じることができるだけでも、普段「これしかない」と思っている以外にいくらでも世界があることを知ることができる。

よそ見津々(柴崎友香 著)

柴崎さんはこのエッセイの中で面白いことを書いていました。
不動産とか賃貸物件の価値の指標の一つに、「木があること」が含まれてもいいんじゃないか、と。
物件が駅から何分、とか今風のインテリアとか、そういう人間の手で作られたものだけじゃなくて、
人間が作り出せない、長い年月をかけてしか辿り着けないものに対して価値をつけてもいいんじゃないかと。
おもろくないですか?
そう思うと全ての木々がめっちゃ素敵なものに思えてきました。
(はい、私は単純です…)
なんかそういう、他人の考えがヒントになって、自分の世界を新しい価値観を通して見つめてみると、今まで見えなかったものが見えてくるようで、脳みその中も、世界も、アップデートされるような気分になります。

そして、自分以外のもの、自分が属している世界以外がある、ということを知っていることは、
いつでもここから逃げられる、いつでもやり直しがきくし、自分の可能性は別の世界でも広げられる、というとても大切な助けになる、と思います。

ゲリブルにいた数十分のあいだに、わたしは初めて外国を知った。
有名な観光地で定番のアイコンの前で記念写真を撮るときの、あの「テレビで見たまま、本物」という感覚ではなく、
自分が知っているのとは全く違う場所にいるのだという実感。
カフェのおじさんたちの視線を気にしながら身を堅くして歩いていたとき、
わたしは、テレビで散々見たあの街たちが、テレビの中でにはなくて、ちゃんとこの世界のどこかに存在していること。
そしてそこはわたしが住んでいる街と地つづきでつながっていることを、やっと知ることができたのだと思う。

よそ見津々(柴崎友香 著)

そして最後に、人の数だけ答えがあって、その答えも一生確定することがないということ。
その事実を受け入れることが出来たとき、「今の自分」を愛することが出来るようになるのかな、って思いました。
色々経験してきて、今この状態に落ち着いている自分、今ああでもないこうでもないともがいている自分。
「今の自分」が「明日の自分」と違ったっていい、むしろ違うことが面白いと思えたらいいなって思います。
そして、他人も、自分の「今の答え」を探していて、他人の「今の答え」が自分へのヒントになりうることもある、と思えたら、
自分以外の森羅万象が、自分を幸せにしてくれるヒントになるのだと思います。

自分の持っている素質(顔かたち、性格、好み…)と、なりたい像、それから人からどう見られるかなど、
外側からと内側からとそれぞれ影響し合って葛藤している状態が表れているのがその人の「格好」だから、見ていておもしろい。

よそ見津々(柴崎友香 著)

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