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The Beatles/Strawberry Fields Forever、好き。

 ”静寂から聴こえてきた、微々たる音。何が起きているのだろうか。ジョン・レノンの声が聴こえてきた瞬間、全てを理解させられた。これは現実ではない。一瞬にして、私を魅了したのだ… ”


 3歳でビートルズ"1"を聴き、"I Want To Hold Your Hand"によって音楽の扉が開かれた私。それからすぐ、ではないが既に自我が芽生えていた頃。市立図書館で母親と一緒に、よくビートルズのCDを借りていた。最初に借りたのは、通称 '赤盤'、'青盤'と呼ばれるベストアルバム。

 青盤をプレイヤーにセットし、再生ボタンを押した。その瞬間の衝撃を今でも覚えている。

 "Let me take you down  'Cause I'm going to strawberry fields" "Nothing is real"

 その前に聴いていた赤盤からの変貌。これがビートルズなんだと。これを素直に受け入れている幼少期の私が怖い。本当に同じアーティストか疑うべきだ。

 これから何が始まるのだろう。高揚が抑えられなかった。煌めきと浮遊感、静穏と鬼気が織り交ざる。感情の整理が難しかった。終わったと思ったら、またすぐに現れ、また去っていった。そしてすでに聴き馴染みのある"Penny Lane"が聴こえてきた…現実に引き戻されたのだ。それからというもの、私は完全に’沼にはまって’しまったのだ。


楽曲について

 前回の記事では、"I Want To Hold Your Hand"が私の人生の鍵だとしました。さらに衝撃的な出会いだったのが、"Strawberry Fields Forever"。

 ローリング・ストーン誌のThe 500 Greatest Songs of All Time(2021版)で7位。同誌の100 Greatest Beatles Songsでは3位。

 作詞作曲はレノン&マッカートニーですが、実質ジョンの作品。しかし、レコーディング後に施されたプロデューサー/ジョージ・マーティンとエンジニア/ジェフ・エメリックの功績を考えると、単にジョンの作品とは言い切れないでしょう笑。

 テンポもキーも違う2つのテイク。ジョンは「どっちも使いたい!」と我儘をいうが、マーティンからすればそんなの不可能。でもジョンは「君ならできるさ」と無茶ぶり。全く別のテイクを速度を変化させてつなぎ合わせるという、マーティンとエメリックの手による伝説の編集作業によって、この曲が持つ独特の雰囲気が創出されました。

 多種多様な楽器。Revorberで培った技術。奇妙なコード進行。これらと、ジョンが生み出した世界観が見事に交錯しています。彼らにしかできない独創的なアイデアと、音作りの冒険の成果が表れた最初の例と言えます。

 サウンドだけで情景が浮かんできます。カラフルで幻想的、でもどこか寂れた、脆弱な雰囲気…。

 彼らの歴史を二分化するとしたら、"Rubber Soul"やRevolver"を転換点とすることが多いですし、それに同意です。ただ私はあえて、"Strawberry Fields Forevor以前・以後"とします。ポピュラー音楽史において、この曲が持つ意味というのはかなり大きいと感じるのです。

 「これが彼らが来日した1966年の作品?東京オリンピックの2年後に作られた音?」にわかに信じがたいでしょう。

 私の音楽体験は、「抱きしめたい」が0を1に、「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」が1を100にしてくれた。そんなイメージです。


余談

 ビートルズ最後の新曲 "Now and Then" の発表に合わせて、The Beatls/1962~1966(通称”赤盤”)、1967~1970(通称”青盤”)の「2023 Edition」もリリースされました。2023 Mixも含め、全て最新リマスター版。かなり音質が分厚く、そしてスマートになったと感じます。それによって、今まで判別できていなかった新たな気付きもあったり。

 収録曲もリニューアルされ、豪華な内容。個人的に"I Saw Her Standing There"や"Here There and Everywhere"、"Oh! Darling"などの追加には歓喜も、"For No One"や"Happiness Is a Warm Gun"、"Two of Us"なども選ばれてほしかったなー。

 今日もありがとうございました。

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