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大丈夫、大丈夫

買い物袋より重くなる傘。
真っ白な道を歩く僕の隣で、一台の車がこれまた真っ白な道にノロノロと轍を作る。

大丈夫、大丈夫。
僕は僕のペースで歩いている。
ノロノロと、でも僕より全然速く動く車は、ちょっと羨ましいけれど

先の見えない灰色の空は、否応無しに不安を煽り、遠くに輝く信号機の光だけが道標となる。
街灯に照らされた雪の影が、黒い雨となり地面を踊る。
夜の雪は、何故こうも怖くなるのだろうか。
日に照らされた雪は眩しいのに、夜の帳の中だと、まるで世界を押し潰さんとするようで、怖い。

大丈夫、大丈夫。
僕が潰されたわけじゃない。
あの歩道が日の目を見るのはだいぶ先だが
僕の上には明日も日が登る。

なんでこんな寒い場所で、1人で何をしているんだろう。
重い傘が右手にのしかかる。
横殴りの雪が身体を濡らす。
部屋に帰っても僕1人。

大丈夫、大丈夫。
結局みんな1人で生きてる。

・・・


大丈夫、大丈夫。


・・・


…本当に?


・・・


大丈夫という言葉は難しい。

自分は大丈夫だと言い聞かせなきゃいけない時もある。
自分は大丈夫だと言い聞かせちゃいけない時もある。

他人は元気なあなたしか見えない。
他人から見えているあなたは大丈夫なあなただから。
他人からみて大丈夫じゃないときは大抵手遅れだから。

自分に言い聞かせるとき、大丈夫のあとに、『?』をつけてあげてほしい。

大丈夫で自分を押し潰さないで
問いかけてあげてほしい。

「励ます」と「誤魔化す」は違うんだ。


・・・

声を上げたところで、助けてもらえる保証はない。
結局は自分でなんとかしなくちゃいけない。大抵はそんなもんだ。
けど、声は出さなきゃ聞こえない。
もしかしたら、自分1人で解決しなきゃいけないように思ってたものでも、近くの人の手を借りれば案外早く解決できるかもしれない。
君1人じゃ無理だよって助けてくれる人がいるかもしれない。
君にしかそれはできないんだよって、手伝わなくとも見守ってくれる人がいるかもしれない。

大丈夫、大丈夫。

きっとこれは誤魔化しじゃあない。

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