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『ガイジ』は日本の『Nワード』である
「ガイジ」
この言葉を聞いたことがあるでしょうか?SNSやネット掲示板などでよく目に入る言葉です。今回はこの言葉と、アメリカで黒人差別をする際に用いられる『ニグロ』という言葉とを関連付けながら考察していきます。
『ガイジ』とは
これは「知的障害児」という言葉を略して作られた造語で、元々は関西圏の小中学生を中心に使われていたものだそう。しかし、この言葉を使っていた小中学生も大人になり、いわゆる”死語”になっていました。それがネット掲示板でまた流行りだし、今ではSNSやYOUTUBE、現実世界でも使われ始めたのです。
どのような使い方がされるのか。用例を見てみましょう。
お前、そんなことも分からんなんてほんとガイジだなwww(Twitterより)
ガチでこいつガイジwww (Twitterより)
こんなこと言うのガイジかも知らんけど……(YouTubeコメント欄より)
なるほど、この用例を鑑みると、この言葉は相手、または自分自身を煽ったり、侮辱したりする際に使われる言葉であるようです。また”www”と併用される確率が高いようにも思われます。
”www”は「笑い」を表す表現です。つまり、この言葉を用いる際に、人々は相手に対するからかいの意思や、嘲笑、また自嘲という意味合いの文脈を想起しているのです。
差別は浅い理解と”からかいの意思”から生まれる
この”からかいの意思”というものが厄介です。この言葉を使用する際、その使用している当人は「障害者を差別してやろう」という強い意志は持っていないはずです。ゲームでイラっとする相手のプレイがあった際に、そのイラつきだけに基づいてパッと「ガイジ」という言葉を使ってしまった。Twitterで自分の意見に反論されて、自分もその反論に対抗するために「お前ガイジかよwww」と言ってしまった。
「ガイジ」という言葉は、そういったちょっとした場面で使われてしまっている。
しかし、なぜこういった場面でこの言葉を使ってしまうのか。それは、「ガイジ」という言葉の意味、またその言葉のもとになっている「障害のある人」について、はっきりと理解をしていないことに要因があると思われます。
障害者=劣った存在だという偏見
世間では、
障害者=劣った存在
という偏見が強いように思われます。
しかし本当に彼らは劣った存在なのでしょうか?
私には発達障害のある兄がいます。彼は、非常に創造性豊かで、とても純粋です。時々、私の心の汚れを強く意識させるほどに。兄は本当に劣った存在なのでしょうか。
私はそうは思いません。
それは、彼が人並みに会話ができるとか、毎朝早起きが出来るとかいう理由によってではありません。
障害というものも、兄の個性であると考えているからです。
たとえば、年を取ると人は早くは走れなくなります。でも、年寄りが速く走れる子供に劣った存在であると言えるでしょうか。確かに、走るという側面では劣っていると言えるかもしれない。でも、それはその人自身が人間として劣っているということにはならないのです。
障害は個性です。計算が苦手、牡蠣が苦手、花粉症であるという個性と同じような位置にあるものです。ある側面では劣っていたとしても、その人の存在が劣っているということにはなりません。
差別用語『Nワード』
ここである例を紹介します。『ニグロ』という言葉です。これは、黒人を差別する際に使われる蔑称です。この言葉はもともと、身体的側面から黒人を分類したときに白人が名づけた言葉『ネグロイド』からきています。それが黒人奴隷に対して使われ、やはり略されて『ニグロ』となったのです。つまり、『ニグロ』は、社会で元々使われていた言葉を略しただけとも言えるのです。
しかし、今の時代、『ニグロ』は使ってはいけない言葉です。なぜか、二つ理由があるでしょう。それは
①歴史の中で嘲笑とからかいの意味で使われてきたから。
②『ネグロイド』という分類がそもそも正しくなかったから。
どちらも重要です。しかし、ここでは二つ目に着目します。『ネグロイド』はもともと白人によって分類された人種の区分です。つまり、差別する側の視点から規定された分類です。
この分類に従って、差別が生まれたのです。
『ニグロ』はどうやって差別用語だと認識されたのか
こんな問いが出ます。しかし、それは非常に簡単に答えることの出来る問いです。
『ニグロ』は差別用語であると主張することによって、『ニグロ』が差別用語であると認識されたのです。
アメリカで、いや世界中で今、黒人差別に反対する人々がデモを行ったり、「Black Lives Matter」というハッシュタグがつけられたりしています。黒人差別は不当であると主張されているのです。
差別をやっている側には、ほとんどの場合、差別意識はありません。「自分が差別をしてしまっていたという意識を持つ」。これこそが差別を食い止める最高の方法です。
『ガイジ』も社会的な側面から解決する必要がある
『ガイジ』のもとになったのは、『知的障害児』ということばであり、『障害者』という規定です。この規定は正しいのでしょうか?
障害という言葉を聞いて、何を思い出しますか?
私は、「障害物競争」という言葉を思い出します。これは、障害物を超えていく競争です。また、障害物は「障害である物」です。
この構造に障害者を当てはめると
障害者=「障害である者」となってしまうのではないですか?
私個人の意見ですが、日本という国家が障害のある人に名前を与えた時、「社会の障害」的な側面を意識していたように思われます。もともと間違っているのは、この「障害者」もとい「障害」という名づけ、規定ではないでしょうか。
実際、アメリカで障害のある人は「persons with disabilities」と呼ばれます。これは”障害を持つ人”の意味です。彼らはあくまでも、障害を持っているのであり、「disabled persons」(障害者)ではないのです。
『ガイジ』の根本的解決
ここまで、
・『ガイジ』とは『知的障害児』という言葉から生まれた言葉であるということ。
・『ガイジ』という言葉が、嘲笑や自嘲と共使われること。
・『ガイジ』という言葉が障害のある人に対する理解の欠如や世間の偏見から使われているということ。
・障害のある人=劣った存在ではないということ。
・『ニグロ』と同じように、『ガイジ』も社会的な規定から生まれているということ
を述べてきました。
『ニグロ』の例を見ると、『ガイジ』の使用を解決するために必要なことが分かります。
まず、『ガイジ』という言葉は蔑称であり。差別用語であるということを周知すること、自覚すること。これが大切なのです。
しかし、それだけではいけません。
最後に、私は『障害者』という名称の撤廃こそが『ガイジ』などの蔑称の使用に対する根本的な解決策になることを主張します。不当な規定と、名づけを撤廃するのです。
大事なのは、社会全体で、障害とは、障害を持つ人について理解するということ。この文章が、皆さんにとって障害のある人について考える機会の、ほんのきっかけにでもなることを祈ります。
ここまで読んでくださりありがとうございます。これは私の意見です。よかったらあなたのご意見をお聞かせください。
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