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親じゃないからできること

夏休みの終わりに、双子の甥っ子ズがうちに泊まりにきた。

嫁さんのお兄さんの子供で、小学5年生。10歳だ。
僕と出会ったのは小2の頃だったから、ずいぶんおっきくなったなぁとおもう。あのころ見分けのつかなかったふたりが、最近はすっかり別タイプの顔として育ってきている。

夜勤明け。ベッドから重い体を起こしてしばらくするとチャイムが鳴り、彼らはこのアパートへなだれこんできた。来るやいなやリビングに直行し、すぐさまニンテンドースイッチを取り出して座り込む。

「今日はこのために一回もゲーム触ってないんやよ!」

笑って言うその罪のなさといったら。僕は本当に驚いて「まじかよすげぇ!!!」と返した。

だって、すごくね?小学五年生が手元にあるゲームを一回も触らなかったんだよ?そりゃ夕方からは好き放題できるから多少は我慢できるかもしれないけど、一回も触らないのは難しいと思う。僕なんて夜に飲み会があっても昼からお腹いっぱい食べちゃうし、四六時中Twitterをのぞいてる。ほんとに尊敬した瞬間だった。

ふたりは夢中でニンテンドースイッチを触りながら、最新のゲームの説明をこのポンコツ夫婦にしていく。
聞いたことない横文字が飛び交う熱のはいった商品紹介に、嫁さんの脳みそがいちはやくショートした。こんな風景みたことあるなぁって笑ってしまう。いつだって子供は新しいものに触れていて、それを誰かに伝えたいんだよね。大人は置いていかれないようにするのに精いっぱいだよ。

そこそこに切り上げてもらって、近所の温泉へゆく。家族風呂だ。嫁さんと前から決めていた。
貸し切り1時間2100円。4人で入れば、大浴場へいくのと同じような値段。いいね。

ひろーいお風呂で、子供がはしゃぐ。

「うちにこんなお風呂があったら最高やね!」「1億円くらいかかりそう!」
「ここの温泉黒いよ!」「体の下が見えない!あっ、これで肩まで浸かって・・・なまくび~!」

プールのように遊んでいるうちに暑くなって、ふたりは冷たいシャワーをかけあう。「気持ちいいー!」と叫んで、こっちにも遠慮なしにそれをかけてくる。

「ぎゃー!」とか「わー!」とか言いながら、一緒になってはしゃぐ。今度は天井に思いきりシャワーをかけると、雨のように雫が降ってきた。
僕はあぐらをかき菩薩のようなポーズをしてそれを身に受ける。すると彼らはキャッキャと笑って、また雨を降らせる。

水の音と笑い声が反響していた。
家族風呂とはよく言ったもので、僕たちはあの瞬間、いつも以上に家族だった。父と母ではないし、血も繋がっていないけれど。なにか大切な繋がりが、そこにあった。

そのあとは、ピザを2枚買って帰った。
甥っ子ズが富士山を登った動画をみながら、4人でパーティをした。
「このピザうまーっ!」とふたりが言って、僕も同じように「ほんまやうまーっ!!」と言う。

幸せな景色。
つい、子供がいたらこんな感じかなと思ってしまうけど、そうじゃないよね。僕も嫁さんも、ふたりの親じゃないという価値がある。

この1ページの思い出を、いつまで覚えていてくれるのかな。
もうすぐ中学生。そのうち僕との距離を見失って、うまく笑いあえなくなる日がくるかもしれない。

でも、僕たちは家族で、そしてなにより友達だから。君たちの、ただひとりの「大きな友達」だから。
僕の数すくない価値を、たまに確かめさせてくれよ。その時はまた、精一杯大人の皮を脱ぐから。

僕をサポートすると宝クジがあたります。あと運命の人に会えるし、さらに肌も綺麗になります。ここだけの話、ダイエット効果もあります。 100円で1キロ痩せます。あとは内緒です。