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2020年2月の記事一覧

思い出の内側で

思い出の内側で

「安い飲み屋でしか生まれない思い出ってのがあんだよ」

若い笑い声が響くなか、目の前の男はそう諭してきた。私は特に返事もせず、醤油のかかりすぎたホッケをつまむ。
先程まで不機嫌な様子を出したつもりはなかった。それなのにこんなことを言うのは、やはり後ろめたさがあるのだろう。

和樹とは付き合ってもう3年になる。アパートの内見案内をしている途中、突然「ここに君と住みたい」と告白されて、私は面食らってし

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花を葬る

先端の細いジョウロを傾ける。枯れた花束に水が注がれるとそれはしだいに鮮やかさを取り戻し、やがて燃えあがった。

暗雲の下、男はだまって火を見ていた。
時折 パチリ パチリ と乾いた音が鳴り、そのたびにひとつ花びらが燃え尽きていく。隣では客が涙を流し、漏れるように苦しい声をあげる。

雲が流れ月が出てきても、火はまだそこにあった。
客は「母にあげるつもりだった」と言い残し去っていった。
もはや何も

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