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ぴぴぷる
2020年2月19日 16:19
「安い飲み屋でしか生まれない思い出ってのがあんだよ」若い笑い声が響くなか、目の前の男はそう諭してきた。私は特に返事もせず、醤油のかかりすぎたホッケをつまむ。先程まで不機嫌な様子を出したつもりはなかった。それなのにこんなことを言うのは、やはり後ろめたさがあるのだろう。和樹とは付き合ってもう3年になる。アパートの内見案内をしている途中、突然「ここに君と住みたい」と告白されて、私は面食らってし
2020年2月14日 01:21
先端の細いジョウロを傾ける。枯れた花束に水が注がれるとそれはしだいに鮮やかさを取り戻し、やがて燃えあがった。 暗雲の下、男はだまって火を見ていた。時折 パチリ パチリ と乾いた音が鳴り、そのたびにひとつ花びらが燃え尽きていく。隣では客が涙を流し、漏れるように苦しい声をあげる。雲が流れ月が出てきても、火はまだそこにあった。客は「母にあげるつもりだった」と言い残し去っていった。もはや何も