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夫がほくそ笑む姿が目に浮かぶ。

今日も風の強い1日。それでも部屋の空気を入れ替えたくて、いつものように朝起きてすぐに窓を細く開けてまわる。涼しくていい。

近くのクリーニング店が営業再開、というかもともと休業していなかったのかもしれないが、ともかく現時点で営業しているようだったので、今さらながら冬ものの上着を数着、出しにいく。この店には、冬ものをクリーニングに出すと、クリーニング後、秋まで預かってくれる「季節保管」というサービスがあり、昨年はそれを利用してみた。が、冬ものを預けている間、その分のクローゼットのスペースを新たな夏ものが侵食してしまい、秋に冬ものが戻ってきたときに困る、という現象が起きてしまったため、今年はすぐに受け取ることにしてみた。それはそれで、夏の間、冬ものが邪魔にはなってしまうのだが。はたして、どちらがいいのか。

クリーニングを出したその足で、八百屋にも向かう。他にお客がいなかったので、店員さんと、まちの状況などについて情報交換をする。このまちでも、家賃負担に対する補助金交付が始まったようで、このお店もつい昨日、その手続きが完了したとのことだった。店員さんは、「すごくうれしい! これでまたこの分を還元できる!」と言っていた。

このお店が取引先の飲食店に向けて、ささやかな割引販売を行っているのは知っている。八百屋は、営業自粛の対象ではないものの、逆にいえば、感染が広がるなかでも住民の食料庫として営業し続けなければならない立場であり、そのことで心身にかかる負担は小さくないはずだ。にもかかわらず、より困っている人たちのほうを向いていられるって、すごいなと思う。『ペスト』の“自分の職務を果たす”って、こういうことなんだろう。

それから話の流れで、夫の塩麹・醤油麹漬け熱について話題にしたら、「ちょうど手に入ったから」と言って、なんだか質のよさそうな米麹を分けてくれた。ただでいただくのは申し訳ないからお金を払わせてほしいと頼んだのだが、「まとまった量でしか取り寄せられなかったから、消費しきれずに困ってたところ。もらってもらえたほうがありがたい」と譲ってくれないため、ありがたく頂戴することにした。その代わり、今度取り寄せるときには頭数に入れてもらうことにした。生の米麹とのことで、手に入りにくいものらしい。これで塩麹や醤油麹を仕込んだら、さぞやおいしいものができあがることだろう。夫がほくそ笑む姿が目に浮かぶ。

帰宅後、必要があって、何人かの知人に連絡を取る。久しぶりの人と、少し久しぶりの人と、そうでもない人に。みんなそれぞれにこの日々を乗り越えて、元気に今日までたどり着いたようでうれしく思う。旅の途中で出会って別れた人と、違うまちでまた会えたみたいななつかしさだ。いい人たちに囲まれて生きてきたんだなと、しみじみと昔を振り返った。

夜、案の定、夫は喜び勇んで、早速、仕込みに繰り出した。今回は、塩麹と醤油麹を一つずつ仕込むようだ。これで、現在、うちには、冷蔵庫で出番を待つ塩麹2びん、育て中の醤油麹2びん、今日から仕込みが始まった塩麹1びんと醤油麹1びんが存在することになる。見る間に麹御殿の様相を呈してきた。古株の塩麹・醤油麹を差し置き、新しい塩麹・醤油麹のできあがりが今から楽しみでならない。

(2020年5月20日)

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