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マッキンゼーで25年にわたって膨大な仕事をして分かった いい努力|山梨広一

これまでコンサルティング会社として名高い、マッキンゼーの社員を経験した著者の本を2冊読んだ。

どちらも論理的で明解な文章であり、仕事の向き合い方において基本的かつ大事なことを明文化していたことから、マッキンゼーの教育が行き届いているさまを感じた。

「いい努力」の著者も富士フィルムからマッキンゼーに転職し25年働いた経歴をもち、上記2冊と同様に仕事との向き合い方を明確に定義してくれるだろうことを期待して本書を手に取った。

本書はタイトルにも示している通り、仕事においていい努力と悪い努力を紹介し仕事の生産性を最短で上げる方法を解説している。
これまでに読んだ「ロジカルコミュニケーション」や「ISSUE DRIVEN」同様、ビジネスメインで説明しているが研究にも充分に役立つ内容であった。

特にためになったのは、「他の人が行っていることを自分の解釈に落とさず、そのまま理解せよ」である。
私はセミナーやディスカッションなどで誰かの話を聞いたとき、相手の言っていることがわからないと自分の中で再構築して理解しがちである。これが正しく自分で考えて理解する、という方法だと思っていたが、本書によるとこれは自分のレベルに落とし込んで理解した気になっているだけなので相手の言ったことを理解していることにはならないそうである。
確かに一つの論文を理解したつもりでも、それを別の読者と話すと違うときも多い。論文のような論理的な文章で解釈が複数に割れるのもなかなかないと思うので、それは私レベルに落とし込んだ解釈になっていたのだろう。
自分が恥ずかしくなった。今後は言ったことをそのまま理解しよう。

ひとつ面白かったのは、机を綺麗にするよう努力するのは必ずしもいい努力とは限らない、である。
以前読んだ「朝やること」では、朝行うといい行動として机の上を片付けることが挙げられていた。机の上がきれいな人は余計なことを考える隙ができないので仕事ができる人になる、という文脈であった。

しかし本書では、「机の上に何があるかを理解しており、本人の中で整理されているのであれば片付けるのは無駄な努力だ」と述べている。
自分の経験を思い返してみても、リビングで勉強していた高校生時代はダイニングテーブルに親が読んでいる本や雑誌が置きっぱなしになっており、それによく集中力を奪われて(と言い訳して)勉強が進まなかった。ここですべきいい努力はダイニングテーブルを片付けることであったのだろう。
現在の研究室の自分のデスクはそれなりに煩雑である。だがどこに何があるかは自分の中で決まっており、むしろ効率よく動けているのでこれを片付けることは悪い努力にあたるのだろう(という言い訳)。
どちらの主張も納得できる。こういうところが多読の面白さであるように思う。

本書はいい努力とともに悪い努力も紹介しており、そこだけ読むのでも自分が生産性の高い仕事をできているかわかるチェックリストになる。
最近無駄に疲れるなと思ったらまた読み直したい。


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