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モノが溢れまくった一軒家の遺品整理珍道中~なぜモノが増えたのかを振り返る

「兄貴が倒れたらしい」
「エェッー!大丈夫??」
職場にいた夫から連絡があったある日の平日の午前中。

あまりにも突然の訃報だった。夫は、兄(私から見ると義兄)と一緒に暮らす母親(私からみると義母)から電話を受け、すぐに実家に駆け付けたが時既に遅しだった。

兄は独身。母親(80代)と一軒家に2人で暮らしていた。もともと非常に血圧が高く、病院では大動脈解離と診断された。義母は足が悪く、ひとまず施設にお世話になることになり、葬儀や義母の施設入居の手続き等々、怒涛のように様々なことが押し寄せた。

それらが一通り落ち着くと、今度は空き家になってしまった家の片付けが待っていた。

「全部片づけないとなぁ…」
夫が疲れたため息をつく。

義兄と義母が住んでいた夫の実家は、もともと夫の祖父母の代から住んでおり、一時期は私や子どもも同居していた5DK。一つひとつの部屋が広く、築年数も相当古い(30年位前に大掛かりなリフォームをしたというが)。祖父母の代によくある、物を大切にして取っておくことを体現してきた家である。

とにかく物物物…モノが多い。

10年以上前、私たち夫婦は義母や義兄と、この家で半年間、同居していた。
確か私たちが同居する時に、あふれていたモノをかなりたくさん捨てたのだが……私たちが実家を離れて暮らすようになり、たまに実家へ遊びに行くたびに、「モノが増えてるなー」と薄々感じてはいた。
だけど、一緒に暮らしているわけではないから、目をつぶっていた。

そして今、空き家となった実家は床いっぱいモノであふれかえっている。
今振り返れば、同居中にも、モノが増えていく要因が垣間見えるエピソードがあったのを思い出した。なぜこんなにモノが増えたのかを深堀するために、先にそのエピソードを紹介したい。

これはパズル!?幾重にもタオルが重なる足拭きバスマット

お風呂上がりに足を拭くバスマット。皆様の家にはありますか?
我が家にはありません。バスタオルが足拭きも兼ねています。ちなみにそのバスタオルも、吸収力が超抜群のタオルを使っているので、いわゆるバスタオルのデカデカとしたサイズではなく、フェイスタオルサイズである。

「庭に干してあるバスタオルを取り込んで、お風呂の外に並べておいてね」
「ハイ分かりました、お義母さん」
…………同居中の実家では、お風呂上りの足拭き用としてバスタオルを7、8枚ほど幾重にもパズルのように重ね並べ、バスマットとして使っていた。

「何コレ…並べるの激ムズ……」
その家で何十年も家事をしてきた義母の中で、バスタオルを重ね並べる順番や並べ方が決まっていたようで、私がバスタオル達を重ね並べるたびに直された。

途中から同居暮らしに入った嫁の身としては、その家の家事のやり方に口出しはしづらかった。そして、今思えば超どうでもイイことなのだが、その時は若い嫁として素直に、義母が重ね並べたバスタオル群バスマット(お手本)を、携帯で撮影し、その写真を見ながら同じように重ね並べていた…

今思えば、なぜバスマット1枚置けば済むものに、あんなにたくさんのバスタオルを使っていたのか……

たまに自分の実家に里帰りして、久しぶりに戻ってきたら、私達の部屋の床に幾重にもマットが敷かれ、家具や小物の上に様々な布(埃よけ?)がかけられていたことがあった。勿論、義母の仕業である。

…とにかくタオルやハンカチ、布類はデカいタンス1つに全部タオルが入っているくらい(入りきらないくらい)、イッパイあった。

ゴミを捨てても戻ってくる

同居中はゴミが捨てづらかった。というより、捨てられなかった。
夫婦の部屋にあるゴミ箱のゴミを、私達がいない間に義母が回収してしまうのだ。

お菓子の空き箱は小物入れに、カップラーメンの容器は机上の筆入れに、早変わり…。飴の包み紙も、テープの芯も、ポテチの袋も、ミカンが入っていた網も、何かに使える何かに使える……と、気づいたら自分が捨てたゴミが、家の一角に置いてある

ミカンの皮もお風呂場に……今の時代、エコが叫ばれているし、聞きようによっちゃあ良いことだと思う方もおられるかもしれません。たまになら良いんですよ。毎回毎回、自分が捨てたゴミが部屋の中で復活しているのを見ると、ゲンナリしてしまうんです。「もったいないばあさん」という絵本に、ミカンの皮を湯船に入れると良い感じ、と描かれているが、それにゲンナリするくらい心が荒んでました。その頃は。

「あんな所に私が捨てたゴミが使われている!!??」
それはプリングルスの筒を捨てた翌日のこと。
庭にいた時にふと家を見ると、プリングルスの筒が雨どいを覆っていた……。「ホホー、サイズがピッタリなんですナー」と感心する余裕はなく、「あの家、雨どいがプリングルスwww」と笑われそうでただただ恥ずかしかった。

もう絶対に、義母の前でプリングルスの筒を捨てないと誓った。

水は捨てずに永久利用

「あ、その水は流さないで!こっちのバケツに入れてね!」
「ハイ分かりました、お義母さん」
使った食器は、シンクの水が溜まった桶にしばらく入れておくのがルール。さて、その食器を洗おうと、桶の水を流そうとしたところ、義母からストップがかかった。

桶の水はすぐ隣に置いてあるバケツに入れるのがルール。
米の研ぎ汁、飲み残しのお茶、ラーメンの汁等も、余った液体は流さずに全て隣のバケツへIN。

そのため、そういう類のバケツが庭に10個位並んでいる。
バケツの水は庭に撒いたりしているが、撒ききれず、そのうち雨水や土埃も入って、どの水も濁っている。庭に小さい羽虫や蚊が多いのは、この水が元凶だと思う…

膨大なタオル類は最期、雑巾になるのだが、その雑巾もちょっとやそっとのことでは捨てない(というか、捨てることがない)から、茶色く褪せたボロ雑巾が常に何枚も庭やベランダに干してある。

「ご自由にお取りください」は必ずもらう

「すごくイイの貰えたわー」
どこで情報をキャッチするのか、タダで貰えるものは、使い道がなくても必ず貰ってくる義母。

道端に「ご自由にお取りください」と、どこかの飲食店が放出している食器を大量に貰ってきた。特に使うわけでもなく、ただただ食器棚にしまうのみである(それらが後の遺品整理で私達を悩ませることとなった)。

そういえば私の母も、タダの食器を大量に持ち帰り、結局、老夫婦だけなので使うわけもなく、家の外(屋外)に放置したまま。徐々に土や埃が何層にも重なり、何十年後かには土の中に埋まり、さらに遠い将来には土器として発掘されそうなほどである。食器は捨てるのも重いし、大変なのだ…。

ある日、どこからかゲットしてきたのは「借金はこちらまで」と書かれた古い看板。「こんなもの、どーするの!?」と思ったら、それは後日、室外機の日除けとして使われていた…借金を申し込む人がこの家に来ないことを祈
った…

もっとここでは書けないようなエピソードもあるのだが……とにかく毎日毎日そんな状態で、モノが溜まる一方の家が突然、空き家になった
全てのモノの片付けに入ると、想像以上の大変さと驚きの連続だった。
次回から実際の片づけエピソードを書いていこうと思います。

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