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川村恵理「都市の肌理 touch of the urban skin」著者テキスト公開

PINHOLE BOOKSを立ち上げてから、約1年が経ちました。

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初の書籍である川村恵理の写真集「都市の肌理 touch of the urban skin」を出版・発売したのは2020年11月1日。

発売から今までいろんな本屋さんにお取り扱いをお願いしたり、本屋さんでの展示を開催させていただいたり、ついには先日TOKYO ART BOOK FAIRに参加させていただくことが叶い、一冊本を作るだけでこんなにいろんなことが起こるのか…と他人事のように関心しておりました。

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お買い上げいただいた皆様、展示に来てくださった方々、本当にありがとうございます!(もちろん川村さんや制作に関わってくださった方も!!)

新型コロナウイルスの感染蔓延が幾分落ち着いてきた今日この頃ですが、世界の状況を見るとまだまだ収束が遠いように感じられます。本当は欧米とまでは言わずとも、台湾などアジアの本屋さんやブックフェアは巡回できたらな〜なんて思っていたもので、そういったことが叶うように自転車操業(というか趣味)ですが続けて行けたらと夢想しております。

さて、一周年記念ということで、ささやかですが本著より、著者のテキストを公開したいと思います。これを読むと、川村さんの人柄や、写真に対する向き合い方が垣間見えて、この写真集を知ってるけど内容を見たことがない方(結構いらっしゃるんですね、それもまた嬉しいのですが)に届くかしらと思っています。

購入はこちら↓

もしくは下記の本屋さんにてお願いします!
・青山ブックセンター(青山)
・渋谷TSUTAYA(渋谷)
・omotesando atelier(表参道)
・BOOK AND SONS(学芸大学)
・plateau books(白山)
・poubelle(西荻窪)
・コ本や(池袋)
・無用之用(神保町)
・本屋未満(長野、上田)
・book shop 栞日(長野)
・うさぎや(TSUTAYA宇都宮店)
・blackbird books(大阪)
・media shop(京都)
・汽水空港(鳥取)
・青旗(福岡)
・pon ding (台湾)

スクリーンショット 2021-11-25 16.51.05

都市の肌理
川村恵理

カサブタについて。子どもの頃に感じたことを、なにか覚えているだろうか。気付かないうちに剥がれ、その下に順番を待っていた新しい皮膚を見た瞬間の事は?

傷付けようと思ったわけではない、転んで作った傷から、知らぬうちにまた
自分の一部ができているなんて。体というのはどうにもうまく出来ている。
それが人体に備わる代謝による現象だと知るのは、もうあまり転ばなくなってからのことだ。

この写真を撮影した2019年冬の渋谷駅付近は、2020年夏に行われる予定であった東京オリンピックを目前として、またその先の未来へ向けて再開発に追われている真っ只中であった。工事はもう何年も止まる事がなく、まるで生き物のように今もなお日ごとにその姿を変化させ続けている。

初めて訪れてからずいぶんと時間が経っているのに、訪れるたび所在のない気持ちになるのは何故だろう。後腐れなく変わっていく街の景色に追い付けず、どこか違う場所へ抜け出したくなる。

ショーウィンドウに映る自分の姿はどうにも頼りなく、生まれたときに戻って、守られていられれば良いのにと思う。

大人も子供も、犬や猫も、優しさも悪意も、何にも当てはまらない多くの物事も。すべてを内包させ我々はどこに向かうのだろう。

まるで掴みどころの無い思考を持て余し、気持ちを落ち着かせようとあちこちに目をやる。見えるのは、壁や地面、硝子、光の現象。

日々姿を変えるこの都市に、小さくともなにか親しみを持とうとしている自分に気が付く。
働くため、遊ぶため、物を食べるため、そんな人々を見るため。あてもなく歩いたり、高い所から街を眺める。

ここで成される事は全て、今とその次の一瞬、更にその先にあるはずの明日を生きていくために。

COVID-19の発生により地球全体で最大規模の変化に立たされている現在。(現実には変化していない時など一秒足りとも無く、もれなく全ての物事が常にその状況に置かれているのだが。)

どの街も、どんな人も、もう戻れぬ時を生きている。
やがて代謝し見えなくなるであろう、変化の潮目にある都市の肌理。

touch of the urban skin は、その一端をここに留めている。


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