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「店では売らない」という割り切り

日経新聞に、気になる記事が載った。
D2Cブランドとの協業で、マルイが
新境地を開こうとしている、という
内容。

「百貨店ビジネスの完全否定」という
刺激的な言葉が躍る。
要は、ひと頃「ショールーミング」と
いう名前で問題視された、
「店舗は見るだけ、買うのはネットで」
という消費者の行動を前提にした
業態転換に近い発想の店舗をマルイが
新宿本館の1階に構えたのである。

D2Cというのは、
Direct To(2) Consumer、消費者に対して
直接販売する業態のこと。
卸売、小売店を介することなく、作り手
が直接消費者にモノを売る。
アメリカで特に隆盛著しく、日本でも
どんどん新しい企業が出て来ているが、
まだまだアメリカに比べると大人しい
状況だ。

マルイが目指すのは、「売らない店」。
D2Cブランドに出店してもらい、店舗を
彼らのショールームにしてしまう。
彼らにしてみれば、元々店を持たずに
販売する前提でビジネスを組み立てて
いるので、わざわざ店で買わずとも
オンラインで買ってくれれば何の問題
もない。

従来のブランドだと、どうしても最初の
ビジネス組み立ての時点で、店舗への
投資や販売員への投資を計算に入れた
上で収益計算を行う。
各店舗ごとの収益もKPIとして追いかける
こととなり、店員はいきおいどうやって
来店されたお客様に「その場で」買って
いただくか、トライ&エラーを繰り返す
ことになる。
ともすると、押し売りっぽいと取られる
お客様も現れて、ブランドのイメージに
傷がつくことすらあるのだ。

これに対して、記事にもある通り、
マルイの1階に並ぶD2Cブランドたちは、
店員が押し売りすることなど一切ない。
お客様に、純粋に「見て、試す」こと
だけを楽しんでもらう。
気に入れば、後でネットで買ってくれる
だろう、そういう発想なのだ。

ありとあらゆる情報がネットを介して
容易に得られるようになり、
売り手側のスケベ心など一瞬で
見抜いてしまう程「賢い」消費者が
幅を利かせる。
そんな時に重要なのは、やはり
「信頼」と「評判」だ。

「あそこなら間違いない」
「あのブランドは裏切らない」
そういう「信頼」を顧客から得られる
ような商売を日頃しているか。
していれば、それがやがて世間一般の
なかで「評判」として確立していく。

「売る」ことを一切せず、ブランドの
哲学や、品質の良さ、デザインなど、
訴えたいことを店頭でプレゼンする。
買いたければネットで後ほどお願い
します、別に無理に買っていただく
必要はありません、そんなスタンスで
接客をするのだろう。

記事にも出て来る、ヨガウェアで有名な
ルルレモンの創業者は、こう言っていた
そうだ。

「お客さんのためになることなら何をやってもいい。
逆にひとつだけやってはいけないことがある。
それは商品を売ること。売ろうとするのは禁止です」

消費者の進化に合わせて、
進化した売り手の姿がそこにある。


久々にこの本を読み返さねば、そう
思わせてくれる記事だった。


己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。