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思いもよらない角度から競合は襲い来る

化粧品の調査をしている方から
インタビューを受けていた折の話。

コロナ禍からのステイホームを受け、
化粧品業界もかなりの打撃を受けて
いるが、カテゴリによってその影響は
まちまち。
中でも、特に大きな打撃を受けたのは
メイクアップのカテゴリだろう、
そんな話になった。

外に出ない。
人に会わない。
当然、お化粧をする機会も減る。
激減と言っていい。

とはいえ、仕事をしている人々は
仕事自体がなくなるわけでなく、
リモートワークとなる。
ZOOMなりTEAMSなり、オンライン
会議等で顔を出さざるを得ない
こともあるわけで、それなりに
お化粧をする必要もあるはずだ。

しかしながら、昨今は本当に便利で、
様々な加工アプリ等が出回っている
おかげで、実際にお化粧をせずとも
まるでお化粧をしたかのような顔に
加工できることは、ご承知の方も
多いだろう。

その調査会社の方がハッキリと
言っていたのは、この加工アプリが
メイクアップ化粧品会社の「競合」
だということなのだ。
つまり、メイク商品の需要が、
アプリによって確実に食われている
ということである。

メイク商品を作っている会社は、
自分たちの競合をつい他のメイク
商品のメーカーに固定しがちだ。
そして、この赤みは他のメーカーは
出せない自分たちだけの色だ、
このツヤは競合よりも長持ちする、
このテクスチャーは他では出せない、
等々、スペック競争にひた走る。

これはどの業界、どのカテゴリでも
同じで、ついそういう傾向に陥り
がちなのである。
つい、狭い範囲で物事を見てしまう
のである。

セオドア・レビットという著名な
経営学者は、電動ドリルという
カテゴリを引き合いに出して、
このことを

「マーケティング・マイオピア(近視眼)」

と呼んだ。

マーケティングを考える際に、
自社が勝負するカテゴリの方から
発想すると、誤る。
近視眼に陥りやすくなる。
そうではなくて、お客様が何を欲して
いるか、そちらの方から発想すること
こそ肝要である。
お客様のニーズから発想せよ。
そんな教えである。

ドリルの場合だったら、
お客様はドリルが欲しいのではなくて、
それによって開けることのできる
「穴」
が欲しいのである。
ひょっとしたら、ドリルではない他の
商品で、同じ「穴」が手に入るのなら、
わざわざドリルを買わないかもしれない。

メイクアップの場合だったら、
お客様はリップカラーが欲しいという
よりも、それによってつくられる
「美しい唇」
が欲しいのである。
加工アプリによって「美しい唇」が
簡単に手に入るならば、
あえてリップを買う必要がなくなる、
そんな現実が起こっている。

このように、全く異なる業種業態から
競合が殴り込みをかけてくることなど、
想像だにしていないというケースが
多いと思われる。
いつ、どんな競合が、思いもよらない
角度から襲ってきたとしても、
速やかに対処できるようにするには
どうすれば良いか?
やはり、常にお客様が何を求めている
のか、そのニーズを把握することに
尽きるのだ。



己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。