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「栗の収穫」 栗御殿への道 第9回 田中規子 月刊ピンドラーマ2024年2月号

キラキラ光る大きな栗が、畑に散らばっているのをみるとはっとする。朝日を浴びて栗は宝石のようだ。こんなものを生み出す自然の力と美しさに感動する。12月から始まった栗の収穫、いまアチバイア栗園は収穫最盛期だ。日本では栗は秋の味覚だが、ブラジルでは夏に収穫になる。なぜかはよくわからないが、先輩生産者によると冬が短いせいではという。私の農園は栗を種から植えて作った農園なので年々木が成長し年々生産量が増えていく段階にあり、毎年次の収穫はどんだけとれるの!?という期待と不安でいっぱいになる。毎回未経験の生産量になるので人手は足りるのか?収穫に使うケースは足りるのか??大量出荷用にどんな袋に入れればいいの????と、心配になる。そういう不安も熟して落ちた大きな栗をみるとうれしくてふっとんでしまう。

とはいえ、一番の稼ぎ時のいま、栗の値動きは非常に気になる。収穫しながら今日のこのキラキラ栗はいくらになるんだろうと煩悩にまみれた頭がうごめく。栗の値段は12月半ばからクリスマスにむかって値段が上がり、1月になると急降下する。なぜなら、ブラジルでは栗はクリスマスに食べる習慣があり、需要が最大になる。しかしブラジルの栗の収穫時期は、残念ながら1月がピークなのだ。12月は需要があるのにブラジルでは生産が少ないため、ポルトガルから輸入している。そのため栗のことをカスターニャ・ポルトゲーザ(ポルトガルの栗)と一般的に呼んでおり、うちのは和栗なのにポルトゲーザと言わねば解ってもらえないのがもどかしい。さらに販売に際してカスターニャ・ポルトゲーザだと説明すると、ブラジル国産栗だから違うと消費者に文句を言われ、挙句の果てカスターニャ・ポルトゲーザ・ナショナル(国産ポルトガル栗)と言わざるをえない。

私の栗の生産量は、2022年12月からの収穫期が最初の本格的収量となったのだが、その際も栗の収量は12月が25%、1月以降が75%、そして今季の収穫も同じような傾向にある。高価格期の12月にどうしても栗の生産量を増やしたいところだ。その方法はさしあたりふたつ。ひとつは早生の品種を増やすこと。うちでも12月に採れる品種があるのだからそれを接ぎ木で増やせばいい。しかし、その品種は生産量が非常に少ない。もうひとつは剪定などの方法だが、これは今のところうまくいくかどうかはっきりわからない。12月栗への挑戦は難しいが、やりがいがある。

栗の販売先は、去年はじめてCEAGESP(サンパウロ農産物集出荷場)に出荷した。今期も同様に出荷しており、栗を10㎏入れる袋にアチバイア栗園のロゴを入れて印刷し、生栗のブランド化も試みている。1月16日は、1日の出荷量最多記録になり280㎏だった。この時初めてロゴ入り袋に入れて出荷した。なんとも言えないうれしさでいっぱいだった。が、値段は12月の半値になっていた。。。。これが12月に採れてれば儲けは倍以上なのに!!!!でも、下がってきたところで韓国人街の韓国スーパーに販売する手が残っている。2年前、飛び込み営業をしてから韓国スーパーが栗を買ってくれるようになった。お互いポルトガル語が下手過ぎて通じないことも多々あるが、なかなかおもしろい商売相手である。

そんなこんなでバタバタと一喜一憂栗の収穫期を毎日楽しんでいる。でも一番うれしいのはキラキラの大きな栗を見ることです。


田中規子(たなかのりこ)
2005年よりブラジル在住。
2013年よりアチバイア市にていきなり栗栽培をはじめた。
栗の加工品、焼き栗、栗菓子を作り、イベントや配達で販売中。栗拾い体験、タケノコ狩りなども農園で実施中。
Instagram: @sitiodascastanheiras

月刊ピンドラーマ2024年2月号表紙

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