アマール❤アヌーシャご夫妻 幸せな♡夫婦の秘訣 in ブラジル 第5回 月刊ピンドラーマ2024年7月号
今回、ご紹介するのはサンパウロ在住のネパール出身のご夫婦アマール・アレさん(38、タナフンスール生)とアヌーシャ・アレさん(36、ポカラ生)です。サンパウロ生まれのレシャーナちゃん(4)を保育所まで手をつないで送迎する仲睦ましい姿は、大都市の喧騒の中で雄大なヒマラヤ山脈の麓にいるかのような穏やかさです。
❤愛の果実モモが人気店に
アレさんご夫婦はパンデミックに入った2020年により一層の幸運が舞い込み始めた。知り合ってから14年でようやく待望の赤ちゃんが生まれ、その直後に事業を運営する資本、スキル、人脈を持たない小規模なレストランを後援する「プロジェット・ビジーニョ」に応募して、800件以上の飲食ビジネスのアイデアの中から5か月の審査を受けてトップに輝き、2022年にはピニェイロス地区でネパール料理のモモ専門店『MOMU』をオープンした(モモとはネパールやチベットで食される餃子に似た食べ物)。看板に刻まれた“Food made with love”の言葉通り、同店のモモは二人の愛の果実そのものである。
2015年にブラジルに来てから飲食店『Veganalaya』を営業し、バラエティ豊かな自然食を提供してきたが、『MOMU』はネパール料理を代表する餃子の一種モモだけを販売する店である。モモだけとはいえ、具は豚、鶏、牛、野菜、チリから選べ、調理法は、蒸し、焼き、揚げから選べる。ファーストフード感覚で食べられる健康的なおいしさとリーズナブルな価格(20~30レアル)でメディアからも注目され、パンデミック中にはi-foodの追い風も受けてブラジル人の間で人気となり、今年4月には新店舗で新装オープンした。
「アヌーシャのレシピがMOMUの味」と、アマールさんが笑顔と愛と敬意の眼差しで妻を見つめると、彼女はこれまでブラジルで料理を研究してきた体験をより一層輝く笑顔で話してくれた。
❤喧嘩の度に愛が増してきた
二人が出会ったのは2006年、学生たちの情報交換の場となっていたポカラのアヌーシャさんの友人宅でのことだった。アマールさんはカトマンズでホテルマネージメントと観光業を学ぶ学生(当時19歳)で、その授業の一環でポカラを訪ねた。彼女への第一印象は「ビューティフル!」。当時17歳だった彼女はとても無邪気で、好き嫌いははっきりしてとても誠実な印象を受けた。「彼の横で足をぶらぶらさせて彼の脚に何度もぶつかったのに彼は喜んでいて、他の男性とは違うと思った」と、昨日のことのように嬉しそうである。その後、メールや電話で連絡し合うようになり、2か月後には「僕と一緒になってほしい」と告白。3か月後にはアヌーシャさんもカトマンズの高校に通い始めて近所で暮らすようになり、同時にお互いの両親にも紹介した。
当時のネパールでは今以上に「付き合う=結婚」であり、「最初は彼の家族に会うのは緊張した」というアヌーシャさん。とはいえ、同じカーストで先祖も同じということでそれぞれの両親が二人を気に入り、今日まで住む国は違っても家族全員で温かな交流が続いている。
「彼はとても愛情深く、私がイライラしてストレスをぶつけても、落ち着くまで話を聞いてくれる。その度に彼への愛がもっと深まった」
というアヌーシャさん。実は喧嘩というほどの喧嘩はなく、その瞬間だけの感情の爆発で、尾を引かせたことはない。彼女が思っていることを伝えることで、お互いがより理解し合えるようになった。
「とても働き者で、私が男性に望むすべてのものを持っている。顔もとってもハンサム❤」
と、出会った時以上に「夫大好き」があふれ出す。
❤結婚後ジョージアに5年、そしてブラジルへ
「彼女は良い時も悪い時もいつも側にいてくれてとても感謝している。僕は彼女といれたことがラッキー」
2010年に結婚登録を済ませ、直後により良い仕事を求めて二人でジョージアに渡った。首都トビリシには、医学部や工学部で学ぶインド人学生が多いため、彼ら向けの飲食店を開き順調に商売をして貯金もしていた。ところが、ある日、友人にすぐ返すのでお金を貸してほしいと頼まれ、結局返金されず一か月ほど無一文の状態に陥った。
「人助けをすることがトラウマになった」
というアマールさんだが、
「水に小麦を溶いて糊口をしのいだ」
と、アヌーシャさんは頼もしく、状況を知った家族がとりあえず食べられるだけの食費を送金してくれ難を乗り越えた。
その後、アマールさんはジョージアから直接ブラジルに渡り、アヌーシャさんは一旦ネパールに戻り、2年後に夫を追ってブラジルに渡った。
❤夫と娘がいれば世界中どこでも幸せ
アヌーシャさんは2016年には卵巣嚢腫、2019年には副腎皮質の腫瘍の手術を受け、2020年には身内のいないブラジルで帝王切開により娘を出産、決して100%健康とは言えない状況下でも、旺盛な好奇心でさらに料理の技術や味の研究を重ねてきた。その甲斐あってブラジル人向けには本国のレシピよりはスパイシー感を控えめにした味のモモを作り、それがヒットした。
ネパールでは公共の場でハグやキス、手をつなぐこともあまり良いとは思われないが、オープンなブラジルではいつまでも恋人のように、公私ともペアルックで休日には手をつないで散歩する。そんな愛に溢れた二人を見て育つレシャーナちゃんも挨拶は愛情たっぷりで、両親の友人には頬にキスをして出迎える。
郷里を離れてジョージア、ブラジルと夫の腕一本と妻の愛で異国を渡り歩いてきたアレ夫婦。
「どこであっても夫と娘と一緒に家族でいられれば幸せ」
と、夫婦ともにどんな環境でも笑顔を絶やしたことはない。「生まれ変わっても同じ相手と結婚したいか?」と問えば二人声を合わせて「Siiiim!」と即答する。夫婦円満の秘訣は「常に話し合うこと」「正直であること」「相手を尊重すること」と夫はきっぱりと言う。「相手が何を感じているか、いつも気にかけていることが大切です」。
「彼女の夢が僕の夢」と、ポルトガル語では“愛する(Amar)”を意味する名前の通り、妻にも料理にも愛情たっぷりなアマールさん。目下、妻子の生活を守り、ネパールの家族皆が幸せに生活できることが一番の夢である。
月刊ピンドラーマ2024年7月号表紙
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?