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第2回「SENARお料理教室」 栗御殿への道 田中規子 月刊ピンドラーマ2023年4月号

夏の収穫が終わり、秋の朝はほんとうに気持ちよい。やっと忙しい時期が終わったという充実感とともに長い疲れを癒してくれる。あちこちでシガレイラやマメ科の黄色い花が咲き、蝶々が静かに舞う。

少し余裕も出てきたので、友人が誘ってくれたSENARのお料理教室に参加した。農場を始めたころは周りに友人もなかったが、SENARというブラジル第3セクターが実施する様々な研修に参加するようになり友人が増えた。

SENARは、直訳すると「ブラジル農業研修センター」で、農家の税金で運営されている。農家の収入アップ、生活、農業、健康、コミュニティー活動に関連する様々な研修を実施しており、我々が最初に参加した研修は生産者直売(フェイラ)だった。

いままで参加したのは農村ツーリズム、農機のメンテナンス、自家製ピンガの作り方、養蜂など多岐にわたり、農家ならだれでもタダで参加できる。地元のSENARコーディネーターが地元の農家組合、農家と連携して実施しているため、地元の仲間ができることが最も良いことだ。私の配達で取り扱っている肉製品を手作りする肉大好きアンデルソンも研修で知り合った。参加する農家も出来上がった純粋農家でなく、リタイア後農村生活を始めた人も多い。農業経験が少ない代わり、建築家、銀行マン、技術者等いろんな職業を経験した人も多く、彼らの多才な技能がこれからの新たな農村コミュニティーに、そして我々の栗御殿への道に何か関係してきそうな予感でワクワクする。

さて、今回の研修は2日間の「食材をくまなく使ってお料理しよう」教室だった。会場は研修仲間のマリリアの貸別荘(Toca do Pinguim)で、彼女は建築家、自身の貸別荘も全部彼女が設計した。彼女の貸別荘はアチバイアの山の中腹にあり、とても景色が良い。貸別荘を運営する傍ら、自家製ピンガを作ったり、姉妹のクラウディアは生姜などの瓶詰、手芸品をつくって販売する。その他、オーガニック野菜を栽培してカット野菜やお惣菜も製造販売する人、清掃業を営む人、元貿易商社、レストランで働く人などなど今回もいろんな人が来ていて、自己紹介だけで初日半日が終わる。

講師は遠くのアラサトゥーバ市出身で、アチバイアではお料理関係の研修を何度も実施している。でっかくて声が大きくて、みるからに包容力たっぷりの陽気なブラジル人だ。ブラジルは食品廃棄物が大変多いという話だ。皮や種も調理方法によっては全部使える、ということで、今回はカボチャがメインだった。カボチャは種から皮まで余すことなく使われ、5品目ぐらい作っておいしく食べられた。その他ポレンタ、ロールキャベツ、サラダ、キッシュ、レモンの皮のお菓子など10品ほどをみんなで作った。

遅めのお昼をみんなでたらふく食べ、おしゃべりを楽しむ。普段こんなにたくさんのブラジル人と会う機会がなく、いろんな人の経験、仕事を聞くのはとても楽しい。みんなで作った美味しい出来たてのお料理を無料で食べられるのだからなおさらだ。カット野菜の工場見学をお願いし、マリリアには農場の加工所建設計画を相談し、楽しく充実した1日を過ごす。

後日、みんなに分けた割れ栗(生栗の規格外品)で作ったという栗料理写真が届いた。楽しく優秀な仲間に感謝。また一歩、栗御殿が近づいたに違いない。


田中規子(たなかのりこ)
2005年よりブラジル在住。
2013年よりアチバイア市にていきなり栗栽培をはじめた。
栗の加工品、焼き栗、栗菓子を作り、イベントや配達で販売中。栗拾い体験、タケノコ狩りなども農園で実施中。
Instagram: @sitiodascastanheiras

月刊ピンドラーマ2023年4月号
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