【リピート本】虚ろまんてぃっく/吉村萬壱
グロテスクで不快だが「真実がある」
『ハリガネムシ』で芥川賞を受賞した吉村萬壱さん。
大好きで大好きでしょうがない作家さんです。
『虚ろまんてぃっく』は短編集で、本当にグロテスクで不快な描写も多いのです。
しかし、収録されている『夏の友』と『大きな助け』がたまらなく好きなのです。
『夏の友』はアル中の人生こうあるべきというアル中としての生き方の模範を見せてくれる。
『大きな助け』は、新興宗教にはまった母親と極度に吝嗇で暴力的な主人公である父親。そんな機能不全家庭に育つ男の子。
不幸としか言いようがない。
特に主人公の男の暴力性が隅から隅まで作品世界を支配していて、その緊張感がたまらないのです。
抑制の効いた直線的な文章と芸術性
吉村萬壱さんの文章はとてもきれいだと私は思っています。
表現はグロテスクですが、会話文などとても抑制が効いていて、良い意味で「定規で線を引いたような」芯と芸術性を感じます。
細ペンを使った癖字で原稿用紙にガリガリ書かれていそうな雰囲気。
頭の中がぐちゃぐちゃになってきたら読みたくなる文体です。
なので何度も何度も読んでいます。
読むと心が浄化されます。
まとめ
私のリピート本は大体心を落ち着かせたい時に読みます。
不思議と癒し系の本ではなく(癒し系の本ってなんだ?)、吉村萬壱さんの文章に無性に触れたくなるのです。
短編集の中の好きな1編だけ読み返したり、長編の1部だけ読み返したりすることが好きです。
今後【リピート本】として読んだタイミングでご紹介したいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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