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【感情紀行記】世直し階級社会

 最近、急速に動画市場を席巻しているショート動画というものを見ている時に、惑星が地球に衝突しようとするような動画が流れてきた。

 その動画は、地球にいる人の視点で、ぐんぐんとその惑星が近づいている様子を動画に撮っている風であった。妙にリアルで、見入ってしまった。コメント欄には重力がなんとかなど、色々と理系的分析で持って批判がなされていたのだが、個人的に気になったのは、近づく惑星の手前で発射されていたロケットだ。地球の終末感を描くための脱出ロケットだと思われる。少なくとも自分はそう解釈したわけだ。

 しかし、ロケットとはいえ、自分で操縦することはほとんどない。天候や地球の周回などの条件を含めて計算や、地上とのコントロールがいるわけだ。その上、ロケットに何人も乗れるわけではない。車よりも少し多いくらいの人を乗せるのが限界なのが現状だ。つまり、あのロケットに乗っていた人は、地球の終末という局面において大規模な組織を指揮できるような人たちであり、確固たる技術を有している国などの協力がある、選ばれたごく限られた人達なわけだ。もし、自分が大統領ならあの船に乗るだろうし、おそらく搭乗者を公選制にすることはしないだろう。なんなら惑星接近という現状すらも重要国家機密として秘匿するかもしれない。

 ここで考えたいのは、あのロケットの行き先はどこなのだということもそうだが、世界がリセットされた次の目的地ではどのようなことが起きるのだろうかということだ。仮に複数の国家元首が脱出したとして、地球における序列に不満を持つ元国家元首も出てくるかもしれない。何せ、脱出した後には、もはや地球の序列などは関係ないからだ。彼らは相対的に見て「下の人」がいるから上に立てたのである。限られた数人しかおらず、相対的に下になるような人が存在しないその惑星には、もはや地球上で存在していた従前の権力は存在しない。そうなると、原始的な人間本来の力によって序列ができるのだろうか。温室で育ったような貧弱な国王なら、すぐにやられてしまうだろう。国王の権力の源泉である歴史というものを支える人も、文化も風土もない。世界屈指の大統領だって、近年は高齢化してきている。もちろん、熊にまたがるような屈強な大統領もいるのだが。それともやはり、地球の文明的エッセンスが残っていれば、何かを自力で生産できるような物という価値に依拠するような石高に基づくようなヒエラルキーができるのかもしれない。一方で、教養レベルは極めて高いその惑星では、卑弥呼のような預言者が実権を握ることはないだろう。

 数十秒の動画の一部分からここまで話が発展してしまったが、一体脱出するメリットはあるのだろうか。そして、あのロケットで脱出した人たちは誰で、撮影者は何故選ばれなかったのだろうか。理系のような現実的思考も面白いが、前提を一回取り払う面白さも重要である。

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