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【感情紀行記】一服

 今年の残りの日数を改めて数字で言われると驚くような数字になってきた。秋から冬への明確な転換を迎えようと、日に日に肌寒くなってきた。毎年、冬が近づくと、部屋で過ごす時間が増えてくる。外に出るのも嫌になり、リビングよりも大きくなく、適温に調節された小さくまとまった自分の部屋に籠ることになるのだ。

 一年のルーティーンも体に染み付き、慣れきったところで一息つく季節なのだ。自分の部屋で一人、素敵な時間を過ごそうと、様々な工夫をする。自分で作った温かい飲み物を抱え、本やインターネットと戯れ、時々うたた寝をするのだ。加湿器や空気清浄機、暖房器具となどを駆使して最高の空間を作り上げる。

 今年もそんな時期がやってきた。忙しく山積した一年の課題にひと段落つき、来年からの見通しも少しだけ見えたところだ。日が落ちるとともに、部屋の電気を全て暖色に変え、カフェで流れているようなBGMをスピーカーから流し、夜がふけるにつれてだんだんとボリュームとトーンを落としたものへと変えて楽しむ。自分のお気に入りのマグカップからは湯気がうっすらと立ち上がるくらいの温度のものを少しずつ丁寧に飲んでいく。少し部屋が暑くなり、湿気が増えてくると窓を開け、目を覚ますような冷たく新鮮な空気を取り込む。一見矛盾しているが、こたつの中で雪見だいふくを食べているような気持ち良さがある。

 冬の夜のひと時を丁寧に楽しめるくらいには落ち着き、余裕が生まれた証拠である。年末に向かい再びアクセルを踏むまでは、ゆっくりと、時の流れに遅れないようにしつつ、追いかけないくらいのスピードで乗っていきたい。

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