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私をロサンゼルス空港から外に出して 【アメリカ放浪の思い出 #03】

この記事は、逃げるように会社を飛び出した24才の男が病んだあげく、エネルギーを持て余して3ヶ月間アメリカを西から東に放浪し、警察に捕まったり死にかけたりする思い出話です。
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2008年4月22日、ついにアメリカへ旅立つ日が来た。

彼女と成田空港までリムジンバスで行き、しばらく空港で時間をつぶしたあと、彼女と別れ1人で搭乗口へ向かった。

3ヶ月後に彼女が「長いエスカレーターに消えていく背中が哀愁漂いすぎててマジうけた」言っていた。

ちなみに私も1人で搭乗口に向かってるときに、

俺なんでこんなことしてるんだろ? と一瞬素になった。

いや俺ほんとなんでこんなことしてるんだろう?


いざロサンゼルス空港!9時間で到着だ!

しかしもう引き返せない。

帰りの航空券は3ヵ月後の7月17日にジョン・F・ケネディ国際空港(ニューヨーク)発なので、それまで必ずアメリカにいなくてはいけないし、その間に西(ロサンゼルス)から東(ニューヨーク)へ移動しなくてはいけない。

そして、出来ればこの3ヶ月間で今後の自分の道を見つけるか、もしくは写真に楽しみを見出すかなどの成果を持ち帰りたい。


いざ飛行機に乗り込もうと搭乗口へ行くと、50人くらいの行列が少しずつ検問のようなところを通っていた。

女性検査官と目が合った瞬間、なぜか50人のうち私だけ厳重なセキュリティチェックを受けさせられる

なんで?

そのタイ人の女性検査官は「ダイジョーブー!ダイジョーブー!イチオウヨー!イチオウイチオウ!」と笑っていたが、なにがイチオウなのかさっぱりわからない。

35才になった今ならともかく当時はそんな怪しい風体をしていないはずなのだが。

セキュリティチェックも無事終わり飛行機に乗ると、隣の席の中国人らしき男性がしきりに「チッ!」と言っていてちょっとビビったが、不機嫌なわけではなく、後にただの癖だと判明し安心する。

その中国人男性は私に輪をかけて英語が苦手らしく、機内食や飲み物を選ぶ際にすべて私の選んだものを指差して選んでおり、彼の分まで私の選択に掛かっているようで無駄に緊張した。
(なお、到着間際にがんばって「ティー!」と言っていた。)


(飛行機のトイレにて)

成田を出発してから到着まで9時間。

ふだん飛行機に乗らないのでかなり疲れたが、無事にロサンゼルス空港に到着した!

ここがアメリカだ!


英語をまっっったく喋れない女の子との出会い

ロサンゼルス空港に着陸して飛行機の外に出た。

飛行機の席で隣だった中国人の彼とはこの時には仲良しになっていて、(言葉は通じないが)別れ際に「See you!」と言ったら満面の笑みで応えてくれた。

スマイルは世界で通じる最強のコミュニケーションだなと感じた。

検問のような場所で順番待ちをしていると、30mくらい離れたところにいる黒人の検査官に私だけ呼ばれる。

日本に引き続き私だけセキュリティチェックとか、範馬勇次郎みたいなオーラでも出てるんだろうか?

と不思議に思ったが、どうやら違うようだ。

黒人の検査官さんいわく、「英語を全く喋れない日本人の女の子がいるから、彼女のために通訳をしてほしい」とのこと。

英語力ゼロの私に対してずいぶんアグレッシブな頼みごとだなと思ったが、やってみると意外にもなんとかなった。

というか、女の子の英語力がやばすぎた。

見たところ20才くらいなのだが、「What」とか「Who」などの基本的な英単語も全く知らない。

「Apple」くらいならギリギリ聞いたことがあるかもしれないレベルだった。

それなのに「これからアメリカ一人旅するんです~~☆」だそうで、

中々ハードなチャレンジャーだ。

「格闘技やったことないけど、これからヒョードルとやり合うんです〜♡」くらい無茶な挑戦に感じたが、

自分も「ネットで空手の型を調べてこれからボブサップと試合します」ぐらいのレベルなので、あまり大差ないのかもしれない。

なんにせよ、彼女の旅が無事であることを祈る。

黒人の検査官さんも「あの子は本当に大丈夫なのか?」と聞いてきたがそんなこと僕に言われてもわかりません。


いきなりアメリカの荒野に放り出される。

女の子を送り出して私もロサンゼルス空港の到着口から外へ出る。

ロサンゼルスの4月は日本に比べてかなり暑かった。そして当たり前だけれども、いるのは外人さんばかりだ。

外人さんばかりということ意外には日本との違和感はあんまりないなと思っていたら、空港の警備員がマシンガンみたいなド派手な銃を手に持っていた。

一眼レフを携えている身としては是非とも写真に収めたかったが、変に刺激して撃たれでもしたら渡米初日に死んでしまうと思ったのでグッと堪えてやめておく。

さてここで確認しておくと、私がこれから向かうのは「バジェット イン サンガブリエル」というモーテルだ。

ここで今日と明日の2日間だけ泊まる予定なのだが、どうやってそこに向かったらいいのかさっぱり分からない。

いやまぁ普通に考えたらモーテルまでの行き方調べずに、というかモーテルの場所さえ調べずに来たら迷うに決まってるんだけれども。

そもそも私は空港というものを小学生以来利用したことが無かったので、空港からいわゆるダウンタウンという都市部へは徒歩で楽に行けるものだと思っていた。

しかし実際は空港とダウンタウンはかなり離れており、そもそもロサンゼルス空港から外に出る方法すら分からずただただ歩き続けた。

どうしたらいいものか1時間ほど途方に暮れていると、目の前に「バジェット」と書かれたシャトルバスが到着した。

おーこれかー!なーんだ有名なモーテルなんだ、よかったよかったと思い、他の乗客20人くらいと共に乗り込む。

大体15分ほど走ったかなというところで、


「株式会社バジェット」というビルで降ろされる。


周りは何もない荒野。この高いビルだけが1つポンッと立っている。

ぞろぞろとビルの入り口に入っていく乗客達。いかに私がアメリカの知識がないとはいえ、これがモーテルじゃないことくらいは分かる。

念のため、念のため受付で「ここってモーテルじゃないですよね?エヘヘ」みたいな感じで聞いたら「なにコイツ」みたいな顔をされた。

ロス到着初日から荒野に放り出されるという状況に一瞬意識が飛びかけたが、乗ってきたシャトルバスの黒人女性運転手さんに聞くともう一度バスは空港へ戻るとのこと。

そのままもう一度バスに乗り、なんとかロサンゼルス空港まで戻ることに成功した。


素直に4000円払っておけばあんな苦労は・・・

無事に空港に戻ることには成功したものの、このまま無闇に歩いていてもモーテルまで辿り着けないと悟った私は空港のインフォメーションセンターを探すことにした。

インフォメーションセンターで聞けばモーテルの近くまで行く方法を教えてくれると思ったからだ。

広大な空港でインフォメーションセンターをあっちでもないこっちでもないと捜し歩いているうちに、

一眼レフを地面に落としてレンズのガラスが割れる。

おおおおい!!!!まじかよ・・・。アメリカに写真撮りに来て初日から1つしかないレンズ割るかよ・・・。これからどーすんだよ・・・。

と思ったが、よく見たらレンズを保護するために買った高級な保護用のガラスが割れただけだった。

あぁよかったよかった。

いや全然よくないけど。


インフォメーションセンターに着くとと、受付のおねえさんがモーテルの近くまで行くバスがあるが40ドル掛かると教えてくれた。高い。

また、モーテルの近くまでは行かないが、ダウンタウンまで行くバスもあるというので値段を聞いてみるとこちらは60ドルだと言う。さらに高くなっている。言ってる意味が全く分からない。

困惑しているとそこにバス会社の営業みたいな人がいきなり話しかけてきて、「うちはダウンタウンまで16ドルで行くぜ」という。

怪しさに満ち溢れているけれど、当時はお金をなるべく使いたくなかったので渋々こちらのバスに乗ることにした。


これが大きな間違いだった。

4000円をケチったせいで、初日から大変な目に合うことになった。

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