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親切は気づかれない方がカッコいい。

お昼ご飯を食べていると雨の音が聞こえた。

僕のお洗濯物はもう取り込んであるけど、ご近所さんが干していたのを思い出した。僕は食事を中断してスマホを確認した。

すぐに雨が止むのなら放置するんだけど、しばらく雨が続くと雨雲レーダーが教えてくれたので僕は急いで家を出た。

僕の住んでいる地域には道路にお洗濯物を干している家庭が何件もある。昔ながらの長屋の1階建て。ベランダなんてついてない。家の前に置いてある物干し台に洗濯物を干している。屋根がないから雨が降るとびしょ濡れになる。

僕は洗濯物がぶら下がっている物干し竿を担いで屋根のある玄関前に移動した。ご近所さんの玄関前には雨に濡れないように屋根が飛び出ている。物干し竿をかけるフックもついている。僕は音を立てないように静かにぶら下げて家に戻った。


なぜ? と聞かれると困る。


自分の家の洗濯物は雨に濡れたくないから取り込む。それと同じ感覚。洗濯物が濡れているのに知らないフリをすることが僕にはできない。気づいてしまったんだから自分にできることをする。ただそれだけ。

わざわざご近所さんに伝えない。だからご近所さんは気づいていない。だって、おばあちゃんだもん。

「雨が降ってきましたよ」と数年前までは教えてあげていた。最近は声をかける前に僕が移動してあげた方が早いから黙って行動している。

移動させてから声をかけていたこともあるんだけど、おばあちゃんはネコみたいによく眠っているから起こすのが申し訳ないのです。

朝早くに起きてお洗濯物を干して病院に行ってお買い物に行く。昼食を簡単に食べてお昼寝してご近所さんとお喋り。途中で1日に数回散歩に出かけて運動している。いつもパターンが決まっているのです。

記憶もあいまいになってきている。

数年前は僕のサイレント行動に気づいて感謝されていたんだけど、最近はそこまで頭がまわらないみたいなのです。「あれっ、日向に干したと思ってたけど、日陰に干してたわ」と喋っている声が聞こえてきた。気づいてないならそれでいい。

感謝されなくても僕は何も感じない。「ありがとうぐらい言えよ!」とは全然思わない。何も見返りを気にしていないんだもん。自分の洗濯物を濡れない位置に移動したのと同じ感覚。

「勝手なことをするでないわ。濡れるのが楽しいんじゃ〜!」と言われる方がつらい。雨に濡れていく洗濯物を放置することを僕はできない。

100%僕のお節介。それでいいじゃん ♬



僕はちいさなことが気になる性格。

温度の変化や匂いを敏感に察知しちゃう。「もうすぐ雨が降るよ」と教えてくれる鳥の鳴き声がなんとなく分かっちゃう。

良く言うと、ちいさな変化に敏感。
悪く言うと、神経質。

お洗濯物がずぶ濡れにならなくて良かった。ちょっとは濡れちゃったけどね。もっともっと感覚を研ぎ澄ませて、一滴も雨に濡らさない男になりたい。

ワンピースの世界でいうと見聞色の覇気。

ネット検索すると僕はミホークと同い年。世界最強の剣士もいいんだけど、僕は魔法を使える忍者でありたい。

もうすぐ雨が止むよ。



おしまい



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