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短編小説 | 論語を読んでいたら


とある日の昼下がり、「論語」を読んでから外に出たら、孔子そっくりのおじさんと出会った。

「まさかね、いるわけないよね」と心の中で思いながらも、「でも、ほんとに孔子だとしたらこの機会を絶対に逃してはいけないのではないか?」という思いをどうしても振り払うことができなかった。違う人だったとしても、挨拶くらいはしておこう。

「こんにちは」と声をかけてみた。

「こんにちは」と孔子様も挨拶してくれた。でも、次に何を話かけたらよいのだろう?

まぁ、とりあえず時事ネタから切り込んでみる。

「あの、最近、中学生や高校生でもリモートで授業することが多いです。どう思いますか?」

「友達が遠くからやってきて、一緒に学ぶほうが楽しいじゃろうな。」

「なるほど。これから私たちはどう生きていったらいいでしょうか?」

「まだ、わしにも生きるということがどういうことなのか、よく分かっておらん。死ぬということも分かるわけがない。ところで、君は誰かね?」

「ええと。あなたは孔子様でいらっしゃいますよね。」

「いや、違うのう。私は友蔵じゃ。」

「すみませんでした。人違いだったようです。間違ってしまって、どうしたらよいでしょう?」

「間違ったときは間違ったことを素直に認めるべきじゃの。間違ったのに間違ったことを認めないことを間違いというのだよ。」

「すみませんでした。」

にっこりと静かに笑って、友蔵さんは私の前から遠ざかっていった。


朋遠方より来る。亦、説しからずや。

未だ生を知らず。焉んぞ死を知らんや。

過ちて改めざる。これを過ちと言ふ。


noteをはじめて、1ヶ月過ぎた頃に書いた短編小説?です。
再掲するにあたって、タイトルを改めました。


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