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小説 | 天才少女ルナの物語④


前話はこちら(↓)


 私はルナが解読した箇所とルナが話した「現代語訳」を対照することにした。すると、おぼろげながら古代語の語彙と文法が浮かびあがってきた。

 どんな言語にも、線条性二重文節性がある。これは人間の用いるいかなる言語にも当てはまる普遍性をもつ。

 出土品に刻まれた文字は不十分ではある。しかし、ひとつひとつの文章のパターンを忠実に解析していくと、どれが動詞であり、どれが主語であるのかということなどが浮かび上がる。

 もちろん、最初は試行錯誤(trials and errors)する。
 作業仮説(working hypothesis)を立て、一応その仮説が正しいものとしてテキストを読む。しかし、どうしても作業仮説通りの文法に当てはまらない箇所が出てきたら、もう一度仮説を立て直す。

 このような作業仮説を立てては壊しながら精度を上げていく。考察は延々とつづく。

 言語の文法には、必ず例外的な事象が含まれるものだから、いったんは、誤っているものとして捨てた仮説も、また呼び戻されることもある。


 私はルナの話をもとに、自分なりの考察を積み重ねていった。可能な限り、一人きりで1週間ほど考察を重ねて、ほぼルナの解読には間違いがないことを確認した。しかし、どうしても読み解けない箇所があった。私は、最も信頼している言語学者オリバー博士とジェイコブ博士に解読を依頼することにした。

 私は二人の博士に、出土品の写真とルナの「現代語訳」、および私の文法解析のメモを添えてメールを送信した。

 

…つづく


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