短編 | クリスマスカラス
「今年もこの時期になったか」
上空を覆うその数に圧倒されながら、みな口々に叫んだ。
「この街にやってきても、何もないんだがなぁ」
食糧が豊富な町が近隣にあるにも関わらず、クリスマス前後になると、カラスの大群がやってくる。
生物学者やカラス研究家に調査を依頼してみても、カラスが毎年やってくる理由はわからなかった。
「呪いか?呪いのカラスなのだろうか」
「呪いって、なんの呪いさ?」
「わからん。わからんが科学で説明できないのならば、呪いとしか言いようがないね」
「まぁ、それはともかく、なぜクリスマスにやってくるのだろう?カラスは渡り鳥じゃないだろう?」
「新種のカラスなんですかね。渡りガラス、みたいな。。」
「、、、かもしれないな。カラスは頭がいいからな。うちの嫁さんより頭がいい」
「そういう言い方はヒドイな。いくら何でもカラス以下の人間なんていないよ」
と、その時である。私たちにめがけて、カラスの大群が集まってきた。
「私たちは、かつてこの街の住民でしたが、カラス以下と人を罵っていたら、自分自身がカラスになってしまったのです。行くあてもなく、クリスマスだけは故郷が懐かしくなってね。。。」
気がつくと、私の腕は、すでにカラスの翼になっていた。
(518文字)
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします