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短編小説 | カルデラ

(1)

 彼女と出会ってから、半年以上が経った。初めて会ったときから、ひかれるものがあった。
 最初に、ルックスに魅せられたことは否定しないけれども、会話をしても、とても楽しい。

 どちらが先に誘ったのかわからないくらい、行ってみたい場所も、一緒にやってみたいことも、こわいくらい一致した。

(2)

 初めてのデートのときも、天気のよい日だったから、海に誘ってみようと電話しようとしたら、携帯に「海に連れて行ってくれませんか?」というメッセージがすでに届いていた。
 数時間後、海に着くと、心地よい潮風が吹いていた。浜辺を並んで歩いた。

 よろめいた彼女を支えようとしたら、ぼくも一緒に倒れてしまった。
 下になった彼女が目を閉じたから、そのまま唇を重ねた。ビックリするくらい自然な流れだった。
 日が沈む。帰りの車の中で、彼女が髪をかきあげながら言った。
「砂が髪の毛の中に...」
ぼくも彼女の髪の毛を触る。
「ほんとだね。風が強かったから砂利が...」
「一緒に、砂利を落としてから帰りませんか?」
そのまま、二人一緒に泊まることになった。

(3)

 たまたま見つけたホテルに入った。

「こういうホテルは、女の子好みですね」
「どういうところが?」
「うまく言えないんですけど...」
「一緒に風呂に入ろうか?」
「いえ、私は長風呂だから、お先にどうぞ」

 ぼくは何となく、今までの流れからすると、一緒に風呂に入ることに快諾してくれると思っていた。少しがっかりした。

(4)

 ぼくが風呂からあがった後、彼女が入った。なかなか出てこない。ガラス張りの風呂だから、中の様子が透けて見える。「見ないでくださいね」と言われていたけれど、何回もチラ見した。
 彼女は浴槽に出たり入ったりを繰り返している。ぼくは「まだかな」と思いながら、かれこれ1時間以上待った。前を膨らませたり、しぼませたりしながら。

 風呂から彼女が出てきて、髪を乾かしはじめた。

「先に横になっていてくださいね。乾かしたら、私もすぐに行きますから」

 長い髪の毛だから、長い時間、ぼくはベッドの中で待っていた。そして、ようやく彼女がぼくのとなりにやって来た。

「そろそろ寝ましょうか」と彼女が静かに言った。

(5)

 そのまましばらくしてから、ぼくは彼女の右胸に手を伸ばした。指が彼女の頂に触れた途端、彼女はぼくのバスローブを脱がせて、上にまたがった。

 ぼくは彼女のなすがままになった。彼女は激しくぼくを攻め続ける。手を使ったり、口を使いながら。ぼくは、何もしないまま、そのままいってしまった。

 疲れていたせいか、ぼくたちは一緒に眠ってしまった。

(6)

 明け方に、ぼくは目を覚ました。彼女はまだ眠っていた。

 彼女のバスローブの紐をほどいた。ずるいと思いながらも、彼女の前を開いた。胸が見えた。そのとき、はじめてぼくは、彼女の左胸が陥没していることに気づいた。

 そのとき、彼女の閉じた瞳から、一粒の涙が頬をつたわった。



[終]

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